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隠れた良作「ゴッサム・ナイツ」をガッツリ紹介&サクッとレビュー【今更ゲーミングVol.3】

■今更ゲーミングとは?
最新作でもなければ、人気作でもない。歴史の闇に埋もれそうなゲームを「今更」発掘。そして紹介する変なマガジンです。「そういえばあのゲームってどうだったん?」っていう疑問の答えが分かるかも…?

立ちはだかる「知名度」と「バットマン:アーカム」シリーズという壁。

 というわけで早速本作の概要を。「ゴッサム・ナイツ」は2022年にワーナー・ブラザースゲームから発売されたタイトルで、アメコミでも最大レベルの知名度を持つ「バットマン」の弟子たちを主人公にしたゲームです。
 え?バットマンが主人公ではないの?って話なんですが、なんとバットマンはオープニングで宿敵と壮絶な戦いを繰り広げた末死亡。プレイヤーは彼の四人の弟子の中から操作キャラクターを選択し、その死の謎とバットマン最後の事件を追うことになるわけです。
 なるわけなんですが、ある程度アメコミのお約束を知っている方なら「最終的に生き返って操作できるようになるんでしょ?」と思われるかもしれません。

 これ発売前にも何かのインタビューで明言されていたはずなんですが、本当に死んでしまうし操作する機会も一切ないんですよね。ネタバレ防止の為のフェイクとかでもありません。マジです。

▲行方不明とかそういうぼかされ方もされません。

 ゴッサムシティの表向きの守護者ブルース・ウェインの死は公になり、バットマンの不在も暗黙の了解となりつつある中、活動を再開した名高いヴィランや活発化するマフィアの抗争によって混沌と化していく街を守るために戦う。というのが本作のテーマになるわけです。
 ちなみにもう一つ本作の特色としては、オンラインマルチプレイが可能で通常のマップでも2人プレイが出来る点。え?「嫌な予感がしてきた」ですか?ありがとうございます。多分前回や前々回を読んで頂けたのだと思いますが、本作はシングルプレイのゲームとしてベースがしっかりと作り込まれているので実はそこまででもなかったりします。

 それで今回なんですが、いつも通りレビューをするのではなく、紹介に重点を置いて書いてみます。というのもこのゲーム、ある程度バットマン関連のコンテンツについて知識がないと、多分メインストーリーについていくことすら難しいと思うんですよね。
 私もバットマンマニアというわけではないんですが、一応「バットマン・ビギンズ」以降の映画と、本作の原案の一つであろうコミック「梟の~」シリーズ、ゲームの「バットマン:アーカム」シリーズは通ってきているのでその辺りの知識をベースに紹介をしつつ、いつも通りのレビューは後半にさくっとやることとします。ちょっと回りくどいですが

【バットマンに興味はあるけど、あんまり知らないよ!】
→このまま紹介へ進んでください!

【バットマンはそこそこ知ってるよ!ネタバレも大丈夫!】
→目次からレビューへどうぞ!

【長文読んでる時間無いよ!】
→目次からまとめを読んでください!重大なネタバレはありません!!

って感じでよろしくお願いします。

■目次



■紹介

◆キャラクター編

 まずはキャラクターの紹介から。主人公の四人とその関係者。そしてメイン級のヴィランである「梟の法廷」と「影の同盟」という2つの組織について簡単に触れていこうと思います。ざっくりとしたキャラクターの解説と本作ならではの点。あと操作キャラクターに関しては実際の操作時のプレイ感も書いてみます。

★ナイトウィング(ディック・グレイソン)

元ロビンでバットマンの最初のサイドキック(相棒)

 元はサーカス団のアクロバット一家の出で、両親の死に関する事件をきっかけにブルース・ウェインの養子となる。現在は独立してブルードヘイブンという街で自警団活動をしていたが、本作においては亡きブルースの後を継ぎウェイン社の経営にも携わる。優等生の長男
 ゲーム的には打撃用の警棒を使ったコンボとゲージ消費のスキル「モメンタム・アビリティ」特化。流れるようなコンボでゲージを迅速に溜めてスキル攻撃で着実に敵を倒す。というアーカムシリーズの戦闘の流れを一部引き継いでいるイメージ。

★レッドフード(ジェイソン・トッド)

