見出し画像

もし震災がなかったら

歴史上のifは御法度。
学者の間では当たり前のルールである。

しかし、私は考えずにはいられない。

もし震災がなかったら……
きっと大学院をやり直して続けていたと思う。通信制だったけど、働きながら何とかできていた。応用社会学は面白かったし、研究の面白さや命題の設定の奥深さを知ることができた。
しかし、一方で半分人生を諦めかけていたので、ひょっとするともっとろくでもない人生を歩んでいたのかもしれない。

震災がなかったら知らなくてもよい闇の部分を知らずに人生を終えていただろう。

東京電力の狡猾な地域分断工作活動。
放射線のごまかし。
そして放射能による様々な被害。

震災がなかったら人の所業の闇を見ることもなかっただろう。

しかし震災にあったことにより、本当の優しさにも触れた。連載中「震災クロニクル」でも書いているように、カプセルホテルでの出会いがそれである。これからもっと詳しく書くが、世の中そんなに悪い人ばかりじゃないことも改めて実感した。

震災前までは人生というコップの水の表層に浮かんでいた一葉舟のような生き方をしていた。震災後は深い海底まで探るような哨戒機の人生を歩んでいる。

人生とは不思議なものだ。悲劇をきっかけに世の中の奥深さを知れる。

福島県のどこかに住んでいます。 震災後、幾多の出会いと別れを繰り返しながら何とか生きています。最近、震災直後のことを文字として残しておこうと考えました。あのとき決して報道されることのなかった真実の出来事を。 愛読書《about a boy》