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復讐女装

昨晩のアウルでの情事は、私を余計に欲求不満にさせた。
まさかのタチ役を引き受け、お相手は御満足、私は不満足となってしまった。
友達もバック忘れて帰っちゃったし…

男性に挿れるなんて経験初めてだったけど、誘われてイかさずに帰したら女装子の名が廃る。
奉仕の心は、母心ってね…

でも、可愛いって言われちゃった…

まぁ、本気にしてるわけじゃないけどウットリしちゃうよね。

もぉ〜〜!
どうすんのよ!このムラムラは…

こうゆう時は、いにしえからの掲示板「カ◯ジョ」に頼ろう。

「誰かいい人募集かけてないかな〜?」

今日も休みだし、ちょっと位の距離なら遊びに出かけようかなと考えていた。

でも…
なんか良い人いないな〜

私の苦手なワードが飛び交っている。
「サクッと…」とか、
「口で…」とか、
「トイレで…」とか、
「複数で…」いやだよ、
「縛らせて…」アカンアカン!

なんで見ず知らずの奴に、いきなり奴隷扱いされなきゃならないのよ!笑
せめて、ホテルとか連れてってよ。
女装子には金使いたくないってのが本音?

ヤバい、またイライラしてきた。
でもまぁ、そうゆうのが好きな人もいるから仕方ないのか。

ウチの近所の公園スレッドを見ると、見覚えのあるネームと文体が目に入る。

「あっ、コイツ…」

思い出した。
あの日のこと…

私は、コイツに侮辱されたんだ。
そして、浮浪者に襲われ傷ついた。

あの時、私は決めたんだ。
必ず、「復讐」してやるって…

私は、コイツに誘い出す為のメッセージを送った。

………………………………………………………………………………

良い子は寝静まる、午後10時。

私は、あの公園トイレにいた。

「久しぶりだな…」

私は、あれから変われたのだろうか?
下着から前頭マスクになり、首下から初心者を経て、完パス出来るような女装子になれただろうか?

残念ながら、それはない…
女装界隈の人達が遊ぶような場所では、気兼ねなくマスク外して声出して話したり出来るが、一般の人が多くいる日常の場所では背を向けて隠れたくなる。

やっぱり、日が沈んだ夜じゃないと人の目が怖いし、一生懸命メイクした顔も明るい所で見られると不安になる。

だから、社交辞令でも褒められると嬉しいんだよ。
少しは自信がつくからね。

私は可愛い!
私はキレイ!
大丈夫!

今日は、この自信を力に変えてクソ男をブッ飛ばす!
やるぞーやるぞーやるぞー!