元ロビン(2代目)デッドプールではない

 ジョーカーに単身挑み殺害されるが、紆余曲折の末蘇生。その副作用として精神が不安定になったことでバットマンを憎み殺人すら厭わない過激なヴィジランテ、レッドフードとなる。本作ではブルースとは早期に和解を果たしバットファミリーとしてかなり近い距離感を保っている。元ヤンキーの次男
 ゲーム的には2丁拳銃(非殺傷弾)とパワフルな打撃、強力な投げ攻撃で戦うパワーファイター。二丁拳銃は他のキャラクターの遠隔攻撃より着弾が早いので敵の銃撃を阻止しやすいが、因縁深い影の同盟の敵は投げが無効なので工夫がいる。

★ロビン(ティム・ドレイク)

元…ではなく、バットマンの現在のサイドキックである3代目ロビン。

 自力で推理しバットファミリーの正体に辿り着くと、ジェイソンを亡くしたバットマンにサイドキックの必要性を説きロビンになる事を認められるという驚異的な頭脳を持つ少年。別の世界では「レッドロビン」と名乗ることになる。ファミリーでの役割はまだまだ子どもな末っ子
 ゲーム的にはステルスとエレメンタル(属性攻撃)重視。なので真正面からの戦闘は苦手、と思いきや武器の伸縮式棍棒は攻撃範囲が広く複数の敵を巻き込めるので普通に強い上、エレメンタルを駆使できる後半になると大化けする大器晩成タイプ。

★バットガール(バーバラ・ゴードン)

元ロビン…ではなくバットマンの協力者としてお馴染みゴードン警部の娘。

 警察官である父とは異なる方法で悪と戦うためバットガールとなる。ジョーカーの策略で下半身不随になった際にはオラクルと名乗りいわゆる「椅子の人」をしていた。本作でも経緯は同じようだが無事復帰している。クールな従姉妹のお姉さん
 ゲーム的には正面からの戦闘が得意な他、ハッキングで敵の武器やトラップを逆利用でき、更にバットラングとグラップリングショットを戦闘に使い、パトロール中はマントで滑空できるなど一番バットマンっぽい動きができる。

★梟の法廷

 数百年も前から「ゴッサムシティを影から支配する秘密結社」として広く語られる存在だが、誰も実際に見たことはなくおとぎ話の存在と思われている。
 街のあらゆるシステムに入り込めるバーバラや、存命時のブルースにすら尻尾を掴ませないほど高い秘匿性を持っている他、「タロン(爪)」と呼ばれる謎の暗殺者を操り街を牛耳っている。

★影の同盟

 悪を殲滅し世界を浄化することが目的として生まれた集団だが、腐敗を極めたゴッサムに対しては「救う価値なし」として徹底的に破壊しようとしているためバットマンとは敵対関係にある。
 首領であるラーズ・アル・グールは死者を蘇生できる泉「ラザラス・ピット」を利用し数百年もの間活動しているが、復活の副作用により狂気に蝕まれている。

★バットマン(ブルース・ウェイン)

世界最高の探偵、闇の騎士など様々な異名を持つ伝説のヒーロー

 表向きはゴッサムシティの億万長者ブルース・ウェインとしてプレイボーイを装いながら街の再開発を行いつつ、裏では犯罪者にとっての恐怖の象徴「バットマン」として悪と戦い続けていた。本作においてはオープニングで宿敵の一人ラーズ・アル・グールとバットケイブで対決するが相討ちになり死亡。
 ゲーム的には本当に操作する機会はないものの、データベースのテキストは彼の視点から描かれている他、街を探索することで彼が残したボイスメッセージを聞くことが出来るなど、死してなおその存在感は大きい。

★アルフレッド

 代々ウェイン家に仕える執事であり、幼い頃に両親を失ったブルースにとっては唯一の家族だった。若い頃は俳優や従軍など様々な経験をしており、その頃の経験をフル活用してバットファミリーの活動を長年支える。スーパーじいちゃん。
 本作においては、数年ぶりの旅行から帰ってみたらブルースの両親に続きブルースも失うという憂き目にあうが、それでも折れること無くバットファミリーのサポートを続ける。

