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イブは。

12月に入ると街中がキラキラし始める。クリスマスソングもあちこちから流れてきて、つい心の中でメロディーを歌ってしまう。足取りもちょっとリズミカルになっているかも。

紫陽花の季節に突然秋山から電話がかかってきて以来、彼からの連絡はまったくなくて、私はというと一度だけ、スマホの画面に秋山の名前を表示させて指を近づけて、でもそっと離した。

イルミネーションの輝く大通りを歩いていると、冷たい風が強く吹いた。寒くてマフラーを口元まで引っ張り上げる。外気に触れて白くなるはずだった吐息はマフラーの中で湿気を帯びた。

家に帰って真っ暗な部屋に電気をつけたら、リビングに飾ったこじんまりしたクリスマスツリーがふわっと現れる。可愛くて、ちょっと気持ちがあったかくなる。クリスマスは優しい行事だな。そんなことを思った瞬間、スマホの着信音が鳴った。

秋山・・・

「川瀬?」
「うん、秋山?」
「うん、そう。今大丈夫か?」
「うん、大丈夫。家に帰ったとこ」

マフラーを外しながら秋山に答える。スマホから聞こえる秋山の声がひとりきりの部屋に漂う。

「プリンさ」
「え、うん?」
「プリン食べたんだよ。さっき」
「あ、うん。えっと、どんなやつ?」
「コンビニのだけどな、川瀬のこと思い出して、買いたくなった」
「そうなんだ。うんうん。おいしかった?」
「まあな、甘かった」
「そりゃ甘いよ」
「そうだよな、甘い」

ほんの少しの沈黙のあと、秋山がゆっくりとこう言った。

「川瀬のこと、よく思い出してるよ」

秋山の電話の向こうで音楽が聞こえる。なつかしいあのクリスマスソング。

きっと君は来ない。ひとりきりのクリスマスイブ。

秋山が会いに来てくれたらいいな。


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二人のその後はこちらです。




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