「やるぞ…」

私の背後から不審な声がした。
ハッと振り返ると、そこにいたのは…

「お前…女の格好した男だろ…」

ニタニタ笑いながら近づいてくる。
あの時、私を襲ったホームレスだ。

「どうせ、男のチ◯ポしゃぶりにノコノコ来たんだろ…相手してやるからこっち来いよ…」

ホームレスは私の腕を掴みトイレへと引きずり込もうとしてくる。

「やだっ…ちょっと!離して…」

見た目は小柄なくせに力は強く、抵抗する私をグイグイと引っ張ってゆく。

「このオカマが!お前みたいな変態野郎は黙って穴差し出せばいいんだよ!」

とんでもない事を口走るクソ乞食。

私は携帯したバックからローションを取り出し、男の手にぶち撒けた。

(ヌルっ)
「あっ…」
私を強く引っ張る手が滑り、男はそのまま後ろにひっくり返って後頭部を強打した。

「ヤバ…」
倒れた男の顔を覗き込むと、白目を剥いてピクピクと痙攣していた。

このままじゃ不味いと思い、男をトイレの個室まで運んで便座に座らせた。

「手にローション付いちゃったじゃない…」

私は犯行後の犯人が、人を殺めた手を洗うように洗面台で手を水で流した。


すると、
「おー、結構イイ感じじゃん」
という、上から目線の評価の声と共にアノ男が現れた。

ここで会ったが百年目…

「…ふふ。待ってたわよ」
私は踵を返し、男の方に向き直った。

「もっと気持ち悪いのが来るかと思ってたけど、今日は当たりだな」
大柄な男は私の容姿をジックリと眺め、舌舐めずりをしている。

「へぇ~、アンタの好みかい?」
私は色目を使い、男の胸元を指で撫でた。

「あぁ…お前みたいなのと変態プレーしてみたいぜ」
男は着ているシャツをめくり、毛むくじゃらな胸板を見せつけてくる。

「はぁ…いい身体してるじゃない…」
私は男の乳首を中指でチョンと弾いた。

「あぅっ…」
男は身体を少しビクつかせ、甘えた声でねだり始めた。

「ご…ご主人様、どうか僕を虐めて下さい…」


この男と会う前のメールのやりとりで、どんな事がしたいのか調査済みだった。
どうも、この男はM体質らしく女装子に調教をして欲しいと募集をかけていたのだった。

私は友達から預かっているバックからアイマスクを取り出し、男にかけるように指示を出した。

「これで目隠して手を後ろに回しな…」

男は私の言うままにアイマスクをし、両手を後ろ手でかまえる。

私はバックから手錠と首輪を取り出し、男に装着した。

「はぁっ…!ご主人様…一体なにをされるのでしょうか?」

私は勢い任せに、男の胸毛を引きちぎった。

「あ゛あ゛ァァァーー!」
男が悶え叫ぶ。

「誰が喋っていいって言った?奴隷は黙って言う事聞くんだよ」
私のS女装演技にも熱が入る。

「ご…ごめんなさい…」
男は大きな身体を丸め、しおらしく俯く。

私は首輪のリードを持ち、個室まで男を誘導した。

個室で白目剥いてるホームレスのズボンを剥がし、イチモツを丸出しにしておく。

「おい…エサだ。しゃぶれ…」
私は男の顔をホームレスの股間に導き、命令を下す。

「は…はい…」
男は目隠しし、両手を後ろ手に手錠かけられた状態でホームレスのオッサンのチ◯コを咥えだした。
私のチ◯コだと思って…

「一生懸命しゃぶって勃たせたらご褒美に公園散歩してやるからね…」
私はそう言ってトイレから離れた。

「あ…ありがとうございます(ペチャペチャ…)」
男は一心不乱にホームレスを咥えていた。

私が公園内を出ようとすると、たまたま警ら中のお巡りさんが通りかかる。

私は急いで駆け寄り、
「す、スミマセン!あの公園内のトイレで不審者が!」

「えっ!トイレに不審者がいるんですか!」
と、お巡りさん。

「はい…ちょっと何か怪しい事してる感じがして…爆弾テロとかだったら大変…」

「わかりました!スグに機動隊に応援要請かけて対処いたします!迅速な通報感謝します!」

お巡りさんは無線で応援要請をかけ、ニューナンブM60を片手にトイレへと突撃していった。

園内の樹木から楓の葉がヒラヒラと落ちてくる。

「もうすぐ冬か…」

トイレから男の悲鳴と、小銃の発砲音が聴こえてくる。
私は北風に変わる夜の孤独な寒さの中で、秋の終わりを感じていた。

………………………………………………………………………………

そして、時は流れ…

「本日より、25日まで30%OFFのセールやってまーす!クリスマスデザインのトートバックも無料で……」

年末商戦のブティックやらファストショップから聴こえる店員さんの声。