◆ストーリー編

 上記の登場人物たち織りなす物語も本作の見所の一つ。導入については触れたのでそこから更に先の展開に進む上で知っておくとよい情報を書いてみます。

★「デス・イン・ザ・ファミリー」

 バットマンの歴史において「家族の死」というのは重大な意味を持っています。そもそもブルース少年がバットマンになったのも両親の死がきっかけですし、ナイトウィングがロビンになるきっかけも同様でした。そしてこの話題においてレッドフードことジェイソン・トッドは絶対に避けられない存在です。
 上記でも触れましたが、ジェイソンはロビンとして一度死亡しその後20年近く復活することがありませんでした。死亡しても最終的に生存ないし復活することが不文律化しているアメコミにおいてはかなり珍しい例と言えます。(彼の死と復活に関する顛末は実にアメコミらしいエピソードです。概要を知るだけでも面白いので興味があれば調べてみてください)
 復活までの長い期間、ジェイソンの死はブルースだけではなく、バットファミリー全体に暗い影を落としたと言われています。そしてそんな経緯を持った彼が、今度は復活してようやく和解もできた恩師ブルースを喪った。複雑な心境を抱えつつも、彼なりに仇を討とうと奮闘する姿には注目してほしいと思います。

★ジェームズ・ゴードンについて

 ジェームズ・ゴードンと言えば、腐敗し汚職がまん延したゴッサム市警において唯一正道を貫く警官で、バットマンの味方として描かれるキャラクターですが、本作においてはブルースの死よりも前に殉職したことがオープニングで明かされます。
 彼の娘であるバットガールことバーバラも、ジェームズとブルースと立て続けに喪ったこともあり現在はやや自信喪失気味。英雄の像として市内に建てられたジェームズの銅像の姿に違和感こそ感じるものの、生来持つ映像記憶能力を持ってなお父親の顔を鮮明に思い出せないまでに追い詰められてしまいます。
 そしてジェームズ・ゴードン亡き今、ゴッサム市警は再び汚職がはびこり自警団員たちを敵視する状態にあるのですが、かつて父親が勤めていた市警もまた彼女にとっては家族の一員。警察組織の腐敗を食い止め街に正義を取り戻すことができるか。というのも焦点の一つになるのです。

★それぞれの想いを胸に「バットマン最後の事件」へ挑む

 ナイトウィングにとってのバットマンは、いうなれば「やり方を押し付けてくる父親」。次のバットマンになってほしい為に厳しいやり方を強いたブルースに対し、それに反発したディックは別の町を自分のやり方で守る事を選択。喧嘩別れも同然になった二人はお互いを尊重しあいながらも、ぎこちなさを残したまま別れることになりました。
 そしてロビンにとっても「バットマンの死」というのは衝撃的な出来事です。誰よりもゴッサムにおけるヒーローの重要性を知る彼は、戦い続ける中で「サイドキック(脇役)」と揶揄され、バットマンのいないロビンという無力さを感じることになりながらも、街の守り手として成長していくことになるのです。
 やり方も性格も異なるうえに血の繋がりもない彼らですが、共通していることは大事な人を喪ったということ。バットマンが残した断片的な情報を元に捜査を再開していきますが、その先にはゴッサムという街の闇が待ち構えています。果たして彼らは過酷な戦いを前に一丸となって街を守ることが出来るのでしょうか…

◆ゲームプレイ編

 続いて本作のゲームの流れを紹介しましょう。大まかな流れを言うと、街中をパトロールしつつ犯罪を追いかける。ゴッサムシティの日常の中で自警団活動を楽しめるといった趣きで、この点で一夜のうちに起きた大事件を解決するアーカムシリーズとは着眼点が異なります。
 まずは拠点となる「ベルフライ」で操作するキャラクターを選択し、ゴッサムシティへパトロールへ出発。メインストーリーの進行状況によっては目的地が明らかになっていることもありますが、そうではなく情報収集から行う必要がある事もあります。

 ゴッサムシティでは幾つかの勢力が活動をしており、「▽」のマークは事件と言えるほどではない小規模な犯罪活動「機会犯罪」を示しているので、まずはそこに向かいましょう。

▲到着すると市民が襲われている現場を発見。
▲機会犯罪を解決したり、尋問により証拠ゲージが溜まっていきます。
▲場合によっては尋問がメインミッション解放の条件になることも。

 ゲージをある程度溜めることで、次の夜に計画されている大規模計画犯罪の存在が明らかになっていきます。これはマップから開始地点を確認できるので、パトロール開始時に大まかな位置を確認しておくのがいいでしょう。

▲銀行強盗の阻止からハッキングの妨害、不審な死体の調査など多岐にわたる。

 様々な犯罪を阻止しつつ、メインミッションの開始地点に向かうというのが大まかな流れですが、メインミッションをクリアしても夜は明けません。解決できていない計画犯罪は残ったままなので無理のない範囲で戦い続けるもいいですし、収集要素を探してぶらついたり、バットサイクルを夜の街で駆るのも自由です。
 街を出歩いてみると、夜とは言え当たり前のように市民はその辺を歩いているし、警官もパトロールを行っている事に気づくと思います。これは従来のゲームではあまり見られなかった演出で、コミックや映画で描かれる「アーカムシティの日常」をより深く体験できる本作ならではの点ですね。

