Web小説発掘記 その256 革命の反逆者共〜自由を求め続けた奴隷〜 作者 大城時雨様

本編URL

https://kakuyomu.jp/works/16818023212517434813

前書き

この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的意見です。
評価の基準としては200円~700円前後の書籍を購入し、読んだものとして付けさせていただきます。そのため基本的には厳しめとなります。
※こちらは『第23話 これこそが答え』までを読んでの感想、レビューとなります。

あらすじ

平穏に暮らしていたヤマト人の青年、ヒロトとマサトシはある日、侵略者『ルーブ人』によって、別々の土地へ『奴隷』として飛ばされてしまう。だが、別れ際彼らは約束した。『どんな土地へ飛ばされようと、自由を求め戦う』と。

それから数年が経過したある日、ヒロトは植民地からの脱走計画が奴隷監督にバレ、処刑の1歩手前まで追い込まれる。しかし、そこに現れたヤマト人と異国人のハーフである謎の女『ユードラ』によって救出され、同時に爆発を起こす超能力『フジヤマ』を手に入れた。

力を手に入れたヒロトは、ユードラや仲間達と共に植民地からの独立並びにルーブ人への革命を志す。

その道は決して平坦では無い。反逆者を狩るルーブ人たち。迫られる命の選択。道中、ヒロトは何度も壁にぶつかる。

それでも、ヒロトは止まらない。いくら挫けようと、いくら心が折れようと、その度に仲間と共に立ち上がる。遥か彼方の未来に見える『自由』を目指して。

覚悟と犠牲の先に待ち受けるもの。ヒロトが得た謎の力。そして、ユードラの正体とは――

ストーリーと見所

架空の世界を舞台にした、奴隷達の反乱による戦記小説。
主人公達は侵略者であるルーブ人によって植民地化され、奴隷にされる。

その中での反骨心を失わなかった彼は奴隷監督に反抗し、処刑されそうになったところで謎の女から力を受け取って、その超能力的なあれで革命の火を燃やす……といった感じの物語。

作品の大きな特徴としては、戦記ものとは思えないほどのスピード感とテンポの良さ。
余計な情報は省き、キャラクターも必要最低限、文章も読みやすい。

文章に関しては読みやすいというよりは簡素といった方が正しいのだろうが、かなり独特な表現力が特徴。

時折印象に残るような文章が書かれており、ただ単に簡素でわかりやすいだけではなく、味がある。

それに加えて彼の持つ超能力の恩恵もあってか戦闘シーンなどはなかなかの爽快感。

また単純なわかりやすさだけではなく、奴隷達を纏め上げるために主人公の超能力を利用して彼を中心とした宗教のような形でまとまったりと、そういった部分の細かな作りが作品の雰囲気をより濃くしている。

と、読みやすさはかなりのものなのだが、戦記ものとして読むと少しばかり物足りなさがあるのも事実。
上にも書いたが戦記ものによくある軍略や内政部分がかなり簡略化されている感は否めない。

ストーリーも駆け足感があり、主人公達を含めた世界観がわかりにくく、読んでいて戸惑う場面が多い。
確かに彼等の発言などを読んでいればある程度の予測は付くのだが、それにしてももう少し語ってもよかったのではないかと思われる。

その辺りはテンポの良さを重視したということなのだろう。

キャラクター

ヒロト

物語の主人公。
奴隷にされても全く折れない心を持ち、超能力を手に入れ反乱の旗印となる。

基本的に熱血漢であまり細かいことは考えない。しかし、物語の途中でとあることをきっかけに人の命を奪うことに悩んだりとナイーブな部分もある。

キャラクターとしてはわかりやすくいい奴。
どんな人物かも把握しやすいし、周りの人物達と協力していく姿は応援を誘うことだろう。

ユードラ

物語のヒロイン(?)
謎多き美人で、主人公に超能力を与える。

それ以外にも内政を担当し、凄まじい手腕を見せる。
あらすじにもある通り、物語の根幹に関わるキャラクター。

総評

評価点

とにかく凄まじいまでのテンポ感。

話がダレることなく一気に進んでいくので、ぐいぐいと物語に引っ張られる体験を味わうことができる。

ストーリーは王道で、それに上手く熱血漢の主人公が組み合わさってわかりやすく、感情移入しやすいような作りになっているのも魅力。
読んでいて独特な文章をしており、強い印象を残る文が目立つ。

問題点

テンポを重視した結果、やはり些か説明不足。
例として主人公の戦う理由の一つである、生き別れた親友との再会に関してもその親友がすぐにいなくなってしまったのでどうにも説得力に欠ける。
勿論、後々に語られるところではあるのだろうが……。

またストーリーの流れにキャラクターが引っ張られている部分もあり、いい意味でも悪い意味でもご都合主義的な展開が目立つ。
この部分も背景に関しての説明不足が招いたことでもある。

最終評価 48点(Web小説としては普通に楽しめる)

なんといってもテンポの良さとわかりやすさが魅力的な小説。

キャラクターの数もそこまで多くはないので、実にとっつきやすい。
この辺りを読んでいて物足りないと思うか、わかりやすくて楽しみやすいと思うのかは人による部分だろう。

テンポが良く、爽快感がある。
特に主人公は読んでいてこれまたわかりやすく主人公している熱血漢なので、話に入り込みやすいのも大きな特徴。

所要時間は『第23話 これこそが答え』までで凡そ30分ほど。

極めて個人的な感想

実際のところ、戦記ものを普通に書くと説明やらが多くなってしまうので、その辺りを省くのは英断にも思える。
とはいえ戦記ものを好む層はその辺りの小難しさを欲している部分もあるので、難しいところ。アイデアとしてはかなり面白い。

また文章は簡素だが妙な味がある。
個人的に一話の『マサトシの目には、緋色の涙が流れている。それは、決して血の色なんかじゃない。彼の瞳に宿る、炎の色だ。透明な涙に映った、怒りの色だ。』という一文はかなりの名文。



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