また、あまい。
「あのさ」
「うん」
「なんかさぁ」
「うん、なに?」
「夫から離婚届渡されたんだ」
「あー」
あー、って言うんだ。翔らしい。
「どう思う?」
「んー、君は離婚したいの?」
「したいこともないけど、したくないこともない」
「わかりにくいね」
わかりにくいね。私自身もわからない。
「君が離婚したら結婚しようって言ってたっけ?」
「まー、そうだったよね。離婚してから考えようってあなた言ってたね」
「あー」
まー、と言って、あー、なんだ、私たち。ゆるいな。
「でもさ」
「うん」
「夫とか妻の形って、ちょっと重くてしんどいんだよね?」
「うん、翔にはね、たぶん」
「ふぅん」
「うん」
「まぁ、君が離婚届出してから考えようか」
トーストにかけた蜂蜜が指に垂れた。
薄い黄色のとろりとした蜂蜜。
翔が笑いながら私の指を舐めた。
「あまいね」
私も舐めた。
あまいな。
でもやっぱり、おいしい。
365文字
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