▲無事帰宅するとその日のリザルトが表示されます。お疲れ様でした。

◆戦闘編

 次に戦闘に関してですが、一対多の3Dアクションゲームで近接攻撃と遠隔攻撃の2種類が主な攻撃方法。それぞれボタンの長押し有無によって素早く繰り出せる軽攻撃、防御を崩せる重攻撃に分かれるので戦局に合わせて重攻撃や遠距離攻撃を交えつつ、敵の攻撃は回避し立ち回るというオーソドックスなスタイルです。
 また、遠隔攻撃は肩越し視点での精密射撃も行える他、一定以上ダメージを与えた敵は掴むことも可能になり、そこから一撃必殺の「掴み攻撃」か、他の敵を巻き込んでダメージを与える「投げ攻撃」のどちらかに繋げることが可能。加えて、各キャラそれぞれゲージ消費タイプの特殊攻撃「モメンタムアビリティ」を複数持っています。
 一見すると選択肢が多くて複雑そうですが、基本的には近距離攻撃を連打しつつ、敵の攻撃が見えたら回避をする。というパターンだけ覚えておけば序盤は問題なく戦えます。慣れてきたら掴みを織り交ぜたり、パトロール中であれば高所に移動して仕切り直すことでスムーズかつ爽快な戦闘を楽しめるわけです。

 このタイプのゲームでは珍しく、回復は任意のタイミングで行えるシステムで、毎回パトロールを開始する際にヘルスパックを7つ所持しています。一見多いように見えますが、実はなかなか絶妙な個数です。
 先程も書いた通り、パトロールはメインミッションのクリアをしただけで終わりではなく、拠点に帰還するまでが一つの区切りになっているのですが、散発的に発生する機会犯罪を阻止して証拠を集めつつ、その夜に起きる約10件の計画犯罪を阻止するとなると7個では心もとないんですよね。
 一応特定の敵からもドロップはしますが、いかにヒーローたちが強くとも一晩続く連戦を乗り切るには正面からの突破だけでは難しい。ではどうするかというところで本作におけるもう一つの戦闘スタイルであるステルスが活きてきます。

 ステルス戦における主な選択肢は2つ。一つは短時間で敵を倒せる代わりに大きな音が出てしまう「アンブッシュ・テイクダウン」と、もう一つの敵を倒すのに時間がかかる代わりに音が出ない「サイレント・テイクダウン」。
 近くに他の敵がいないのであれば前者、逆に敵が多く音を出したくないのであれば後者と使い分けることになりますが、そう簡単にはいかず、実際には敵の配置や進行方向を上手く察知して素早く行動することが大事。
 観察して迅速に行動し、イレギュラーが起きたらアドリブで対処する。これはステルスゲームの醍醐味ではあるものの最初のうちは難しいんですよね。簡単にではありますがちょっとしたコツも書いておくことにします。

★Point1:マーキングを使って位置を把握する

 肩越し視点で敵を視認し続けるとマーキングがされ、壁越しでも敵の存在を認識できるようになります。まずはマーキングを付けて敵の位置を常に把握できるようにしておきましょう。

★Point2:音で誘導する

 肩越し視点で行う射撃は着弾点に音が出るので、敵の視線を移動させたり、その方向に誘導することが可能。ちなみにレッドフードは思いっきり銃を撃っていますが、発砲した位置よりも着弾点を敵は優先します。

★Point3:周囲のものを利用する

 ステルス中にARモードを使うと、敵だけではなく周囲の利用できるギミックもハイライトされます。上手く利用すれば複数人を一撃で倒すことも可能なので、戦況を有利に傾けられます。

◇補足:装備とエレメンタル

 ここまであえて触れてこなかったのですが、本作はアクションだけではなくRPGの要素も持ったゲームになっていて、その象徴とも言えるのが、各キャラクターの戦力の指標になる装備と、それに付随するエレメンタル(属性)のシステム。
 やや複雑な要素なのでゲーム内のヘルプの内容に補足する形で簡単に触れていくこととします。今はとりあえず流し読みするだけでもいいと思います。

