宵待草
執筆した小説群の、完結作お知らせマガジンです。
エピソード1 0
人は、死を意識する時、必ず自らの本能から、自分の過去を語るものだ。
令和の時代は、度重なる戦争が人間の心を退廃させ、人々の気持ちという善なるものは廃れてしまっていた。
「どうして私の気持ちをわかってくれないの!」
1話 気配に誘われて
第1話
嫌われの1話 嫌われ続ける男 誠実、30歳、男。 今日も25メートルほどの高所作業中。 「誠実さん、足場板あと何枚いるっすかー?!」 「おぅ、そうだな。10枚上げろ!」 「わかりました!」 足場とは、建設に限らず高所作業の際、足掛かりとなる場所で一般には仮設足場とも呼ばれる。 しかし、職人の間で仮設の言葉を付ける者はなく足場組という独特な言い回しで認識されている。 ビル工事現場等一般の人の目に触れて行う業者と大きな工場内で足場を組む業者では、考え方が異なり、一線を
壱 テーブル 其処にはテーブルが家の佇まいを象徴するかのようにどかりと座る。 木目には川の流れに合わせるように曲線が映えている。 上にあるのは、茶碗と皿。まるで此れから聖なる儀式を取り扱うかのように 厳かに整然と時が経つのを待っている。 私はその前にいて椅子に正しく座り、姿勢を律するのだが 目のやり場を探すほど落ち着かない。 餌をもらう犬と同じだ。 「ワン。」とは言わなくても、壁の眼は私を家畜だと思う事だろう。
1 犯人の顔
その昔 ある時代の物語・・・・
壱首 渦巻きを 河の眼に 喩えれば 眼下の景色 青の壁面 ※ (解説) 運河にある渦巻きが人間の眼のように見える。 その河の目から眺められる景色はきっと 真っ青な空だけだろう。 。 ・ ・ 妻へ贈る第壱首 宵の面 描きたるかな 満ち筋と 二足揃え 有明月と ※夜の有明海、二人寄り添いながら歩くと水面が筋を描き、月の灯りと共に幻想的な二人の世界となり互いの目標が見えて来た。
① その時の事はよく覚えている。 身体の中に豊潤な酒が流れ込んでくるようなその人への酔いしれる気持ちが私には忘れられない。 彼女は清楚であり理知的であると同時に、人を魅了する艶やかな色彩をその唇から放たれる言葉の隅々に表現して、決してあからさまな派手な色香を漂わせることなく、私の心を塗り替えていった。 どうしてだろう、彼女は寂し気でもあったのは。 周囲から高貴な目で見られている彼女には影のある重々しい過去など似つかわしくない筈なのに、私には何故か彼女の影が人より濃く見えるの
カウント6 イップス 冷たい天井をずっと眺めていた。そこにポツンと張り付いたLEDの蛍光灯。世界はこの進化した電球に注目した。長期間切れる事がない。電流を流し続ければ何時までも人間を暗闇に映し出す。青白かったその顔は彼らによって色彩を帯びる事になった。まるで生気を取り戻していく死体の様に。 「俺はそれとは反対だな。この鮮明に映し出す発光体は死に逝く俺の表情をなめながら血の気を奪って行ってしまう。根こそぎに・・・」 「♪♪・・・ただそこにいてくれるだけで同じ風に触れてくれ
私は今、ホスピスで毎日を過ごしています。 皆さんも名前位は御存じじゃありませんか? そう、あの末期がんの患者が暮らす終の棲家。 私の余命は、周りの患者さんより長くて、6か月ほど。 でも私に悲壮感ってものはありません。 毎日活き活き生きています。 なんでかって、だって私には素敵な彼がいるんですもの。 彼は芸術大学を卒業して画家として生活するべく日夜頑張ってる。 ここから近くのフランス料理店で、ウエイターとして働いて、終われば絵描きとして街頭で肖像画や景色なんかを描いてる。 深夜
「あのおばあちゃん達、道路で、しかもあそこで話しこまなくてもいいじゃん。邪魔したいだけ?」 草刈り作業が本格化する7月。 西庄環境合弁会社は道路沿いの草刈り作業に追われていた。 警備員が立ってはいるが、地元住民が歩道に立ち話し込んでいるのを咎められないでいる。 昭和の井戸端会議である。 令和元年7月14日天候青天。 気温39度。 草刈り班の刈る近くで何故喋っているのか? 作業ははかどらない。 熱風が体力を一緒に奪い去って行く。 刈り刃から石が飛び出すのを防ぐためにネットを持
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