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「マッチングアプリって、いい噂全然聞かないですけど、大丈夫なんですか?」

「いや、でもマッチングアプリやってない人なんて今時いないじゃないですか。それに、マッチングアプリをやってたから今の彼女と出会えたんです。そう考えるようにしてます」

なるほど。なかなかプラスの発想ができる人だなぁと思いながら聞く。

「詐欺とか多そうで怖いイメージですね。最近はホストもマッチングアプリやってるんですよ」

「ホスト? あ、ホストめっちゃ嫌いでしたよね。一時期、水商売系の本たくさん読んでませんでしたっけ?」

「あー……、よく覚えてますねー。いや、知り合いの音楽家やってて、何も知らずに否定するのはよくないって思ったので、片っ端から本読んで調べたんですよ」

「で、調べた上で、嫌いと」

「そうです。知り尽くした上で、「嫌い」という結論が出たのでもうどうしようもないです。なんか最近はマッチングアプリで女の子を引っ掛けるそうです。30代の結婚したい女性がターゲットじゃないですかね。女の扱いに慣れてますからね奴等。仲良くなったところで、店に連れて行って金使わせるんです。結婚詐欺みたいなもんです。人間のクズがやることですよ」

「あー、顔の良い男はめっちゃ人気あるんですよ」

「ホストだから、顔だけは良いわけじゃないですか。女の扱いにも慣れてて、ゲーム感覚ですよ。店に来させられたらラッキーみたいな感じで。ほんとクズだなぁって」

「その知り合いってのもやってるんですか?」

「たぶんやってますね。10年くらいホストやってるんで。犯罪の一つや二つどころじゃなくやってますね」

「やばいっすね。あれ、でもライブは行くんですよね」

「ライブは行きますよ。純粋に見たいので。それは別って切り替えられるのでわたし」

「ホスト辞めないんですかね。音楽一本じゃ厳しいのかな」

「辞めなくていいと思ってます」

「え」

「ホストやってる人に「ホスト辞めてほしい」なんて全く思わないです。逆です。一生ホストやっててほしいです。30代後半で癌になって、40歳で死んでほしい。そうすれば一生ホストのまま死ねますし。そいつらも長生きなんて望んでいないでしょうし」

「あ、そっちですか」

「はい。たくさん悪さして、たくさんの女性を苦しめて、一生分のお金を稼いだ人って、普通の人の半分くらいしか生きられないものだと思うんですよね。だから、くれぐれも昼職を目指したり、音楽で生計を立てようなんて考えにならないでほしいと思います。一生ホストして、歌舞伎町から一歩も出ないで、なるべく被害に遭う女性が少ないように、ホストのまま早死にすることを祈ってます」

一つのネタを、盛りに盛って書く。

「だからわたし、差し入れはタバコか酒にするんです。「早く死にますように」って渡してるのに、「俺の好きなもの分かってるわ」って感じで喜んで受け取るんですよ。めっちゃ笑えません? ほんとに好きだったらタバコなんて差し入れしませんよ。めっちゃうけるなー。あ、でも本人たちも早く死にたがってるから別に良いのか!! あっはっは」

どす黒く、どす黒く書く。

サイコパス? 変わり者? 変人?
小説は自由だ。何にでもなれるし、汚いものを汚いものとして書ける。

「目にナイフを刺した」だと、アイタタタって感じだけど、

「目に刺さったナイフをぐるりと回した」だと、あ、死ぬわ。ってなる。

「目に突き刺したナイフをぐるりと回すと、彼女は絶叫と共に膝から崩れ落ち、目からするりと抜けたナイフからは赤い塊が滴って、床にボトリと落ちた」
だと、殺害現場だ。

今日は、誰になろうかな。

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