 スーツと遠近の武器に設定された数値からキャラクターの能力が算出される仕組みになっています。数字が多いのですが、メインストーリーにおける難易度の指標は画像右上にある「レベル」なので、それ以外の数字はあまり気にしなくても遊べます。一応、装備自体は頻繁にドロップするので、少し苦戦し始めたときや、拠点に戻った後に見直してみると良いでしょう。

 また、装備にはスロットが空いているものもあり「MODチップ」という追加のアイテムで強化することが出来ます。これも色々書いていますが、ひとまずはアイコンの数字が大きいものやレア度が高いものを選べばよいと覚えておけば最初のうちは十分です。つけ外しは自由なので、強いものをキャラクターで使い回すのがおすすめ。

 ちなみに装備とMODは解体することでリソースにすることも可能。そこからまた新しい装備の製作もできるようになっていますが、リソースは敵からもドロップするので、スロットやエレメンタルがあるもの、気に入った見た目のものがあれば取っておいても大丈夫です。

 「エレメンタルダメージ」はいわゆる状態異常の要素。その属性がついた武器で攻撃すると属性ゲージが蓄積され、満タンになると追加効果が発動するという仕組みで、継続ダメージを与える「猛毒」「燃焼」、行動を阻害する「冷却」「衝撃」「感電」の2グループに分かれています。

■中書き

 まずはここまでお読みいただきありがとうございます。本作特有の世界観やキャラクターたちとその内面、そして「自警団活動」に特化したゲームプレイの中身について触れてみたわけですが、どれか一つでも気に入った部分があればきっと楽しめるはずです。

 引き続き私が遊んだ感想…の前に、番外編としてコミック、映画、ゲームの各ジャンルにおけるバットマン関連おすすめコンテンツを紹介します。もしも本作を遊んだ後、次に触るコンテンツに悩むことがあれば参考にしてみてくださいね。

★「バットマン:梟の法廷」「バットマン:梟の街」

 タイトルの通り、バットマンと本作のヴィランでもある「梟の法廷」との戦いを描いたコミックで前後編に分かれています。翻訳版はいいお値段しますが作中の用語解説や、バットマンの歴史を簡単にまとめた手引きもあるのでおすすめ。ちなみに原語版はAmazonでセールをしていることもあるようなので、英語が読める、もしくは翻訳ツールを使うならこっちもあり。

★「バットマン:梟の夜」

 こちらは上記二作の番外編。「梟の街」でバットマンが法廷との決戦に臨むのと同時刻に起きた襲撃と、それに対処するバットファミリーがメインで本作の主人公たちも大活躍。

★「バットマン:アーカム・ナイト」

 言わずと知れたアメコミゲームの最高峰。四部作の最終作なんですが本作の主人公たちも登場するし、吹き替えもありとっつきやすいのでこれを推しておきます。 本作では操作できないバットマンはもちろん、DLCではナイトウィング、レッドフード、ロビン、バットガールそれぞれを主人公にしたショートストーリーを楽しめる一作。これをやるとバットマンの強さが改めて分かりますね。

★「ニンジャバットマン」

 日本制作のアニメーション映画で、こちらもバットマンだけではなくバットファミリーとヴィランが勢ぞろい。
 あらすじは「日本の戦国時代にタイムスリップしたバットマンが、ヴィランたちによる歴史改変を食い止める」という一見荒唐無稽な内容ながら、武器の一つである最新テクノロジーを封じられたバットマンが慣れない戦国時代での戦いの中で自らを見つめ直すという、「バットマンとは?」という問いに対する解答の一つに触れられる作品。
 以前はNetflixで配信されていたんですが、現在であればAmazonプライムビデオでレンタルするのが手っ取り早いと思います。


■レビュー

 ではここからはレビューということで、実際に遊んで感じた正直な感想を書いていくこととします。また、紹介がかなり長めになったのでレビューはできるだけ簡単に書いていきます。
 また、普段は「あのゲームに比べてこのゲームは…」みたいな書き方は出来るだけ避けるようにしているのですが、本作の場合「アーカムシリーズと比べてどうなのか」が気になる人もいるかもしれないので今回はそちらも引き合いにだしていこうと思います。

