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『あゝ我が良き友よ』 かまやつひろし

 かまやつさんが亡くなって7年になる。
日本の軽音楽を牽引し、昭和のザ・芸能界を生き抜いた人。
だから、話が面白かった。全てが伝説のようなもの。
かまやつさんの何度かライブを観たことがあるが、肩の力が抜けていていつもリラックスしている。それがかまやつさんだた。難しいコードをいっぱい知ってるギターの名手でもある。笑顔も良い。
親戚に一人はいる変わったおじさんって感じかなぁ。
2024年5月

良い顔



 “ひょうひょう”という形容がしっくりくるアーティストとして「かまやつひろし」をあげたい。かまやつさんは、日本の音楽界の生き字引みたいな人で、芸歴がとても長い。
 GS時代のザ・スパイダースは有名だけど、その前から井上ひろし、守屋ひろしとともに「ロカビリー3人ひろし」で活躍したり、お父さんのティーブかまやつとともにジャズ喫茶で演奏したりと八面六臂の活動をしていた。
 GSブームの中、ソロアルバムを2枚発表しているが、『ムッシュー』(1970)は、かまやつさん自身による一人多重録音の作品である。このアルバムは「宅録」の元祖的なもので録音日は1968年頃である。この当時、一人多重録音を行っているミュージシャンは、国内では確認できない。海外では、ポール・マッカートニーやトッド・ラングレンがいるが、時期的にはかまやつさんの方が先だった!
 かまやつさんのオリジナルソングは、サイケな「ペイパー・アシュトレー」やボサ・ノヴァ風の「二十才の頃」、テンプターズに提供した曲の歌詞を変えて歌った「長い道」、ショーケンの歌詞が凄い「豚殺しの歌」(クレームがつき、放送禁止)などヴァラエティに富んだ内容だ。
 僕が馴染み深いのはもう少し後の作品。『ああ、我が良き友よ』(1975)である。

あゝ我が良き友よ


 よしだたくろうが曲を提供した「我が良き友よ」が大ヒットした頃に発表されたアルバムで、タイトルどおり多くのミュージシャン(友)が参加している。
 松本隆と細野晴臣の「仁義なき戦い」や加藤和彦の「サンフランシスコ」、拓郎が作詞作曲、加藤和彦が編曲した「歩け歩け」、井上陽水の「ロンドン急行」などA面はソウル風にまとめられている。B面は大瀧詠一の「お先にどうぞ」堀内譲の「何とかかんとか」は50年代のポップス風、遠藤賢司の「OH,YEAH」はファンキーな作品。そして、このアルバムのハイライトは、ラストに収録されたかまやつさんのオリジナル「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」だ。
アルバム制作時、丁度来日中だったTOWER OF POWERをつかまえて、数時間でまとめたなんて伝説もあるファンキーなトーキング・ブルーズ。あまりにも時間が無いので歌詞はほぼほぼアドリブだったとか。そしてこの作品は、発表20年後にクラブ・シーンで再評価され、サンプリングやダンスミュージックとして採用された。とにかく格好良い。

 かまやつさんはこのアルバムやタイトル曲の大ヒットにより二匹目のドジョウを狙って、再度拓郎作曲の「水無し川」を発表したが、全然かすりもしなかった。そういえば、その時のバックバンドはデビュー当時のアルフィーだったんだ。

 かまやつさんは、本当に音楽が好きだ。
ジャズだろうがGSだろうが、ロカビリーだろうが、フォークだろうが一切関係ない。GSが落ちぶれて、GSバンドが解散していく中、かまやつさんはギター1本持って「第3回中津川フォークジャンボリー」に参加した。「裏切り者!」とか「日和見主義!」なんてヤジが飛ばされたらしいけど、そんなの関係ないじゃん、とばかりに“ひょうひょう”としてステージを展開。客も最後は笑ってしまう。そんなところがかまやつさんの強みだと思う。
 1981年発表の「旅の歌」というシングルがある。CD化されていないが、この歌が最高に良い!日本の情景が浮かぶ歌で、ふるさとの味のする歌だ。CD化してくれないかなぁ。

 それと忘れてはならないのが、《はじめ人間ぎゃーとるズ》のエンディングテーマも最高に良い!かまやつさんって良い歌いっぱい持っているんだよね。「どうにかなるさ」なんてかまやつさんを表している秀作だもんね。
 最近は、弾き語りが多いみたいだけど、芸歴の長さを活かして新しい友と『ああ我が良き友よ』みたいなアルバムをもう1度作ってくれんかなぁ。

2005年8月29日 
花形

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