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嘉門雄三 & VICTOR WHEELS LIVE !

桑田佳祐
「あ、あいつはネ、俺の”いとこ”なんですヨ。ひとつヨロシクネ。」(1981年)

謎の覆面歌手「嘉門雄三」について桑田佳祐が語った一言である。

その ”いとこ”が結成していたグループで唯一音源化されているのがこの『 嘉門雄三 & VICTOR WHEELS LIVE ! 』なのだ。アルバムの詳細データは色々なサイトに出ているので各自で調べて下さいな。
驚かされるのが桑田佳祐の身内だけあって、声も歌い方も音楽の趣味もそっくりなのである。うりふたつ。ドッペルゲンガー。

桑田佳祐
「いやーまいったね!僕と同じビクターで声から、なんと顔までそっくりな男が出てきたよ。しかし、まだオリジナルはないみたいだけどいい音してるよ。GOOD!GOOD!」(1981年)

情報提供: tuesdaybreakheartさん

このライブアルバム、1曲を除く全てが洋楽のカバーなので、その原曲のプレイリストを作ってみました。それぞれの楽曲で様々なバージョンがある中、アレンジや歌いまわし方等、このライブの時点で嘉門雄三が影響を受けていたであろうバージョンで選曲しました。

1.Trying To Live My Life Without You (1981)
オリジナルはオーティス・クレイなんだけど、この1981年当時、桑田佳祐  嘉門雄三はボブ・シーガーがめちゃくちゃお気に入りだったから、この1981年ライブバージョン。間違いない。

嘉門雄三公式での日本語タイトルは「愛なき世界で」となっているが、これはオーティス・クレイ版の邦題。
ボブ・シーガー版の日本語タイトルは「暴走マイライフ」(すげえタイトル笑)。

余談になるが、日本では浅川マキが『あなたなし』でというタイトルで1976年に自作詞でカバー。これが歌詞の内容も踏襲していてなかなかにエモい。

2.Stay (1979)
オリジナルはモーリス・ウィリアムス&ザ・ゾディアックス。このアルバムでは1979年NYでの『NO NUKES CONCERTS』ブルース・スプリングスティーン&Eストリート・バンドの演奏にジャクソン・ブラウン、トム・ぺティ、ローズマリー・バトラーがゲスト参加したバージョン。聞けば分かる。これ多分、嘉門雄三はオリジナルバージョンでやるつもりがメンバー(ギターの斎藤誠あたり)がこっちのテイクに引っ張ってしまったと推測。

3.Reggae Man (1981)
作詞・作曲 嘉門雄三の唯一のオリジナル曲。ストリーミングにはないのでプレイリストからは割愛。YouTubeで聞いてね。さすが ”いとこ” だけあってユーコ・ハラがゲストヴォーカルで参加。考えてみれば、MCが小林克也氏で、バックメンバーも青学出身者で固めているあたり桑田佳祐のコネを相当に使っているだろう。

4.Say Good-Bye To Hollywood (1981)
ご存じ、1981年ライブアルバム『ソングズ・イン・ジ・アティック』バージョン。

5.Hearts (1981)
オリジナルレコードの通り

6.Slow Hand (1981)
オリジナルレコードの通り

7.The Weight
ザ・バンド1971年のライブ盤「Rock Of Ages」バージョン。

8.Blues Medley~Blues Power
ブルースメドレーは全てエリッククラプトンのライブ盤から。

【Worried Life Blues 】
Just One Night(1980)

【Rambling On My Mind 】
E.C. Was Here(1975)

【Have You Ever Loved A Woman 】
E.C. Was Here(1975)

【Blues Power】
Just One Night(1980)

9.Just Like a Woman
Bob Dylan at Budokan (1978)
これが一番悩ましいが武道館ライブからかなと。

10.Just Once(1981)
オリジナルレコードの通り

11.Any Time At All(1964)
オリジナルレコードの通り

12.You May Be Right(1980)
オリジナルレコードの通り

13.Imagine(1971)
オリジナルレコードの通り

おまけ
これより以下は当日演奏されたがレコード未収録、もしくは81年3月に桑田佳祐が桑田バンドとしてエッグマンで演奏した曲。当時の雑誌から抜粋しました。

Hanky Panky / Tommy James & The Shondells

Jenny Jenny / Little Richard

Private Eyes / Daryl Hall & John Oates

Woman / John Lennon

Easy / Commodores

Rainy Day Women #12&35 / Bob Dylan

Knockin’ On Heaven’s Door / Bob Dylan

Like A Rolling Stone / Bob Dylan

Betty Lou's Gettin' Out Tonight / Bob Seger

1番最後のボブ・シーガー「ベティルゥは今晩お出まし」。これ、多分演ってないと思います。雑誌ライターが「Trying To Live My Life Without You 」の事を勘違いして書いたものと推測。

──当時のライブアルバム「嘉門雄三 & VICTOR WHEELS LIVE!」には小林克也さんのお名前もクレジットされています。
小林克也
「あのライブは会場が渋谷のeggmanで、司会みたいなことで入ってくれって言われてね。当日はブルースやR&Bのカバーをやるっていうからシャネルズみたいに靴墨で黒く塗って出たんですけど、取るのが大変で上着がダメになっちゃった記憶があります(笑)」(2018年)

そして、嘉門雄三の名前の由来については小林克也氏が語っている。

──当時、桑田さんは洋楽のカバーライブをやるときの変名として嘉門雄三を使っていました。

小林克也
あれも最初は俳優の河原崎長十郎をもじったような名前だったんですよ。

あるとき一緒に飲んでると「咲坂守って名前はどうやってできたんですか?」って話になって。

スネークマンショーでやってたコントのキャラクターに名前を付けるとき、「いかにも真面目なアナウンサーふうがいいよね」って話をしていたら伊武がすぐ「向坂」って言ったんです。当時NHKの向坂松彦さんという有名なアナウンサーの方がいらっしゃって。それを僕がちょっと派手に、花が咲く「咲坂」に変えて。この名字ならファーストネームは保守的な重みがあるものだろうってことで「守」にしたんです。

その流れで河原崎っていうのはちょっとイメージが違うんじゃないかということになった。

要するに向こうの音楽をカバーするんだったらスター的な名前がいいんじゃないかって。「みんなおいでよ!」って呼びかけるみたいな感じって言ったら、桑田くんが英語の「C'mon」から「嘉門」って付けたんです。(2018年)

もう、この時点で「桑田くん」という名前が・・。”いとこ”じゃないのかYO!
雄三は加山雄三から拝借でしょうな。順当に考えれば。

ここでも正体をバラすような文言が・・・

レコードジャケットはビクターのロゴ犬のニッパー君を模しているかとネット上で散見するが、もう一つ。桑田さんが昔、よく言ってた例え「(好きな)レコードは正座してステレオのスピーカーに頭を突っ込んで聞いていた」とのダブルミーニングではなかろうか。

その後の嘉門雄三の活動はまた別稿にて。

<2023.12.10記>


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