Web小説発掘記 その252 亡霊の注文 作者 我那覇キヨ様

本編URL

https://kakuyomu.jp/works/16817330668283027438

前書き

この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的意見です。
評価の基準としては200円~700円前後の書籍を購入し、読んだものとして付けさせていただきます。そのため基本的には厳しめとなります。

あらすじ

若手編集者のアオシマは、本の発売初日に作家本人から「この作品は盗作です」という告白を受ける。
どうしてこんなことをしたのか問うアオシマに、作家の我那覇キヨは動機を語る。
「物語」を巡り、二転三転するストーリー!

ストーリーと見所

編集者を主な主人公としたミステリー小説。

あらすじにある通り、大ヒット小説を担当することになった編集者である主人公が、その作家から突如それが盗作であることを告げられる。

その理由はその作品を世に出すことによって、本当の作者を探すため。

偽の作者である男性がどうしてそのようなことをする必要があるのか、そして姿をくらませた本当の作者はどのような人物で、現在どうなっているのか……。

そんな感じで第一部は進んでいく。

こちらの小説、ミステリーであり同時にポリティカルフィクションと呼ばれるジャンルでもあるようで、現実世界の延長線上……現実にも関わる社会的な事柄や政治的なあれこれも物語が進んでいくのと同時に語られていく。

ちなみに筆者はポリティカルフィクションという言葉は知らなかった。勉強不足である。

なのでまぁ、お話の最中にも現実世界のネットニュースやらで語られそうな事柄がある程度出てきたりもする。
ストーリーに関しては物語が二転三転して、想像もつかない方向に突き進んでいくのが読んでいて実に面白い。

登場人物の台詞も映画的で、その掛け合いが読んでいて心地よい。

とはいえ、所謂ポリティカル的なお話になってくるとやや説明っぽい長台詞が増えてきてしまうが……。

特に一部の中盤からのミステリーパートは、様々な謎が現れ、そしてそれらが解決したと思ったらまた新たな謎が増えていく。

そのまま物語が第二部へと繋がっていくので、気になったまま最後まで読み進めてしまえるほど。

キャラクター

アオシマ

第一部の主人公。

若手の編集者で、自分が担当した作品がまさかの盗作であると告げられるちょっと可哀想な人。
様々な理由があって、その偽の作者の目的である本当の作者探しに奔走することになる。

我那覇

偽の作者。
物語は時折彼の視点でも語られる。

総評

評価点

作者さんの深い見識や思考を垣間見ることができるメッセージ性の強い小説。

作品としての魅力はそれだけではなく、特に一部に関してはミステリーとしても意外性があり、充分に楽しむことができる。

深まる謎に、意外過ぎる結末は読んでいて強く心を揺さぶられること間違いなし。

問題点

そういう作品である、そういうジャンルであるといわれればその通りなのだが、どうしても説明的な長台詞が目立つ。
特に二部からは謎を解くというよりは、講義を聞いているような印象が強くなりがち。

最終評価 57点(Web小説としては充分な良作)

ミステリーとしても深まる謎や意外性のある展開で楽しめ、ポリティカルフィクションとしてもそのテーマに対する深い考察に唸らされる良作小説。

物語を最後まで読むことで伝わるメッセージは、なかなかに考えさせられるものがある。

全体を通してかなりレベルの高い、多くの人にお勧めできる小説。

所要時間は凡そ1時間ほど。

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