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スキのおしゃべり

あなたのスキのページを私色に染めたくて、私は1日に何度も記事を書いて投稿する。長い文章から写真1枚まで、とにかく数をたくさん投稿する。そしてあなたのスキの履歴のページを開いてホッとする。私色でいっぱいだから。

あなたが私を見ていてくれるから、私は安心してnoteにいられるよ。ときどきしか更新しないあなたの記事に、たくさんの愛を込めてスキを届ける。今日はあの子よりも早くにスキできたよ。今日は一番乗りできたよ。そんなことを思いながらスキを押す。

ねぇ、気付いて。私の可愛い恋心に。

ねぇ、気付かないで。私の危ない束縛心に。

持って行き場のない愛をふわふわと浮かべ、ときどき両手で掬ってまあるく包み込む。親指と親指の間にほんの少しだけ隙間を開けそっと覗き込むと、小さなキラキラしたスキの欠片たちが囁きあっている。「私のほうが愛が多いよ」「ううん、私だよ」そんなふうなことを嬉しそうに話してる。そしてときどき、ふふって笑ってる。

この投稿にもスキが届く。

スキ一番乗りをちょうだいね。


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ある日、メールが届いた。それがあなたからだったから私はベッドを飛び降りて、スマホを握りしめ、震える手でメッセージを開いた。

もう僕にスキは送らないでね。

この一行目で私はナイフで刺されたかのような痛みを心臓に感じ、鼓動を止めた。でも続きを読むのをやめられなくて飛び込んでくる文字を目を見開いたまま読んだんだ。

これからはメールでやりとりしよう。

心臓が飛び跳ねた。私の恋心に気づいてくれてたんだ。驚いて、恥ずかしくて、嬉しくて、頬が紅潮する。バレリーナにでもなれそうに、つま先立ちで回り始める。

こんな私と個人的に繋がろうとするなんてね。どうなっても知らないからね。

そんなふうに思いながら行き場を見つけた愛をまたまあるく包み込み、そっと覗くと、スキの欠片たちがくすくすと笑ってる。「知ーらないよ、知らないよ」なんてことをちょっと弾む声で言い合ってるよ。



お気持ち嬉しいです。ありがとうございます✨