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天才の苦悩

”他人の人生ってのは自分よりずっと
    豊かに見えるもんだ”


悩みを持たず生きている人はいない。
自らが悩みを持っていると、他人や知り合いが
明るく振る舞っている姿を見た時、
悩みが無くていいなと感じる事はあるが、
生きている以上悩みは誰にでもある。

この言葉は己の身勝手さや、
自分が大きな悩みを持っているという言葉だ。

私は他人に対して、
一切悩んでいるようには見せないように
しているが、本来は悩みが尽きる事は無い。

だから大抵の人は勘違いしている。
これはおそらく人それぞれにあり、
回避方法や解決方法は、多数ある中から
自分自身で選択する事になる。

アインシュタインも多くの苦悩と悩みを抱えて
人生を過ごしていた。
彼の功績の裏にはそういった名言も残している。
それらの言葉から、アインシュタインの悩みが
相当大きかったことがわかる。

私も同じ体験をしたから、そう言える。
彼の残した言葉の中に、このような言葉がある。

”時々 分からなくなる。
おかしいのは私か? 他人か?”

私も何度も味わった。
これは非常に危険な状況になる。
何も信じられなくなるからだ。

自分自身さえも見失い、他人には理解できない
ものだと思い込む。
実際、ここから脱するには、自分自身と向き合う
以外に方法は無い。

夢などにも、そういった状況のものをよく見る
ようになる。

黒い世界に、自分だけ白い世界だ。
自分だけが正しいと思い込んでいるだけであって、
本当は自分が間違っているのではないか?
と、考えるようになる。

大抵の場合、こういった状況になる時は、
頭の良し悪しは関係なく、周囲に自分の事を
理解されず、擁護者もいない状況が続くと
この言葉のように、自分自身さえも疑い始める。

アインシュタインのこの言葉から、
彼を対象として多くの人間が
彼を否定したことがうかがえる。

それを何度も乗り越えたから
彼の多くの功績に埋もれてしまってはいるが、
多大なる悩みを抱えていた人物でもあった。
世界中で悩みのない人間はいないと言える。

中には悩みに押し潰されて、自ら命を絶った
人も少なくない。

第二次世界大戦でナチス・ドイツが暗号として
使った「エニグマ」は誰に解読する事が出来なかった。
この戦いに勝つには暗号解読が全てを握っていた。

イギリスではエニグマを解読する為にチームが
組まれた。その中にずば抜けた数学、暗号解読、
計算機科学、数理生物学を修めた、
アラン・マシスン・チューリングもチームに
入ってはいたが、頭の回転速度が尋常では
無かった為、チームとは別に一人で暗号解読に
取り組んでいた。

彼もいわゆる世間で言う天才であったが故に、
その悩みは誰にも理解できない孤独者であった。

天才と云われた偉人たちの悩みは、
誰からも理解されず、言動が相手にとっては、
不快な思いになる為、他人からすれば皮肉じみて
聞こえる事が問題となる。

しかし、彼等からすれば、それは嫌味でも無く、
自然に思う事であるので、何故こんな簡単な事が
分からないのかが、理解出来ないでいる。

その狭間は広いものであって、大抵は孤独になる。
例えば、1~100まで言わなければならない相手と
話すのは苦痛でしかない。

賢い相手ならば、1~50程度までは理解する
事ができるため、話も早く済むのでストレスを
あまり感じる事無く話せるので、会話をするに
あたって、相手も相手の事が天才並みだと言う事が
理解できるので、追いつこうとする感じで、
話を聞くことができるが、それは天才肌の方には
分からないので、会話の通じる相手であるという
貴重な存在として交流していく。

しかし、現実的にはこれは希な事であって、
大抵は嫌味、不快感を感じる。

私が常に頑張り続ける事こそが大事だと言う訳は、
学生時代の頃は、遊び相手として見るが、社会に
出れば、知識や経験が豊富な人間の周りには、
そういった認識ができる人が集まりやすくなる。

良き友人を得る事が出来れば、おのずと成長の
助けとなる場合多い。

歴史家で自らも戦時中に暗号解読に従事していた
エイザ・ブリッグズはチューリングに対しての
評価を述べている。

「類まれな才能が必要で、ブレッチリーで
天才が必要とされていた。
チューリングは、まさにその天才だった」

ブレッチリ―とはエニグマ暗号解読を行った
場所の事である。

彼自身も、
「他の誰もそれに取り組まず、
自分ならやれるかもしれない」
と述べていた。
結果、これは事実であったが、そう言われた方は
不快に思う。しかし事実である事を認めなければ
先へは進めない。

自分への戒めのように、自身が劣っている事を
理解し、自分なりに前に進む事が大事である。

チューリングがエニグマの暗号解読を成したが、
彼はチームの中で唯一の理解者であると思っていた
仲間に、解読に成功した時に祝いの言葉は述べられず、
彼は暗号を解読できるのはチューリングしかいないと
最初から分かっていて、わざと彼の理解者のふりを
して近づいていた。

チューリングには秘密があった。
それは当時は許されない同性愛者であった。
それをバレすとチューリングは脅され、
その功績はチームのものとなり、
彼は去る事となった。

その後の彼の人生は天才故に、多くの功績を
残す事になったが、最後は自ら死の選択を
する事になった。

それは同性愛者だと言う事が、明るみに出た
事から始まった。
当時のイギリスでは違法に当たり、選択肢を
2つ提示され、どちらかを選ばなければならなかった。

一つは入獄、
もう一つは化学的去勢を条件とした保護観察の
どちらかであった。
彼は入獄を避ける為、まだ医学的にも発達していかなった
事もあり、同性愛の性向を矯正するために、
性欲を抑えると当時考えられていた。
彼は女性ホルモン注射の投与を受け入れた。

彼は死の前に、同僚と映画「白雪姫」を見に行った際に、
「魔法の秘薬にリンゴを浸けよう、
永遠なる眠りがしみこむように」

という言葉を聞いており、自分を白雪姫に例えて、
ワンシーンを真似てこのような死に方を選んだのでは
ないだろうかと発言していた。

真の天才とは滅多にいるものではない。
大抵は知識が豊富なだけで、知識の薄い人たちから
すれば、全く知らない事の多くを語るだけで、
天才だと思い込む。

知識はあくまでも知識として捉える事が重要になる。
もし、仮に豊富な知識を感じた場合は、自分が知らない
だけであって、知るべきだと感じるからそう思うだけで
ある。

天才の定義は難しいものではあるが、
私も多くの人は見て来たが、天才には会った事は無い。
仕事ができる人や、話題が豊富な人なら何人かは
見て来たが、天才では無い。

真の天才は、孤独ゆえに出会うことも難しいものである
のだと私は思う。


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