天皇賞春 予想メモ


コース形態

天皇賞春専用コース。
淀の坂を2度越え、外回りを2周する広々とした戦いになる。
1周目3角までは2Fあり、ここで隊列は十分決められるが、淀の坂を登りながらとなるため、急かしてポジションを取るような争いにはなりにくく、主張の仕方やゲートの出方を見てゆったりと決まっていくのが通例。
その後は2度目のスタート地点(残6F)突入までは余計な坂もないし、大きな動きはなく、折り合いをつけて淡々と進めて我慢比べをしつつ、2度目の淀の坂から直線に向けての攻防が始まる。大抵の決まり手は坂からロングスパートを仕掛け、下り坂で一気に加速をつけながら直線へ向かって突っ切っていくパターンである。京都は2週目で傷みも少なく高速馬場での施行が多いため、下りで惰性を付ければトップスピードを維持しやすい。あとは脚の持久力次第で持たせられるか否かといったところである。
逃げ馬のタイプによってレース質は大きく変わり、直線ギリギリまで待って瞬発力勝負になることもあればロンスパ合戦のマクリ合いでタフな消耗戦になったり、そもそも道中から緩みが少なくミドルペースを続けてバテ合いになるマラソン勝負になったりとまちまち。各馬のタイプを考察したうえでそれに合う馬をしっかり考える必要がある。

TB想定

先週は開幕週ながらほぼフラットといっていいTBだった。
踏み固まり内有利になる可能性は否定しないし、土曜の雨の影響があるかも。
長距離戦なので、ロスを抑えるため内に集まって縦長の隊列になった場合はTBの影響は無視できる可能性はある。

ドゥレッツァ

菊花賞勝ち馬なだけに距離適性は問題なし。
その菊花賞は出入りのある展開のなか動じなかったのは評価するが、途中から動いて前につけても残せるほどのスローの前残りだったため、タスティエーラとソールオリエンスが乳繰り合って前を放置した結果であり、着差ほどこの馬が世代で抜けて強いわけではないことは何度か書いてきた。
金鯱賞は中距離では先行できないようで中団からの競馬。現役5強の一角プログノーシスに圧勝されてしまったが、他がG3までの馬というのもありそれにはきっちり先着しているし、そもそもプログノーシスが何故かTBも若干内なのにガラ空きだったロスのないインを使って捲り上げて壁になることもなく抜け出したのに対しこの馬はなるべくロスのないように運んでいたとはいえ多少外は回っていたので進路取りの差である。また進路を確保するまでの若干の時間のぶん踏み遅れたのもあるため、これも着差ほど負けているわけではない。
今回は現役5強の一角で、出ていれば間違いなくかなり人気になったであろうジャスティンパレスが不在で、粒揃いとはいえ一線級不在のメンバー。長距離はレースレベルが落ちるため戦いやすくなりそうだし、かつ先行馬も少なく菊花賞のように楽に先手、あるいは好位を取れればG1タイトルを再び獲得できる可能性はある。よって、人気ほど強いかは「?」も、実績能力自体は最上位評価。
1着候補。

テーオーロイヤル

長距離路線においては非常に充実ぶりを見せており、崩れなく走っている。
ステイヤーズSはスローで前放置が響いて追い上げきれなかっただけ。ダイヤモンドS、阪神大賞典は力を見せつけた。
ただし、阪神大賞典は圧勝には見えるが、内有利のTBとスロー展開ですんなり好位から競馬をしたのが恵まれただけで外を回った実績馬が不発したためとも見れるので、着差ほど力差があるとは思っていない。
また、ここ3戦全てスローからの瞬発力勝負だけであり、消耗戦やロンスパ戦になると一昨年天皇賞春のようにTBやポジションに恵まれても脚が上がる可能性は否定できない。(TB無視の立ち回りで外からしばかれまくったディープボンドにねじ伏せられて完敗している)また、この馬は中距離では重賞級の当落線上でアルゼンチン共和国杯では2度大敗しており、長距離しか稼げるレースがないので、かなり使い詰めているのも少々気になる。(悪いとは思わないが)
よって、人気ほど強いかは個人的にはちょっと疑問符も、今回は先行馬不在でこの馬は好位を取れるので、やはり無視はしにくい。
1着候補。

