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揺らぎ、時々、雨

娘の保育園の大運動会開催。
感染等に関する規制がなく開催されたのは3年ぶりだった。「たった3年」なのか、「3年も」なのかは人それぞれかもしれないが、個人的に3年は長かったなと思う。

天気は「晴れ」の予報を裏切り、朝から雨が降っている。肌寒くどこか不安げな天気だった。
雲間から日が刺したが、暖かいというより、最近の日差しはピカピカとして心地よさを感じないと思った。

久しぶりにママ友と話をした。

綺麗な顔立ちの優しいママ友は、彼女の娘さん2人とうちの子ども達が同い年だったから、イベントや節目の行事の時に良く話した。人見知り同士で何処か話も合ったのだ。

彼女の事を「可愛い」と絶賛するパパ達が多くいた。(※いい年して、公然の場で人妻を可愛いと言うパパ若干引くけどね…。)

確かに、男性が「守りたくなる」印象を漂わせる人で、どこか危うさがあった。私もなんとなく放っておけない感じがしていた。

ぽつりと彼女は言った。

「うちの子…発達障害っぽいんです。下も…。言葉が全然遅れてるんですよ…。お兄ちゃんは学校の勉強ついて行けなくて…辛そうで…。」

と悲しげな表情で語る彼女…。
パパとも喧嘩ばっかりだと言った。パパが怒鳴るたびに子ども達は耳を塞いで怖がるのだと言う。
怖いのは子どもだけではないはずだ。

きっとママも怖いはずだ。

「lemon sodaさんはいいな。お子さん2人とも問題無さそうですよね。パパもしっかりしてそうですよね…。」

私は答えに迷って少し押し黙った。
「しっかりなんかしていないんだよ…」と心の中で呟く。


私が義理の両親との同居を決意した理由に、私達夫婦の危うさを懸念した事がある。

夫は几帳面で細やかだが、子どもに対して厳しすぎると感じる。かなり過干渉なのだ。
私といえば、長男を出産したばかりの時期は「教科書どおり」に事が進まなければ不安になり神経質になる傾向があった。

感情的になり、私達は子ども達に声を荒げたり、手をあげたりした。

一度、市の保健師から電話が来た事もある…

「落ち着いていますか?」と。

「このままではダメだ…」と思った。

2人目の娘の妊娠を機に、私は子育てへの「諦め」を決意した。私たち夫婦が子どもを育てて行く為には、人の力を借りなければならないと思ったのだ。

幸いにも頼れる義父母がいたから、私達は人並みに子どもと過ごせていた。人目がある事で、自分の感情をある程度抑制出来るからだ。

その事を潜在意識の中では明確にわかっていながらも、表面ではどこか虚勢を張っていたように思う。

ママ友が打ち明けてくれた話を私はただ聞いた。
苦しいのだろうと思った。
自分を責めているように聴こえた。

彼女は子供を怒れない事にも悩んでいた。

私はすぐに子どもに対して偉そうに叱るし、感情的になる。言うべき事を言う事が正義のように…

でも、それは大人の都合に子どもを合わせようとしているようにも感じていた。

だから、子どもに対して謙虚で優しい彼女が素敵だと思った。

彼女は、仕事が忙しくほぼ家に帰れないパパに変わって、ほぼ1人で3人の子どもを仕事をしながら見ている。親にはもちろん頼れない。家事は全く回らないらしい。

私に彼女の真似は出来ない。

我が子の苦しみを真摯に受け止めていこうとする彼女に私は胸が熱くなった。

何かしたいと思ったけれど、すぐには思いつかなかった。

発達支援の仕事をしている身ならもっとアドバイスできる事があっても良いのに…何一つ気の利いた事を話してあげられない。

「一緒に悩みたい。」

となぜ言えなかったのだろう。

彼女にとって私が、「自分とは違う子育てをしている存在」であるように思われたように感じたからかもしれない。
どんな人も何一つ根本は変わらないのに、私自身、どこかで「私はしっかりやっている」的な、言動なり雰囲気なりを出していたのかと思うと自分にガッカリした。

子どもに障害があると診断された親とそうでない親とでは悩みの深さは確かに違う。

無力さを痛感する。
私は何もわかっていないんだと思う。

虐待なんてしないだろうと子どもを産む前は思っていた。
だが、「生と死」のように隣り合わせでそのリスクはあった。発達障害児に対しては、そのリスクは更に高くなると言われている。

自分の中にある恐ろしい程の攻撃性を自覚した時、大きく時空が歪むような揺らぎを感じる。

揺らぐ時…
冷たい雨は不安を募らせる。
しかし、急な日差しが差し込む暑さや明るさはその揺らぎを惑わして更に大きく揺るがす…。

私は、揺らぎに身を委ねてみる。

揺らぎながら振動がやがて時間とともに止む事をひたすら待つ事も必要なのだろう。

貴方と私…
違えど、本当は何も違わない。

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