 まずなんといってもコンセプトが面白い。「バットマンが死んでしまい、その後を継いでバットファミリーが戦う群像劇を描く」というのは映画やコミックでは出来ない内容ですし、そこから始まるストーリーも意外性に溢れていて、ある程度バットマンコンテンツに触っているからこそ意表を突かれるような展開もあり満足でした。
 以前別のゲームのレビューをした際に「マルチバースの概念が浸透していない日本のプレイヤーに、そのゲームの世界線がオリジナルのものであると理解してもらうのは大変」という旨書いたのですが、本作は「バットマンの死」という衝撃的な展開を冒頭に持ってくることで、これが独自の世界の出来事であると示すことに成功しています。
 そのコンセプトとストーリーを支えるゲーム内の作り込みも良くできていて、同じミッションでも操作するキャラクターによってセリフはもちろん違うし、一部のステージでは内部での演出も異なる手の混みよう。

 ゲームプレイの部分に触れていくと「大事件を一夜の内に解決する」というヒーローものの流れで進むアーカムシリーズに対して、本作は「ゴッサムで自警団活動を地道に行い陰謀を少しずつ明かしていく」というサスペンス寄りの内容。どちらもバットマンのストーリーテリングの上で重要な要素ではありますが、警官がパトロールしたり市民が普通に出歩いているゴッサムは新鮮でした。

 最初は「オンラインプレイ対応」の部分や、ステータスを装備で決定するシステムに嫌な予感を感じていたのですが、これは結果的に杞憂だったのは嬉しい誤算。
 紹介の部分でも触れたのですが、普通にクリアするだけならレベル以外の数値はあまり気にする必要もありませんでした。もちろん装備は適宜更新したほうが快適ですが、厳選作業などは必要ありませんし、状態異常に関しても数は少なく効果も分かりやすくグッド。
 レベルが推奨値に達していて、拾った最新の装備を身に着けている状態なら基本的に敵よりもこちらの方が強い状態なので戦闘一回の難易度は高くない一方、回復アイテムの個数制限などでRPGのとしてのバランスを取っている印象です。

 体力回復に関するシステムについてもう少し深掘りします。戦闘が終わるたびに回復していたアーカムシリーズと違い、本作ではパトロール開始時点で所有している7個と敵からのドロップするのみで一晩戦い抜かないといけません。
 紹介の部分でも書いたのですが、7個というのはメインミッションと一晩の計画犯罪全てを阻止するにはやや心もとない個数で、戦闘一回の難易度は高くないとはいえ正面からの戦闘のみ行っていては高確率で不足する量です。
 だからこそステルスを駆使したり、装備を見直したりという戦闘以外の要素に触るきっかけが生まれ、ゲームプレイがワンパターンになりにくくなっているのだと思います。

 実際、メインミッションの大事件をクリアしたものの回復薬は尽きかけ、そんな時に限ってマップは犯罪のアイコンに溢れた状況がありました。長時間のプレイも相まって疲れているし、撤退というのも悪くない選択肢です。
 ただそんなとき、ふと「バットマンなら事件を放っておいて退却するだろうか?」という考えが脳裏によぎって、気付けばボロボロになりながらマップの正反対の場所まで犯罪者を追いかけていました。
 冷静に考えれば適度に休憩をすべきですが、バットマンの弟子として「バットマンならどうする?」と考えながらプレイするという本作のコンセプト通りの体験ができたのも確か。この一晩という区切りとリソースの上限というのはゲームバランスだけではなく没入感にも影響を与える面白い仕組みです。

 ただ、こういった要素の殆どは「バットマン」というコンテンツに関してある程度の知識がないと活きてきませんね。そもそも日本国内では本作の主人公たちの知名度がそこまで高くないので最初のうちはキャラクターに感情移入しにくいと思います。
 本作の「バットマンが死亡し弟子たちに後を託す」というシチュエーションの良さはゲーム冒頭のスピード感にあるので、各キャラクターのオリジン(誕生秘話)を長々と語るのも間違いではありますが、ここは本作に興味を持った人の多くが突き当たる問題かもしれません。
 一応各キャラクターの略歴はいつでも閲覧できるし、自警団活動初期からゲーム開始直前までをブルースの視点から辿る内容の収集要素でここまでの経緯を補完をしているのですが、それでも予備知識がないプレイヤーには不十分な気がします。この点が、今回紹介の部分に重点を置く事にした理由でもあります。

 また、正直なところ私自身プレイ中にアーカムシリーズの存在を感じる場面は少なからずありました。本作には本作の良いところがあるし、アーカムシリーズも全てが完璧なゲームではないとは思うのですが、それでも幾つか気になる点があったので触れていこうと思います。