意識しないように努めても、世の中からキリストの生誕を祝うように仕向けられる。

キリシタンでもないのに、勝手に聖なる気分になって、性なる夜を過ごして…
 
アホらしい…

私はアレ以来、女装する事もイヤらしい事も何故かヤル気になれず、うだつの上がらぬ日々を過ごしていた。

なんか、もう全てがどうでもいい。
私をコケにした奴らは痛い目にあわせたが、なぜか気持ちが晴れない。

「結局、私がしたいことって何だったんだろう…」

自分自身に問いかけても答えはでない。
だって、答えを出すのは私自信じゃないんだもの。
私に必要なものを持っているのは、私を必要としてくれる人。

いつだってそうよ、誰かに必要とされたくて、誰かを求めている。
ただ、寂しいだけだものね…


「キレイ…」

色鮮やかなショーウィンドウは、女装から離れていた私の心を揺さぶった。

「私も、こんな服着てみたかったな…」

とても素敵な赤いドレス…
自分がこれを着ているシーンを想像してみる。

「ん〜…似合わんな…笑」

色々と諦めなければいけない年齢に差し掛かっている。
私は一人淋しく、家で鍋でも作ろうとショーウィンドウを離れようとした。

すると、少し後ろに立っていた女性と目が合い、そのまま私は動けなくなってしまった。

いつぶりだろう…?
すごく懐かしく感じる。
あの時よりも髪が伸びて、少し大人びた印象を受けた。

「…まー君?」

その女性は私の事を「俺」の相性で呼んだ。

「ひ、…久しぶり…げ、元気だった…?」

「うん、偶然だね…まー君は?」

「お、…俺は…まぁまぁ…」

極度に緊張してしまう俺の悪いクセが出た。
元彼女との奇跡的な再会に、どうしたら良いのかパニック状態の俺は、彼女を見つめることしか出来なかった。

「あの時は…ゴメンね…」

「こ…こ…、こちらこそ…」

「ねぇ…まー君。今、少しだけ時間ある?」

「えっ…えと…まぁ……少しなら…」

俺は元彼女の直子に誘われ、近くの珈琲店に入った。

ここからは掻い摘んで端的に話そう。
直子がコーヒーを飲みながら俺に話した事…

直子は俺と別れた後、飲み会で知り合った少し年上の男と付き合ったらしい。

でも、その男は既婚者で自分でも知らぬうちに不倫をしていた事が発覚した。

奥さんと別れるか、私と別れるかという話になり、口論の末に喧嘩別れした。

「どうせ、あのまま付き合っててもクリスマスは家族と過ごすって言ってたから、私はクリボッチだったけどね…笑」

卑屈に笑う直子が寂しそうに見えた。

「なぁ…俺もボッチなんだけど…」

思わず口について出てしまった。

「…誰か良い人いないの?」

「(女装して探せばいないこともないかも知れないけど…)いない。」

「そうか…」

「もし、良ければ24日は二人で飯でも行かないか?」

「え〜…ラーメン屋?笑」

「いや…ちゃんとオシャレなレストランとか予約するから。もちろん、俺の奢りで」

「そんな…無理しなくていいよ…」

「直子…俺、反省したんだ。君のこと、もっと大切にしてやれば良かったって…」

「まー君…」

「本当に…あの時はゴメン!」

「…もう、いいよ」

「直子、一緒に行ってくれるかな?」

「…私、スキー場のホテルのディナーがいいな〜」

「スキー場?」

「うん!昼間は二人でスノボーして、ホテルで温泉入って、夜はコース料理とか〜」

「お…おう…」

「で〜年越しはディズニーでカウントダウンとか超楽しそうじゃない?!」

「ほ〜…ほう…」

「それで〜初詣は晴れ着とか着て明治神宮あたりに………」

そうそう、これこれ…

付き合ってた時も、色々二人でやりたいことを次から次へと提案してきたな〜。
それを、俺が面倒くさがって無視してた。

こんなふうに、また出会えたのもチャンスだよな。
今一度、やり直してみるか。

俺もきっと一皮剥けて、少しは成長したはずだし、
ちょっとは女の子の気持ちがわかるようになった………?と、思う。

「ねぇ〜!聞いてる〜?」

「ちゃんと聞いてるよ…」

もう頼りない男と思われたくない。

「直子…」

「ん…?」

君を大切にしよう。

「好きだよ…」

「………どうも」

また、この先どうなるかは分からない。

「まー君…」

「なに…?」

それでも…

「また、一緒にいようね」

「うん」

俺達はいつでも…


あやまちを繰り返すんだ。。


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