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Silent Night

タバコが切れてコンビニに買いに行く。

「いらっしゃいませ〜」
そう言ってくれた若い店員さん。

世の中が聖なる夜を謳っている最中に、バイトに従事する彼。

頭には赤と白のサンタハットを被っている。
おそらく店の方針なのだろう、彼が率先して被りたいと申し出る訳が無い。
それほど不貞腐れた顔でレジを打っている。

彼からタバコを二箱購入して、コンビニを出る。
「ありがとうございました〜」
気の抜けたヤル気のない感謝の言葉に押し出され、車へと向かう。

「あっ…フライドチキン食べたいな」
同じ敷地内のスーパーに足を運ぶ。

閉店間近の店内は閑散としており、残った惣菜には割引シールが貼られている。

残念ながらチキンは売り切れていた、唐揚げも無かった。
仕方ないので主婦には不人気な鳥皮の焼き鳥が残っていたので、それを手に取る。

片付けをしている店員さん、レジで早く帰りたそうにしている店員さん。

いずれも若いバイトの子達で、表情の一端にクリスマスなのに私は何故こんなところで仕事してんだろ…という苛立ちのようなものが見て取れる。

そうだよな…
本当は恋人とか大切な人と、イルミネーションが綺麗なとこ行って、オシャレなお店で食事して、落ち着いた照明のムードのあるBARで軽く飲んで、人混みから少し離れたホテルなんかで一晩中抱き合ったりしたいよな。

家族のある人は、家でケンタッキーとか寿司とかクリスマスケーキでも皆で食べて、適当なテレビとか見て、暖かい部屋で笑っていたいよな。

でもさ、俺はそんな無理して幸せを満たそうとする偽クリスチャン達よりも、日常の生活のために人の休みたい時にこそ働いている君たちの方が素敵に見えるよ。

だって、その働いている人達がいないとクリスマスっていう非日常を演出することが出来ないじゃない。

奴らが楽しげに食べている食事も、飲んでいるお酒も、カットされているケーキも、その日にクリスマスを潰して働いている人達が作ったもの。

愛し合うために二人が入ったホテルの受付にも、夜通し働く人がいる。
きっと、ほとんどの部屋が埋まる中で色んな事を思い巡らしながら、歯を食いしばって働いていることだろう。

俺はそんな人が好きだよ。

もちろん、その日に働いているから偉いとかじゃなくてね。
例えば、一人で家でツイッター(X)を眺めて、クリスマスに楽しい想いをしている奴らを苦々しい思いで見ている人も好き。

だって、そのツイッターの中の人達はワザと優越感に浸るために、その画像や動画をアップしているんだもの。
自分はクリスマス充実してるよって…
嫉妬しちゃうよね。

でもさ、それでいいじゃない。
その人達はそれで、自分はこれで。

一時の幸せのために、無駄な労力なんて使う必要はないよ。

俺達は、ただ時が過ぎるのを待とう。

誰のもとにもサンタは来ない。

あるのは、たった少しの優越感。

どうか、そんなまやかしに振り回されずに穏やかな気持ちで静かな夜を…

今夜は単なる年末の寒い日本の夜

そうでしょ?。。




Мー1でも見ようか…

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