マガジンのカバー画像

練習帳。

9
短編小説。情景描写が多いです。
運営しているクリエイター

2017年3月の記事一覧

「寝る」

(……眠い)

机にノートを広げ、肩肘をつきながらとろんとした目で黒板を眺める。先生が何か説明しているようだが、頭半分、いや三分の一で聞いている私には到底理解できない話だ。

 本日の一限は数学。普段なら例え前日何時に寝ようとも授業が始まると、だんだん頭がさえてくる。得意教科である数学の授業となればなおさらだ。なのに今日はまったくそうならなかった。

(おかしいな……昨日十一時には寝たのに)

 

もっとみる

「月曜日」

「やだなあ、もう明日は月曜日だよ」

「土日は早いよねー」

 なんて会話をする日曜日の午後5時。学校が嫌いなわけではないが、月曜日は正直気が重い。

「はああ……」

「でも私、月曜日好きな時もあるな」

「マジでっっ! 何時!?」

「祝日だよ。月曜日って祝日多いじゃん」

「ああ……」

「何その反応。でも月曜日が休みってだけで三連休になるし、なんか得した気分にならない?」

 

もっとみる

「ゲリラ豪雨」

 雨が降ってきた。数分後、雨は、窓から外が見えないほどの勢いを有した。バケツをひっくり返したような、と例えるのが正しいだろう。

「ゲリラ豪雨ってやつだね」

 図書館で一緒に勉強していた、友人Aは言った。

「あれは積乱雲が――」

「はいはい、いいから」

 Aはいいやつだが、理科オタクなのが玉に瑕である。そう、分野が「理科」なのだ。地学や科学、化学のみ、という訳ではなく。「文学少女」を地でい

もっとみる

「ロッカー」

「コインロッカーってこの駅になかったっけ」

午前六時、D駅構内。私たちは、飲み会の席で喧嘩して仲直りして、また喧嘩し始めるという、迷惑極まりない行為を実行していたところだった。それも昨日の昼からずっと、だ。流石に眠い。二人とも電車の中でも終始無言だった。この言葉で休戦しようという事だろうと悟り、言葉を返す。

「あるよ、北口になら。なんで」

ぶっきらぼうな口調になったのは否めない。

「いや、

もっとみる