★戦闘に関して

 アーカムシリーズと比べて速度は抑えめ。そもそもあちらの戦闘はかなりハイスピードなので、あくまで標準的なスピード感といった印象。直感性や様々な動作を一瞬で行えるアクセス性、それに伴う速度感という面においては流石に見劣りします。
 ただ、アーカムシリーズの戦闘の肝はコンボを溜めるために敵の行動に対してノーミスで適切な行動を取り続けるという少しシビアなものでした。対して本作はそういった要素を本作のゲームスピードに合わせて上手く再構築していて、マイルドでとっつきやすいバランスになっています。
 どちらかといえば、4人の操作キャラクターの得意な分野というのは、アーカムシリーズのバットマンなら一人で全て出来たことなんですよね。師匠であるバットマンの方が強いのは当然といえばそうですが、ある程度ゲームを進めてスキルを揃えるまでは、バットマンを四分割したキャラクターたちという印象になってしまったのが残念なポイント。

 スピードが緩やかになった事と、シビアさを減らしたことについては、以下の動画で言及されている「ゲーム性と一般性」の話がここでも当てはまると思います。この話色々応用が利くので引用しがち。

 例えば敵の攻撃に対する「反撃」の場合、アーカムシリーズの「カウンター」は早くても遅くてもダメな、上記の動画で言われているところのリスクとリターンが近い場所にあったのに対して、本作の「ジャスト回避からの攻撃」というアクションは、多少タイミングが早くても回避行動自体には成功するという点でリスクは低くなっています。
 「コンボ」に関しても同様で、あちらは被弾でコンボが途切れた時点でテイクダウンなどの強力な攻撃が使えなくなってしまうのに対して、本作における強力な攻撃「モメンタムアビリティ」は被弾してもこれまで溜めていたゲージは消えないので、劣勢からの立て直しがしやすいのもグッド。

★移動方法に関して

 ここもやはりスピード感が少し抑えられている印象。本作の移動手段は、初期から使えるバットサイクル(バイク)とグラップリングを使った慣性ジャンプに加えて、一定の条件を満たすと「ヒロイックトラベル」というそれぞれ異なる移動手段が獲得できます。
 まずバットサイクルについては操作性も良く速度も早め。強いて言うなら「アーカムナイト」のバットモービルにあったニトロブーストがあれば最高でしたっていう程度。グラップリングランチャーに関してはそもそもグライドが標準機能ではないので、射出と滑空を繰り返すテンポは再現できないことを踏まえても少し物足りない速度です。せめてこちらにはブースト系のスキルは欲しかったですね。
 ヒロイックトラベルについてはキャラごとの格差が大きくて、ここは少し気になりました。ナイトウィングとロビンは上昇下降自在で速度も早いんですが、レッドフードは途中でグラップリング射出を行わないと減速していくし、バットガールに至っては完全にアーカムシリーズの劣化になってしまっています。

 せっかくなので各キャラの比較と

 ナイトウィングとロビンのヒロイックトラベルの詳細を撮影したものを貼っておきます。

 一つだけ幸いなことがあるとすれば、本作は序盤からファストトラベルが解禁される点。これがあるおかげで、解禁以降は「長距離=ファストトラベル」「中距離=バットサイクル」「短距離=グラップリングとヒロイックトラベル」と分担出来るので実際にはそこまでストレスになることはありませんでした。

★UIについて

 画像で確認してみましょう。

▲ARなし
▲ARあり

 普段は必要最低限の情報のみ表示して、プレイヤーの操作によって短時間拡張的に情報量を増やす仕組みで、シンプルだし没入感は高め。アーカムシリーズもこの辺りはかなりシンプルに出来ていたので、良くも悪くも踏襲されていますね。
 ただ、序盤のミッションで「XX地区で尋問を行え」というざっくりとした指示のみ出されたとき、地形が全く分からなくて困ったことがあったので、どうせならミニマップも拡張方式で欲しかったと思いました。

▲範囲内かどうか確認するためにマップを何度も開くハメに…

 アーカムシリーズから強化されている部分としては、アクティビティや機会犯罪がある場所では発砲音が鳴り響いていたりパトカーのパトランプが明滅していたりといったサインがかなり遠くからも認識できるようになっている点。おかげでARモードを一々発動しなくても、近くに犯罪現場があることが感覚的に分かるようになっています。

