「小学生のときさ、ドッチボールやったじゃん？　あれ、何番目に当たるとか決めてた？」

「は？　どういう意味？」

「だから、何番目に当たるか。最後まで当たらないようにボール避けてた？」

「当たるときは当たるけど、当たらないようにするだろ普通」

「最後の1人になっても？」

「そりゃそうだろ」

「すごいね」


この質問にピンとくる人は、私が言ってることの意味が分かるし、意味が分からない人は、何事にも全力で取り組んだのだろうと思います。

段取りをしたか。
授業の時間や、周りの空気、自分のクラスでの立ち位置をふまえて、どう演じるか。

ドッチボールなんて全力でやらない。
あれは演技力を試されるスポーツだと思ってます。
何番目に当たるか、どう当たるか、最初から決めてる。

最後まで避けて避けて避けまくってたら永遠に終わらない。
最後の1人がボールに当たるとき、

「あ、この子いまわざと当たりに行ったな」
って分かる。

避けてるうちに気付くから。自分が当たらないと永遠に終わらないし、周りも飽きてくることに。

最後の1人になると、その演技力の無さがバレてしまうので、なるべく全体の半分くらいになったときに、わざと当たりに行く。

早くに当たりすぎても、使えない奴って思われるし、当たり方も重要で、男子が投げたボールは痛いので、女子が投げたボールを選ぶ。

背中に当たるとダサいから、ボールを受け止めるために手を出したけど、失敗して弾かれてしまった風を演じる。

そうすれば、「わたしはちゃんとやる気がありますよ」ということが伝わるから。


小学生のころからこんな段取りばかり考えてる奴が、わたしという大人になりました。


何年もずっとBAND-MAIDのライブに行ってたので、ライブでの立ち振る舞いはもう慣れました。


いつかのライブ。400番そこそこ。
入場したときは5列目くらいだった。

中央から少し左。そして、なるべく体の大きな男性の後ろに位置取る。
ライブ開始と同時にいつも圧縮があるので、ここにつくと、「中央から少し左」から「まあまあ左」に移動して、いつもベースのMISA前に行ける。

最前には、初めてのライブで何も知らなそうな女性が1人いた。
番号が良かったのか、ウキウキしながら柵に手をかけ、隣の男性とおしゃべり。
ヒラヒラとしたロングスカートに太めのヒール。

大丈夫かな。

チャンチャッチャ〜チャンチャララ〜♪

今はなくなった、BAND-MAIDお決まりの登場ソングが流れた。

「くるか」

ドドドドドっと背中を押される。
足で踏ん張って止まれるレベルではないので、波に乗る。押し流される。
前の大きな男性の背中に手をつく。

そのまましがみつくように、前へ前へ前へ。どんどん押される。胸が潰される。

大柄な男性は、横に弾き飛ばされない。どんどんどんどん前へ行く。結んでる髪の毛が後ろに引っ張られて痛い。何本が抜けた。

男性の背中ぴったりくっついて、もっともっと前へ前へ。
足がもつれ、転びそうになるけど、圧縮してるので転ばない。
倒れ込むように男性の背中に手をつき、前へ前へ前へ。

圧縮が止まる。私は2列目だった。大柄男性は私の横にいた。

最前にいた女性はいなくなっていた。

「どこに行った？」

と、後ろを見ると、5、6列目くらいの壁際に押しやられていた。

これが、BAND-MAIDのライブ。

「今日はうまく行った」
そう思う。

当時、モッシュやサーフはあったけど、うまく立ち回れば大丈夫。
危険が及ばない位置にいれば、人の上を流れていく人を見るのは楽しかった。

髪を結び、アクセサリーはつけない。ヒールなんて危険すぎる。厚みのある靴で少し盛る。色気のないバンドTシャツにジーパン。

今は女性限定エリアがあるので、女性でも安心です。

段取りと立ち回り。

あれはあれで、楽しかったなぁと思います。
大柄な男性には大変お世話になりました。

女性ファンがもっと増えるといいなと思います。