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痔 手術記 第1話

音楽日記の番外編で一挙に3話発表します!
日本人の3人に1人は痔を持っていると言われます。
心当たりがある方は参考にしてください。2023年の夏の思い出です。

第1話
いってえなぁ、ホント痛い。もう、泣きそう。
アタシは快食快便で何十年も生きてきて58歳まで大病もせず、毎年の健康診断も良好な人だったわけ。
でも、たまに便に血が混じるなんてことはあったから、それはそれで痔の傾向かな、なんて流してたわけ。だって親父が痔で2回も入院しているのを知ってたから遺伝程度に感じてただけなの。

 今年の3月と4月に排便時、尋常じゃない排血があってトイレの個室でビックリしたのよ。お尻は痛くないんだけど、便器が真っ赤。ありゃりゃりゃ。
よく排便時の血の色で病気がわかるというが、黒っぽい赤だったら胃や腸の潰瘍、鮮血だったら痔だとか。でも最近増えている大腸癌や直腸癌は鮮血もある、なんて書かれていたから結構焦ったわけ。
で、近所の「港北肛門クリニック」に行ったわけです。
まずは触診。
パンツを下ろし、先生に背中を向ける形で横たわります。横臥。
明るい院長先生。肛門にゼリーを塗りながら
「はい、触診しますよ、息を抜いて楽にして〜」
と言った途端に指が侵入。
声にならない声をあげました。
(先生、そこは出すところで入れるところではありません!)
「ほー、ほー。立派ないぼ痔ですね。」
痔に立派もクソもあるもんかい、と思いつつ「ありがとうございます」なんて言ってやんの。やんなっちゃう。 
それから痔について説明を受けたんだけど、痔って取らない限り治らないんだってね。ボラギノールとか塗っても痛みが和らぐだけで完治しないんだって。いぼ痔や痔瘻は取る、切れ痔は縫うしかない。
でも手術入院となると1週間から10日はかかるみたいなので、仕事の調整もあるから夏休みに、という形にした。
でも、鮮血の原因が痔だけとは限らないから大腸検診を後日受けることにした。
 3月から労働環境も変わり、何かと忙しくなっているので一気に診てもらうことにした。
 大腸検診は、事前に飲む下剤が苦しいだけで、あとは麻酔して内視鏡。ポリープが1個見つかり除去。
そう言えば通いの手術でも保険金が下りる保険だったからポリープが1個あって良かったなんて思った。

 1週間から10日休むとなったらお盆休みしかないので、8月8日から入院した。

1日目(8/8)
 入院手続き。部屋や施設の使い方などを教えられる。
何を隠そう入院なんて初めての経験で、手術だってした事はない。言うたらお上りさんなわけ。
4人部屋の人と仲良くできるかな?とか、いびきが酷くて寝られんかな?とか、看護師さんってどんな人やろかとか。不安120%。
でも初日の数時間でわかりましたわ。
下の病気ということもあって患者通しあまりコミュニケーションはない。消灯過ぎるとみんな寝静まってしまい、いびきなんて聞こえないから、逆にアタシがうるさがられているんやないだろか。看護師さんはベテランのおばちゃんだから恥ずかしいこともない。
と拍子抜けするくらい普通の環境だった。

