ハヤブサ使い pre-season


「猛禽類をフライトさせること」と「狩猟をすること」。
どちらが目的で、どちらが手段なのか、と尋ねられることがある。
ハヤブサを飼う前は、主にフライトさせることが目的で、狩猟は二番目の目的に過ぎなかった。
本来は、狩猟が目的で、フライトは手段に過ぎない。
けれど、いま私の中で両者は混在しており、分かちがたい。

猛禽類を飼いはじめる前、東日本大震災をきっかけに、いつか狩猟をしてみようと考えていた。
命の大切さを知る、とか、そんな抽象的な理由より、好物の肉が手に入らなくなったらどうしよう?と考えた末に浮かんだ解決策が狩猟だった。

狩猟より世間体のよい方法である牧畜も検討した。
けれど、家畜を肥育して肉を得るには、土地と穀物と水が要る。
一定期間世話をしなければならないのも面倒だ。
鶏を育てて〆る計画は、屠殺シーンにトラウマを持つ家族の猛反対により却下された。

釣りはどうだろう?家畜の世話をする費用と手間が省けるが、釣り糸を垂らしてじっと待つのが退屈な上に、川魚をおいしいと思ったことがない。海の魚はおいしいけれど、カジキ釣りの船に乗ったらひどい船酔いになった。素潜りをし、やすで魚を突く方法もあったが、漁業とのあつれきには巻き込まれたくない。

かくなる上は、山で肉を得るしかない。「狩猟」でインターネット検索をすると、鉄砲でイノシシ、シカを捕まえる方法が紹介されていた。銃を使う場合は、獲物を発見する効率を上げ、反撃されるリスクを下げるために、猟犬を連れて複数人で山に入る。この方法では、自分だけで山に入るのは難しそうだ。わなを仕掛ける方法なら、ひとりでもできるが、仕留めた獲物を持ち帰るのに苦労しそうだ。

危険度と体力的負担が比較的少ない狩猟方法はないものか。あった。鳥撃ちである。キジは食べたことがないが、アイガモはうまかった。野生のカモはもっとうまいに違いない。よし、この方法に決まりだ。しかし、猟銃を買うには警察で講習を受けなければならず、その上身辺調査をクリアしなければならない。射撃音を長年聴き続けると難聴になることもあるそうだ。やっぱり、狩猟は老後の楽しみにとっておこう。そう結論を下した私が、数年後に鉄砲よりやっかいな狩猟を始めるとは知る由もなかったのである。

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