バレンシアガの量り売り
笑った?
スクランブル交差点の信号が青になると同時に、一斉にスマホを掲げる外国人。
こんなに大勢の日本人がいっぺんに渡る姿が、珍しくて面白いのだろう。
外国人がスマホで動画を撮ってる前を、いつもより顎をあげ、モデル歩きで歩く。
わたしにスマホが向けられた瞬間に、髪をわざとらしくかき上げる。
その右手はピースして。
あとで動画を見返して、
「ワォ! この日本人、ピースしてるぜ! ハッハッハッ!」
と笑う外国人を想像して、渡りきる頃にはわたしは思いっきり笑ってる。
前にいるスーツケースに座ったまま親に引きずられる中国人の子供を見ながら、「今わたしはなぜ中国人だと決めつけたのだろう」と考える。
もしかしたら日本人かもしれないじゃないか。
早歩きでその親子を追い越す。
追い越すときに聞こえてきたのは日本語ではなかった。
振り返る。
やっぱり中国人だった。
いや、中国語なんてニーハオくらいしか知らないから、「素行の悪い日本語を喋らないたぶん中国人の親子」と命名して笑う。
PARCO前の坂をのぼり、ふと左手のショーウィンドウを見るとドラムが飾られてた。
楽器屋かな? と思って中に目をやるとサングラスがたくさんあった。サングラス屋だった。
ショーウィンドウのドラムの隣にはバイクが飾られていた。
いやいや、バンドマンとバイクマンはサングラスをかけるって発想は短絡的やろ! とツッコミをいれながら、
そういえばレッスンに来てたギターの先生が、一時期スタジオの中でも常にサングラスだったことを思い出す。
ちょうどコロナの時期で、マスクにサングラスという強盗帰りの格好でよくもまぁわたしのレッスンをやってたものだ。
思い出し笑いが止まらない。
煉瓦造りのビルの壁に、名探偵コナンの映画の広告がたくさんプロジェクトマッピングされてて、
「えええ!? このプロジェクトマッピングすごくない? これ煉瓦なのに! どこから映写してんの!?」
と思ったら、ただ壁にポスターがたくさん貼ってあるだけだった。
時代がわたしの発想力に追いついてない。
なぜプロジェクトマッピングだと思ったのかは、最近行くライブの影響だと思う。
ときどき、笑いながら街を歩いている人がいる。
頭のおかしい人なのかなって、みんな避ける。
けど、わたしはその人を見て、「わたしと一緒だ」と、親近感を覚える。
いつ行っても渋谷は面白い。
こんなに面白い街なのに、なんでみんな仏頂面で歩いているのだろう。
日常の一コマで笑う。
いつまでも、子どもの心を忘れたくない。
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