Web小説発掘記 その273 Haphazard Fantasy ~エイルの不思議な冒険~ 作者 加藤大樹様
本編URL
https://kakuyomu.jp/works/16817330650090906289
前書き
この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的意見です。
評価の基準としては200円~700円前後の書籍を購入し、読んだものとして付けさせていただきます。そのため基本的には厳しめとなります。
※こちらは『少女の夢 ~どこへ行けばいい?~』までを読んでの感想、レビューとなります。
あらすじ
愛と勇気に育まれた少年、エイル・ノルデンは幸せな日々を過ごしていた。
ある日、十一歳の誕生日を迎えた彼は、父親と共に狩りに出かける。しかしその帰りに、エイルは不慮の事故に遭ってしまう。それが、少年の過酷な運命の幕開けだった――。
少年よ、理不尽に抗い続けろ。
ストーリーと見所
こちらは前回、一章をレビューさせていただいた作品の二章目。
そのときの記事はこちら↓
一人の少年を主人公とした、タイトルにある通り冒険がメインとなるファンタジー小説。
とはいってもこちら二章では主人公たる少年の出番はなく、一章での敵役であった二人の少女の物語となっている。
一章の冒頭から飛ばしてくれたいい意味でとんでもねぇ物語はちょっと大人しめになり、比較的落ち着いた展開が続いていく。
……かと思ったらいきなり女の子同士で絡み合ったりといい意味で予想を裏切ってくれて、実に退屈しない物語である。
落ち着いたとはいっても物語が平坦であるとかそういうわけではなく、秀逸な心理描写はそのままに一章で戦った謎の少女の背景が語られていく。
またその道中に起こる様々な出来事やちょっとした会話の断片からは、一章ではあまり明確にされなかった作品世界が徐々に輪郭を表してくるのも見所の一つ。
文章表現は一章と変わらず秀逸で、かなり読ませる文章をしている。
特に情景や風景描写などにその力は余すところなく発揮されており、その世界観の美しさやその中にほんのりと薫るそこはかとない不可思議さも伝わってくる。
彼女達の旅を通して人間と魔の者の関係やパワーバランス、世界を構成する魔法などの要素なども少しずつ明らかになっていき、これから展開されていくストーリーに強く期待を寄せることができる二章といっていいだろう。
今回の視点は魔の者と呼ばれる少女達であり、彼女達は人間に比べて強い力を持ってはいる。
なのだが、人間側の戦力もただやられるだけではなく一筋縄ではいかない感じになっており、その辺りも読んでいてハラハラというか、ワクワクできる要素の一つとなっている。
キャラクター
エルエッタ
二章の語り部。
一章では敵だった少女だが、彼女が何故あの洞窟にいたのか、そして主人公達との戦いを経て何処に向かっていくのかが描かれている。
作中では主に語り部として活躍しており、次々と起こる事件や相方に翻弄されるような形になっている。
そういった彼女のあれこれも知ることで、一章での彼女の立ち振る舞いにもまた違った意味を感じ取ることができるだろう。
シャミィ
一章のある場面で出てきた人物。
二章ではある意味メインキャラクターであり、ストーリーを引っ張っていくのは彼女の仕事。
とても強い。
総評
評価点
変わらずの読ませる文章力。
そして一章よりは落ち着いた雰囲気こそあるものの、やはりいい意味で急展開が巻き起こる。
物語全体としてとにかく読んでいて退屈しない上に、文章は読みやすく心理描写も秀逸なので、すぐに頭に入ってくるのも魅力。
世界観もかなり力を入れて作られており、主人公達の今後がどうなっていくのか気になる物語である。
問題点
世界観の開示や今後活躍するキャラクターについての情報など見所自体はあるのだが、やはり二章でいきなり主人公達不在の過去話となると、首を傾げざるを得ない部分ではある。
とはいえ二章だけ読んでも充分に面白いところではあるので、一概に悪いとはいえなく部分ではあるが……。
最終評価 55点(Web小説としては充分な良作)
二章で開示される世界観はとても魅力的。
様々な要素が今後主人公達とどう関わっていくのかなど、ストーリー全体にいい意味で謎が増えたことで今後読み進めていく楽しみが増していく秀逸な展開。
ストーリーの進行がやや遅いようにも思えるが、世界観を語るという意味では充分な出来といっていいだろう。
少なくとも一章を読んでその雰囲気に魅せられたのなら、明らかになっていく世界の輪郭を楽しみながら読み進めることができる。
所要時間は『少女の夢 ~どこへ行けばいい?~』までで凡そ1時間ほど。
極めて個人的な感想
女の子同士の唐突なイチャイチャは世界を救う。
魔の者と人間との価値観の違いや、人間側もただただやられるわけではなくかなり厄介な存在として書かれている辺りが読んでいて非常にワクワクポイント。
物語の方向性的には群像劇……?的なあれなのかなとも思ったり。
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