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待つ女

よく喧嘩なんてできますね。

あなたは彼に嫌われるのが怖くないのですか?

よく文句を言えますね。

あなたは彼を失うのが怖くないのですか?

あなたはわかっていない。彼と喧嘩をすることが、彼に文句を言うことが、どれだけ危険なことなのかを。

そう、あなたと彼の関係が崩れるのを私はじっと待っているんですよ。

2年間、ずっと近くで待っています。友人の顔をして、相談相手の顔をして、私はひっそりあなたの近くで様子を伺っているんです。

あぁ、うらやましいですね。彼と言い合いできるなんて。それだけあなたは彼から愛されている自信がおありなんでしょう。

でも、知りませんよ。

ほんの一瞬の隙に私が彼を奪いますから。

うっかりあなたが彼から目を離した隙に、私がさっと奪います。

私は彼だけを見て生きています。そのチャンスをじっと狙っています。

あなたの恋の悩みを聞きながら、優しく励ましながら、もう2年です。

でもそろそろ私は踏み込もうと思います。私があなたをけしかけます。

「やっぱり、今回はもっと怒ってもいいと思うよ。ひどいよね、彼」

ほら、あと少しです。もっと彼を傷つけてください。

さぁ、私が傷心の彼を慰めますからね。

487文字

#短編小説 #超短編小説 #危険 #傷

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