▲高架下の犯罪も音と視覚で見逃しません。

★ヴィランとアクティビティについて

 アーカムシリーズと比較すると登場するヴィランは少なめ。追加要素を含めないのであれば、メインである「梟の法廷」と「影の同盟」以外には3名しかいません。また、その都合で本作のアクティビティ(護送車襲撃や銀行強盗の阻止など)もストーリーの要素はなし。
 良い点としては、3名のヴィランはいずれも「バットマン(ブルース・ウェイン)の死」という本作のテーマに沿ったストーリーが展開されるし、彼らと戦うミッションに用意された専用マップもかなり手が込んでいることもあり、体験自体は良質です。
 もう一つ、アクティビティに関しては自動生成されるようなので、アーカムシリーズのように全てのミッションを終えてしまうと暴徒と戦うくらいしかすることがない。という事態は避けられます。「ニューゲームプラス」の要素もあるので長く遊べる工夫がされているのは嬉しいところですね。


■まとめ

◆良い点
・「バットマンの死」を始めとしたユニーク着眼点を上手くゲームに落とし込んでいる。
・会話やステージの演出など作り込みも良い出来で、体験としての質は良好。

◆良くない点
・「バットマン」というコンテンツに関しての知識がないと、良い点が活きてこない。
・高すぎる「アーカム」シリーズの壁。戦闘や移動は評価できる点もあるが、劣化と捉えられても仕方がない点も。

◆総括
 まず「バットマンの死」という衝撃的なコンセプトと、その真相を追う4人のヒーローの姿を多角的に描くという演出は、映画やコミックのような制限がなく、プレイヤーの選択が重要になるビデオゲームとの相性が凄く良くて面白いです。最初こそ「マルチプレイ対応のアクションRPG」という点に少し警戒したのですがこれも杞憂でした。

 そういった演出を支える細かな作り込みも十分で、選択したキャラクター毎にしっかり会話は収録されているし、ステージによっては演出も異なる。と「バットマン:アーカム」シリーズとは別の方向で物凄く手が込んでいました。惜しむらくはミッションのリプレイが出来ないので、そういった作り込みを確認するのが大変な点くらいでしょうか。

 ただし、これまで挙げた魅力を感じるには、ある程度「バットマン」というフランチャイズに関する知識と理解が求められますし、それがない「触れたことはないけど関心はある層」というのは、やっぱり「バットマンを操作してジョーカーと戦ってみたい」と思うんですよね。そういった潜在的な顧客層に対しての訴求力というのが少し不足しているように思われました。

 また、これは本作の問題ではないのですが、やはりアーカムシリーズの存在は大きな壁として立ちはだかります。あちらと比べて本作は全体的にスピードは遅めだし、部分的に見劣りしている挙動もありますが、戦闘のバランスは本作も良好ですし、ファストトラベルなど便利なシステムもあるので一概に劣化しているわけではありません。

 総括すると、人には勧めにくい部分もあるが、間違いなく面白い部分はあるので埋もれていくのは惜しい作品。といったところ。


■あとがき

 ここまでお付き合い頂きありがとうございます。ゲーム自体の紹介に特化した内容を書いたのは初めての試みですが、こんなゲームもあったんですよ。というのを誰かに知ってもらえれば嬉しいです。

 ところでまとめの「潜在顧客を取り込む訴求力に欠ける」という話を書いていたときに思ったんですが「スーサイド・スクワッド:キル・ザ・ジャスティス・リーグ」はそういった努力を行えている作品と言えそうですね。なんといっても世界観をアーカムシリーズから引き継ぐという部分が大きいです。
 そのおかげでスーサイド・スクワッドを知らなくてもアーカムシリーズを辿った人なら「バットマンはアーカムナイト事件の後どうしていたんだろう?」と思って気になるし、「アーカムナイトから続投のキャラは同じ吹き替え声優を起用する」というのもフックとして機能していますね。
 ただ個人的には、オンライン要素のプッシュ具合やギルドなどの要素がやや不安というか、2010年代末期のグダグダ引きずっていないか心配だったり。

 というわけで(?)次回の「今更ゲーミング」でご紹介しますは、2024年2月2日に発売されるこの作品!!

/スーサイド・スクワッド:キル・ザ・ジャスティス・リーグ\

 と思ったのですが、これをやると『最新作でもなければ、人気作でもない。歴史の闇に埋もれそうなゲームを「今更」発掘。そして紹介する』というコンセプトがぶっ壊れるので、やめておくことにします。実際のところしばらくは風来のシレン6をやりたいので次回は未定。機会があれば読んでいただければ幸いです。

 それでは今回はここまでとします。お読みいただきありがとうございました。

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