タスティエーラ

おそらく世代で最も強いのはこの馬と個人的には思っているが、皐月賞の内容が負けたとはいえとにかく優秀すぎた。消耗戦特化の強さを持ち、ダービーはそういう展開ではなかったが、他もそこまでスピードに長けている馬がいなかったからか、好位から抜け出して凌ぎ切る競馬で戴冠が叶った。
菊花賞はスタートこそ悪くなかったがソールオリエンス1頭に標的を絞ってマークしたがためにポジションが下がり、前を放置してしまった。そのためドゥレッツァにセーフティリードを作られ、猛追も間に合わなかった。力負けではない。
有馬記念は勝負どころでジャスティンパレスに外から弾かれる不利があったものの、スピードで劣りそれを抵抗して弾き返すだけの力がなかったという解釈もできるため、不利がなくても5着争いと考えている。
仕切り直して古馬初戦となった大阪杯は一線級不在・やや前残り展開ながらも好位から見せ場なく垂れて大敗と情けない内容だったが、皐月賞を考えてもこの馬が強いのは耐久力・底力勝負であり、スローの流れは世代だとなんとかできても本質的に得意としていない可能性が高いし、閉じ込められてストレスのかかる競馬ではあったので揉まれる競馬があまり良い馬ではなさそうではあった。にしても安定感があった馬が負けすぎなので、体調やメンタルが整っていなかった可能性は否定できない。
どこまで走れる状態かはわからないが、天皇賞春は長距離でロスを抑えるため縦長になりやすいので揉まれる確率は低いし、あとは自ら仕掛けて瞬発力勝負に持ち込まなければ巻き返す可能性はある。
確かに4歳牡馬は世代最強クラスで古馬別定G2レベルなので物足りないのは事実だが、一線級不在である以上は格好をつけたい。
1着候補。

サリエラ

小柄な牝馬ということもあり中距離重賞だとフィジカル面で劣り、加速力・トップスピードが足りず勝負どころで上がっていけず差しきれない競馬が続いていた。古馬重賞初挑戦の目黒記念からそれが顕著に現れており、イマイチな結果が続いていた。
長距離転向はレースレベルが下がるし、ロンスパ戦になればその弱点をカバーすることができるため、そこに活路を見出して挑んだダイヤモンドSは不得意な瞬発力勝負になってしまい、またルメール騎手も急かさず直線で仕掛けを少し待ったのもあり、テーオーロイヤルに先に動かれてエンジンがかかり切る前に外から併せられる戦いとなり根負けした。
そう見ると持ち味は発揮しきれていないと考えれば巻き返す余地はあるが、斤量差も考えると基本的には力負けと見るべきであり、今回さらに斤量が増え相手も揃うことも考えれば勝ち切るまでの評価は与えにくい。ただ、好位から競馬ができることはダイヤモンドSで示したので、内ラチ沿いに潜ってロスなく溜め、坂を生かした競馬ができれば、TBや展開次第では出番がある可能性はある。
2着以下候補。

ブローザホーン

日経新春杯は内有利TBのなか大外を回って差し切る非常に強い内容で、恵まれた内容の4歳牡馬の中堅どころを薙ぎ倒す完勝であった。
ただし、この馬もまた小柄なのもあり加速力・トップスピードには優れておらず、瞬発力勝負だと分が悪い。それを示したのが阪神大賞典であり、スローの中序盤で折り合いを欠いたり、途中で外を求めたために内有利TBを捨てる競馬はあったにしろ勝負どころでやや置いて行かれて遅れをとってしまった。
さらに3.4角で被されて馬群を抜け出す進路を作れず踏み遅れたことが致命的になり、チグハグな競馬になったので不発と見れる。悲観的に捉える必要はない。
スピード勝負では分が悪いので、早めにまくってロンスパに持ち込むなどの立ち回りをしたいところ。展開次第ではテーオーロイヤルとの逆転は可能。
1着候補。

ワープスピード

阪神大賞典の2着は名の通りワープ騎乗。
川田騎手が内がガラ空きになったのを見逃さずインで捲る競馬を敢行し、ポジションを上げたことでスローと内有利のTBを生かすことができた好騎乗によるものであり、他の実績馬の不発にも助けられた。
ダイヤモンドSの3着はテーオーロイヤル、サリエラに力負けであり、他の相手が弱すぎたから3着にきたというものである。
ステイヤーズSでもスローの前受けでテーオーロイヤルに差されているし、相手強化を考えると厳しい。脚はそこそこある馬なので、内有利TBで内で溜める競馬ができれば恵まれて好走ならギリギリ。
3着候補。

サヴォーナ

菊花賞の5着は早めにまくる競馬でスローの前残り展開を生かしたものであり、それで5着止まりであるため、神戸新聞杯2着を踏まえても世代の中堅くらいの評価が妥当。
日経新春杯の2着はたしかに速いペースを逃げ集団4頭で前受けして唯一残したことは事実だが、無理やり逃げたことでペースを守れなかったディアスティマはともかくほか2頭はそもそも弱いのでどこまで評価していいかはわからないし、大外から内に潜り込んで内有利TBに恵まれたのは事実である。阪神大賞典はテンが速くない弱点がモロに出て中団のまま何もできなかった。
ただスタミナはあるし、前に行ければしぶといので、先行馬がいない一発狙って今回逃げる可能性はある。
よって、地力は足りないが、単騎の場合は万が一があり得るので、枠次第では抑えを検討する余地はある。
3着候補。

