Web小説発掘記 その266 異世界の聖女様が迷い込んだのは、なんと俺の家でした。~一緒に暮らすうちに溺愛されるようになりました。~ 作者 小笠木 詞喪(おがさき しも)様

本編URL

https://kakuyomu.jp/works/16817330669322681835

前書き

この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的意見です。
評価の基準としては200円~700円前後の書籍を購入し、読んだものとして付けさせていただきます。
そのため基本的には厳しめとなります。
※こちらは『第29話 邂逅』までを読んでの感想、レビューになります。

あらすじ

聖女アルフィリアは、人々に害をなす魔力災害の調査と対処を命じられ、その対応をしていた。
順調に終わると思ったその瞬間、謎の力の介入により姿を消してしまう・・・。
彼女が目を覚ますと、そこは見知らぬ場所で・・・。

異世界転移により現代に迷い込んだアルフィリアを保護という名目で、同じ屋根の下で彼女と一緒に暮らすことになった早乙女優は、一緒に暮らしていくうちにアルフィリアにだんだんと惹かれていき・・・?
損得勘定を信条とする優と異世界の聖女の初めてだらけの異世界ラブコメ!

ストーリーと見所

ファンタジー世界の聖女が現代に転移してきて、そこで主人公で会うところから始まるラブコメ作品。

異世界に行くのならともかく、異世界からくるというのは何とも珍し……いや別にそうでもないか……。

まあとにかく、そんな感じで始まる異世界ホームステイ作品。
主なストーリーの特徴としては、やはりヒロインである聖女が異世界から転移してきたというところだろうか。

所謂文化的な違いによる戸惑いなど、特に最序盤に関してはそれらのエピソードが多く、それらを中心にして話が進んでいく。
またこちらの作品の独自要素としては聖女が元の世界でそれなりに酷い目にあってきたというところがあげられる。

そのため基本的に腰が低く、薄幸な雰囲気を持つ彼女が周囲の人達の温かみに触れる姿は、それまでの苦労を想像すると胸が熱くなる。

もう一つは主人公の家族が何かと物語に関わってくるというもの。

その点で他のラブコメ作品とはちょっとした違いが生まれ、家族の温かさのようなものを前面に押し出したようなストーリー構成となっている。

序盤は異世界との文化の違い、中盤からは主人公の幼馴染が登場しての恋の戦い、そこから少しずつ主人公自身の過去の話にも触れられていくといった丁寧な構成。

文章も非常に丁寧で読みやすい、分量的にはかなりあるのだが、情景と心情のバランスがとてもよくかなりハイペースで読み進めることができる。

様々な面でクオリティが高く、安定して読み続けられる良作小説といっていいだろう。

キャラクター

早乙女優

物語の主人公。
あらすじには損得勘定を信条……とは書いてあるが取り敢えず読んだ限りではその設定は序盤ぐらいでしか語られていない。

ヒロインの行動にドキドキしたり、鈍感だったりと場面によってその辺りが安定していない。

読んだ時点では物語的に都合がいいような印象が拭えないが、今後もっと人物像が掘り下げられていくとまた変わってくるのだろう。

アルフィリア

ヒロイン。
異世界転移してくる。

聖女とはいえなかなか可哀想な身の上で、そんな彼女が家庭の温かさに触れて癒されているのも本作の見所の一つ。

総評

評価点

読みやすい文章、丁寧な物語の展開。
実に読者に優しいラブコメ小説。

疲れた心に王道ラブコメがスーッと効いて……。
もう一人の幼馴染ヒロインとのやり取りも、そこまでどろどろしたものではなく正々堂々とした主人公の取り合い勝負となっている。

ラブコメに加えてほのぼのとした日常や、家族の心温まるやり取りなど、作品としての見所が多いのも楽しめる要素となっている。

問題点

良くも悪くもほのぼの。
29話でようやく事件が起こるのだが、それまではよく言えば丁寧で口当たりの良い、悪くいえば少しばかり退屈な物語となっている。

また各キャラクターに関しても、個性が強いかといわれると正直弱めとなっている。

最終評価 57点(Web小説としては充分な良作)

かなり丁寧で、過激すぎる要素もない。
ハートフルな要素が満載の本当に誰にでも勧めやすい万能ラブコメ小説。

全体的な雰囲気が柔らかく、読んでいて安心感が凄い。

文章に関してはとてもバランスが取れていて、引っかかる部分が殆どないのも大きな特徴の一つ。

「いいラブコメない?」と聞かれたら取り敢えず勧めておいて間違いない、全体を通してとても優良な作品。

所要時間は『第29話 邂逅』までで凡そ50分ほど。

極めて個人的な感想

序盤の流れは最高で、物語も丁寧で優しい。
作者さんの優れた技量を少し読んだだけでも感じ取ることができる素晴らしい小説。

そこが味ではあるのだけど、ちょっとだけ薄味すぎるのかも知れない。

特に主人公のキャラクターは意図が読めない部分が目立ち、そこが個人的には残念。


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