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過去の話




母を蹴る父。

母の悲鳴。

テレビは、ついてたっけ?

包丁を持ちながら、「殺される」と。

長男に助けを求める母。

「おい!やめろよ!なにやってんだよ!」

泣きながら叫ぶ、中学生の長男。

いつも穏やかな兄が、あんなに大きい声を出すなんて、、。

と、思った気がする。


次男(兄)はどこだ?弟はどこにいた?

断片的に覚えてる記憶の中で、唯一忘れないのは、


「俺はいつか子供達に殺されるよ」

と、笑いながら言った父の言葉。


4人兄弟の3番目。
あれは、私が小学4年生のときだったはず。


ハサミを持って、母の寝室のドアの前でしゃがんでる私。

いつ、父が寝ている母を殴りにくるか。

そんなことしても意味ないのに。

そもそも、父も寝ているのだから。


母を守ってるつもりだったのかな。




最後に父に会ってから、もう14年かな。

殺さないし、死んでほしいとも思わないけど、
いつか死ぬだろうと思ってます。


いつか。


動物園に連れてってもらったはず。

兄と一緒に、釣りにも連れてってもらったはず。

ルアーっていう、魚の形をした針のついたものが、ケースの中にたくさんあったのを覚えてる。

あれは、父のものか、兄のものかは分からない。

寝る時は、よく父の布団で寝てた気がする。


「きみはいい子」という本を読んで、

なんか色々思い出しました。

虐待とは違うけど、
きちんと愛されてたはずの記憶は、悪い記憶に上書きされる。

20年以上前の記憶なのに、ついこの間のような気がします。


私と同い年くらいの人が、

両親の話をするのを聞くと、

上手く言えないけど、すごいなと思います。

両親そろってるんだ。すごいなと。



私が生まれた時に、母と父は揃って喜んだのかなと、ふと思いました。



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