チャックネイト

AJCCの勝ちは不良馬場のためどこまで評価していいか微妙。万能型ボッケリーニに競り勝ち、この馬もボッケリーニのように条件不問型という印象はある。
ただ、ボッケリーニはG1では通用しなかった馬で、8歳現在の彼と同等だとしたらイマイチ買いにくいし、ボッケリーニは京都大賞典だけ見れば先着はしたがTBに恵まれており、ガン無視で差してきたディープボンドに内容では劣る。
アルゼンチン共和国杯の3着はマイネルウィルトス、ヒートオンビートと互角の内容で、斤量差を考えると2頭を上に取るのが妥当。そもそも勝ったゼッフィーロが強かったが、彼もまあ国内では良くて別定重賞級以上の評価はあげられないし、ヒートオンビートも京都大賞典でディープボンドに完敗の内容。
よって、彼も中距離だといいところ重賞級であり、長距離にカテゴリ弱化なら恵まれればギリギリG1でも…?というところ。ただ、ハードルは高い。
3着候補。

ディープボンド

昨年も阪神大賞典で見せ場なく敗れてしまったが、スピードがイマイチな馬だけにドスローに付き合った結果ではある。そして天皇賞では出入りが激しい前潰れの消耗戦になったため、スタミナを生かした先行抜け出しで押し切る構えを見せ、ジャスティンパレスには差されたものの3年連続2着に好走した。やや上がりのかかる消耗戦ならスタミナ面で大きな優位性があり、一昨年の天皇賞春はTBポジションで恵まれたテーオーロイヤルを外を回し続けて差しており、彼とはこの時点では完勝と言っていい内容だった。
現在は実力的に陰りが見えてきているので逆転されている可能性は高いが、今年の阪神大賞典もスローペースに付き合ってキレ負けしただけなので、今年も消耗戦展開なら巻き返せる可能性はある。
近走はあまりやれていないが、好位から早仕掛けして先頭を捕まえに行く競馬ができればワンチャンスはありそうだし、今年がラストチャンスだとは思うので、一発狙うなら先行馬がいない構成なので海外のフォワ賞のように逃げるのも一手かもしれない。
2着以下候補。

シルヴァーソニック

昨年の天皇賞春で3着だが、前潰れの差し展開に恵まれたものでありジャスティンパレスやディープボンドには大きく劣る内容である。休養明けの阪神大賞典は休み明けのリハビリと思えば度外視できるものの、今回も相手は強いので、実績面を最大限に見ても展開に恵まれそうな時の抑えまでが妥当。
3着候補。

マテンロウレオ

日経賞は初めて逃げの手に出て大逃げのような形だったが、ペースとしては普通であれでも残せないとなると昨年のような力はもうない可能性が高い。
昨年の天皇賞春もかなりロスなく上手く乗って5着止まりなので、基本的には厳しい。
ただし、一回逃げた以上はこの馬が一発狙って逃げる可能性はある。TBや後ろが放置してくれる展開に恵まれればワンチャンはあるので、ギリギリ抑えても。
…まあノリさんだしね。何してくるかわからんけど、逃げで穴を出すのはよくやるし…天皇賞春も例があるから…
3着候補。

スマートファントム

連勝中だが流石に相手が弱い。超相手強化で通用するとは思い難い。
見送り。

ハピ

大阪一ハンブルクCを見ても芝OP以上という馬という感じではないので、今回は厳しい。
見送り。

ゴールドプリンセス

松籟Sは53kgにも恵まれたし相手も弱かった。
牝馬ながら3000mに対応したのは立派だが、スマートファントム同様超相手強化なので、斤量も増える以上厳しい。
見送り。

プリュムドール

阪神大賞典の4着は上手く追い込んではいたものの、内有利のTBを最大限生かしてロスなく回ってのものであるため、これ以上を求めるのは厳しい内容だった。牝馬の身ながら立派ではあるが、相手も強くなるので厳しい。
見送り。

メイショウブレゲ

阪神大賞典の8着は後ろすぎたにしろ離されており力負け。この馬を買うくらいならブローザホーンとかを買った方がいいので、基本は厳しい。
見送り。

スカーフェイス

最近はOPでも通用してないし、大阪一ハンブルクCも勝てないくらいでは足りない。
見送り。

総評

正直、ドゥレッツァもテーオーロイヤルも人気より強いとは思ってないので、混戦だと考えている。もしかしたら両方飛んで大波乱、というオチになる可能性は否定できない。
ただ逃げ馬不在でどちらも前には行けるので、結局この2頭で堅いというオチも見える。
どこまで割り切りを入れるか、誰かが仕掛けてG1らしい削り合いになると見るかそのままスローで行進していくのか、思慮を凝らして馬券を検討する必要がある。
荒れるとすればブローザホーンの巻き返し、マテンロウレオやサヴォーナが単騎で逃げて一人旅、ディープボンドが今年も頑張るなど、結構パターンはある。
超難解か、それとも…?

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