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キタダヒロヒコ詩歌集 124 海辺にて



 海辺にて     キタダヒロヒコ


なにか散文的な用のため
海辺へ来たときにも

一群のさざなみとともに
沖から走つてくる衝動を

見る日がある。
自由の証として

潮風に朽ちかけた柱に攀ぢのぼり
たるんだ電線を手繰りよせるときにも

味の失せたガムを噛みながら
測量器を覗きこむときにも

死ぬまで出逢はぬひとの数に
思ひを馳せたりする

質量とか重力とか
それから時間とか

地上での自由を
神々が統べている でもいつでも

解き放たれる準備は
ととのつてゐる ととのつてゐる。





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