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般若の面の呪い 第1話 海斗と清乃

海斗はいつものように玄関前で、一緒に学校に通う幼馴染の清乃が来るのを待っていた。

彼は彼女の事が昔から好きだった。その気持ちを心の中にしまい込んで、海斗は清乃の笑顔を見るだけ幸せになれた。

清乃も海斗と同じ気持ちだった。でも関係が壊れる事を怖れて、
これまで言えずにいた。

雨の日が、二人にとって何よりも幸せにしてくれた。
週間天気予報を毎日見て、傘のマークを目で探した。

昨日も一昨日も、変わらないと知っていながら、
お互いに知らず知らず、二人は天気予報を必ず見ていた。

そして雨の予報日には、二人にとって特別な日となっていた。

彼女は、海斗の家まで行くと、小さな傘を玄関に立て掛けて、
彼の大きめの桜の舞い散るの傘の中に、寄り添うように入った。

緊張と幸福が二人を傘の元で包み込み、いつもとは違う雰囲気が
二人に温かみのある彩りを見せていた。

だから雨の日は、いつも学校までの時間を惜しむように
ゆっくりと二人は歩いた。

いつもよりも緊張の為か、口数も少なく、いつもよりも
少しだけ近い距離なだけで、嬉しさのあまり自然と、
顏を見ることができないでいた。

いつも通る小さな商店街に、町内の人達が飾り付けをしている
のを見て、清乃は思い立ったように、海斗に話しかけた。

「今年も一緒にお祓いに行こうね!」

「今年は俺も浴衣で行こうと思ってたんだ」

「それなら、同じ柄にしようよ!」

「そうだな、そうしよう!」海斗は嬉しさのあまり彼女の顏を見た。

清乃の嬉しそうな顔を見て、自分も同じ顏をしているのかと思うと、
照れたが、嬉しくも思えた。

「出店の通りもまた行こうね。あとは、いつもと同じ神社にいこ!」

彼女の顏を見ると色々楽しみにしている様子が窺《うかが》えた。

海斗は、清乃のその楽しみにしている可愛い顏を上から眺めていた。

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