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穏やかな海

年末年始と忙しなく過ごしてきた。

ちょっと心も身体も限界
癒やされたい…

こうゆう時は、自分の為の時間を作る必要がある。
土曜の仕事を頑張って終わらせる。

「間に合うかな…」

ポイントカードで営業時間を確認する。
この時間なら、まだ大丈夫そうだ。

前回行ったのは3か月前か…
結構伸びてきたし、今日はどうしようかな?

車で店舗に向かい、駐車場に車を停めガラス戸から入店する。

「こんにちは〜、いらっしゃいませ〜」

受付で名前を記入し、待ち時間を確認する。

「今日はどうされますか〜?」
「ん〜…どうしようかな。」
ただ癒やしの場所を求めてきただけなので、細かい事を決めておくのを忘れてた。

「割と伸びてこられたみたいですけど…」
「う〜ん。でも、まだ寒いから今日はヘアカラーだけにしておきます。良いですか?」
「はい!それでは、そちらにお掛けになってお待ち下さいね〜」

待機スペースで男が一人で腰掛けて待つ。
俺以外のお客さんは全員おばさん。
用意されている雑誌も「女性自身」、「女性セブン」、「レタスクラブ」、「サンキュ」とオッサン向けの読む物がない。
仕方なく「簡単!今夜のおかず」を手に取り、ペラペラめくる。

「海人さ〜ん、こちらへどうぞ〜」
「は〜い」
鏡台前のイスに移動する。

「お色はいつもと同じで良いですか〜?」
「はい、それでお願いします。」
「は〜い、ではこちらのクロスに手を通して頂いて〜…は〜い、ありがとうございま〜す。染みるとこあったら言って下さいね〜」

冷たい液体が頭皮にブラシで塗られていく。
気持ち良い訳では無いが、少しずつ気持ちが癒えていく。

「お仕事はどうですか〜?」
「お正月休みは何処か行かれましたか〜?」
「痛いとこありませんか〜?」
「本当にカットしなくて良いですか〜?」
俺の頭を弄りながら、綺麗なお姉さんが話しかけてくる。

まんざらでもない。

少しキツめの顔立ちだが、瞳が大きく耳元が綺麗で、気の抜けた喋り方をするこの担当のお姉さんが気に入って、この店に通い出したんだもの。

芸能人に例えると、健康的な小沢真珠かな。
いや、それは言い過ぎだな。

でも、可哀想に…
色々な薬剤も使うせいか手が酷く荒れてる。
シャンプーも最初から最後まで手で洗ってくれるものね。
ありがとうございます。
それが楽しみで来ちゃうんです。
今日は白髪染めだけで本当にゴメンナサイ。

「それじゃ暫くお待ち下さいね〜」
髪に色付けが浸透するまでラップを巻かれ、20分放置される。

お姉さんは隣に座って待ってた次のお客さんの相手をしてる。

その背面に入口のガラス戸が見える。
店名のロゴがカッティングテープで貼られているのだが、それを何気なくマジマジと見ていると…
あることに気づいてしまった。

お店の名前は「lana」
それを裏から見ると「anal」

ヤバい…
どうしよう
なんてことに気づいてしまったんだ
笑みが止まらない

そのガラス戸に背を向けたお姉さんのお尻が店名ロゴの下に映る。
少しタイトなスキニージーンズを履いている彼女のヒップラインが、鏡に反射され俺の目に飛び込んでくる。

あ〜〜〜〜〜〜……マズい。
これはマズい。

お姉さんの…ana…
小沢真珠のアナ…

一生懸命おばさんの頭を切っているお姉さんの顔を見つめる。
ふと、目が合いそうになったので慌てて目をそらす。

「落ち着け…ここには味方はいない。耐えるんだ、耐え抜いてやり過ごすんだ。」
こんな女だらけの店で男が一人で興奮するわけにいかない。
良からぬことを考えているのがバレようものなら、速攻逮捕。
お縄である。

とりあえず目の前の雑誌を手に取る
関東の綺麗な夜景を集めた写真集だ
気を散らす為に顔に近づけ凝視して見る
集中して夜景を見る、眺める
きらびやかで美しい風景に見惚れる
ちょっと横を見る
analとお尻が見える
見惚れる…

あぁ…来てよかった

「海人さ〜ん、それでは流しますのでコチラにどうぞ〜」
俺はラップと前掛けを外してもらって、ポ〜っとしながらシャンプー台へと向かった。

「それでは流しますね〜。熱かったら言って下さ〜い」
「は〜い…」
アナル姉さんに頭を流してもらいながら、あることを思いついた。

店の名前を、なんでlanaにしたのか聞いてみよう。
もしかしたら何か意図的な理由があるかも知れない。
ひょっとしたら、この姉さんも好きなのかも知れない。
うん、そうに違いない。

「あの〜、このお店の名前…lanaじゃないですか?」
「はい…?」
「何か意味とかあるんですか?」
「あ〜…」
俺は顔にガーゼをかけられている為、姉さんの表情は分からないが、返答までのあきらかな間が俺の期待を膨らませた。

「……なんだっけな。ハワイの方で静かな?いや、穏やかな海とかなんとかって意味らしいんだけど…たぶん、それ」

なんだよ、そのあやふやでぶっきらぼうな答え方は…
もっと、いやらしくエッチな感じで、
「うふ〜ん…意味とか分かんないけど逆から読んでみて〜ん♡」
とか言って欲しかったぜ。
それで、
「いや、俺じゃなくて君が読んでよ。俺の耳元で囁くように…」
とか言いたかったぜ。

あっ…
気がついたら、こんなバカバカしい話で2000文字超えてた。
こんな話、これ以上広がらないから、これで終わりにしよう。

なんか年明けから心痛める出来事が続いたからさ…
少しでも「くだらねー」って思って笑えることをね。

今年も宜しくお願いします。

analは地球を救う。。









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