2日目(8/9) 手術日
 重湯といったお粥のウワズミを飲まされた後、いきなり浣腸すると言い出した。
大腸検診では2時間かけて下剤を飲み続け腸を空っぽにするのだが、痔の手術は直腸辺りが綺麗なら良いのだろう。人生で初めて浣腸を経験。
昔にっかつロマンポルノの団鬼六先生の作品で、谷ナオミさんや麻吹淳子さんが悪い奴らに浣腸されてましたが、まさか自分がそのメにあうとは!
 看護師さんは明るい声で「耐えなくてもいいよ、出したくなったら出してね、流す前に見せてね、流しちゃダメよー」なんて言う。し、し、羞恥プレイではないか!
なんて思う余裕もなくトイレへ直行!ここからが地獄。
 強制排便時には、迷走神経反射による血圧低下が起き、全身から脂汗が出て、生あくびが絶えない。とにかく気持ち悪くなるのだ。浣腸の注入時間をゆっくりするなど予防はあるらしいが、とにかく個室内でぶっ倒れるかと思った。
 手術は夕方近くに始まった。午前中から身体の中には何もない状態。待ちくたびれたが持参していた本を読みまくって時間をつぶしていた。
点滴を打ち、ガラガラとその点滴を引きながら手術室に入る。
おお!かなり本格的!って当たり前か。
妊婦さんの分娩台を想起させる本体から2本突き出た足のような台。その本体にうつ伏せになり股を開かされるという屈辱感満載の台だ。
まずはお尻にアレルギー関係の注射。そして腰の部分に仙骨注射。この麻酔注射がびっくりするぐらい直ぐに効いて下半身の感覚が無くなる。
(因みにアタシは注射が大の苦手。健康診断で採血したり、今回も当たり前のように点滴や麻酔で注射するわけだが、その度に足は震えているのだ。なんだか余計な注射をされたくないから健康を保っているんじゃないかと思う今日この頃)
 うつ伏せにされ、足を開かされ、あとは患部を切った貼ったしてる状態。アタシはウンウン唸るだけ。痛みと言えば下っ腹の筋肉に鈍痛が走る。この痛み、女性には伝えづらいが男性ならすぐわかる。キ◯タマを蹴られた時に生じるあの痛み。
手術は40分くらい。このキ◯タマ痛み以外は何事もなく終了。取り除いたイボを見せてくれたけど何の感慨も無い。はぁそうですか、ってなもん。それより腹痛えよ。
 ストレッチャーに載せられて自分の病室に帰還。いろいろ看護師さんが術後の事を言ってるが、要は「おしっこして寝てなさい」なのだ。しかし、この「おしっこ」が自力では出ないらしい。下半身に麻酔が効いてるので、肛門の括約筋が弛緩している。つまり、排尿にも大きな影響を及ぼしている括約筋を自己コントロールできなければ、「おしっこ」なんてできないのよ。で、看護師さんが、取り出した細い銀の管。導尿カテーテルってやつ。ほれ、入院患者がベッドに寝たきりで排尿する際に着けてる管よ。
 最初は自力で出せるなら出して!とか言って尿瓶を置いていったんだが、足の麻酔もぼんやりしていてふんばれないじゃんね。で、結局カテーテル。
看護師さんは「まだ麻酔が効いてるだろうから導尿しても痛くないと思うよ」なんて言ってアタシの愚息を雑に触るんだけど「触られている感覚、ありますよ」っ言ったらびっくりしてた。で、結局すげ〜痛い思いして導尿。だから尻の穴もお◯んちんの穴も出すところであって入れるところじゃねえんだよ!

3日目(8/10)〜5日目(8/12)
 朝ごはんからちゃんと普通のご飯。大腸ポリープと痔の手術を一緒にした人はお粥とか三分粥とか水みたいなご飯みたいだけど、アタシは痔だけだから普通の食事。
 傷口からは常に血が出ていてパッドを当ててるんだけど、この血を出しているのと同時に傷からの分泌液も出しているの。これはわざと全部傷口を塞がず肛門の内と外でバイパスの役目を作らないとかえって膿んじゃうとのこと。だから、自然と血や分泌液が止まるのを待つので切ってからの時間がかかるそう。とにかく患部にパッドを当てて清潔にね!夜は多い日も安心!ってくらいのパッドを当てるアタシ。この期間長ければ2〜3ヶ月だってよ。おーい秋になっちゃうよ。
 何が嫌かって入院前までは快食快便。食事の後はすぐにトイレに行っても不思議じゃないくらい(お前の身体は管か?)、ちゃんとお通じがあったアタシが全然出ないんだよね。下剤貰ってもチロって。
 最初はオシッコするにも肛門の鈍痛が酷くて唸ってたけど、今はなかなか便が出ない。
看護師さんが3時間おきに体温と血圧を測りに来るんだけどその際お通じの回数も聞かれるわけ。
「いや〜チョロっとでした。下剤もらえますか?」
とか「昨日はありません」とかみんなが言うのよ。
中には「バナナみたいなの出ました!」なんて報告が聞こえるとカーテンで仕切られている空間に「おおー!」なんてため息が聞こえたりして、妙な一体感がある。因みに同部屋の人の顔はいつもカーテンで仕切られていていまだにわかりませーん。

 風呂は術後2日目から入れるし、簡単な経過観察をする診療がちょっとあるだけであとは暇。
家から持ってきたF1の本と娘から権利を分けて貰ったディズニー+で映画を見る日々。
そう言えば、手術の日の夜、あまりにも寝れなくてディズニー+で映画「ハスラー2」を観たのね。トム・クルーズの若い頃ってあまり好きじゃなかったから観てなかったんだけど、マーティン・スコセッシ監督、音楽ロビー・ロバートソンだった事を思い出したわけ。で、出てくる音楽がロビーの一連の仲良しさんばかりだから、若いトム・クルーズは置いておいて結構楽しく観たのよ。クラプトンが主題歌だったもんね。でエンディングテロップでロビーの作ったテーマソング、ロビーのスキャットが悲しげに響く時にネットニュースでロビー・ロバートソン死去の報。
ありゃりゃりゃで、びっくりして跳ね起きたらお尻が痛かった。
ロビーさん合掌。

第1話 終了

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