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第3回ファミカン匠(2023/11/27開催)


ファミラボ指導医のみによる事例検討会「ファミカン匠」を開催しました。今回は、日本のプライマリ・ケア現場における家族志向のケア分野のパイオニア岡山家庭医療学センター奈義・津山・湯郷ファミリークリニック 所長ー松下先生から事例を提示いただきました。

複雑な事例提示をスッキリとまとめていただいており、これ以上何か議論をすることはあるのかと思うほどの家族支援をされていましたが、さすが匠の皆様。90分ノンストップでさまざまな議論がなされておりました。

事例は20代の女性、夫・子どもと別居中、抑うつ状態で診療に関わるようになった事例です。

ディスカッション内容

・本人-夫の葛藤に、子どもや夫や本人の家族といった第三者まで巻き込んだ三角関係化という複雑な状況に陥っている。そのため、家族内の葛藤関係についての話題が中心となってしまい、子どもをどのように育てたいか等の話題がない。臨床家が積極的に、子どもをどのように育てていきたいのか等の話題にしていく必要がある。

・発達障害傾向のある夫とのコミュニケーションがうまく噛み合わず、衝突を繰り返し、結果、夫婦共に子育てや病気のことといった重要なところが話すことができず、回避的になっている。相手がどのように感じているか、考えているのか、臨床家が「翻訳」し仲介する必要がある。

・夫婦の合同面接が難しくても、本人に「旦那さんはあなたのことをどう思っていると思いますか」「旦那さんはお子さんにどのように育ってほしいと思いますか」など、円環的質問をすることによって、他人の評価の視点を入れたり、想像力を膨らませることを手助けすることができる。

・小さい頃から病気がちの母親の親役割を代行をしてきた本人。親役割代行の場合、その家族が結婚時に親が見捨てられ不安を感じ、親が世代間の境界を越えて過干渉となるケースがある(例:嫁姑関係)。今回は、母親が本人の結婚に対してよく思わず、その陰性感情を本人や夫にぶつけることが、本人と夫の関係に影響している可能性がある。

・母親も「何かあれば追い出してしまう」パターンをとるが、それは本人も行っており、母親から受け継がれた行動パターンが連鎖している可能性がある(破壊的権利付与)。そのことに、本人が気が付けるように支援する。

・義理の兄弟が子どもの母親の役割を代行するという形で、本人・夫と三角形化の一つにもなっている。誰が母親役割を担うのか、母親のことを悪く言いすぎないようにサポートしながら、家族全体の関係を整えていくことが大切。

カンファレンスを通しての振り返り

事例提示いただいた松下先生より「夫婦の葛藤や親権問題だけでなく、親子間の葛藤が背後にあることに気がつき、そこにもアプローチすることが大切だと感じました。ディスカッションの中で、できる限り自身で抱え込まないようにしていましたが、もっと他の行政支援者とも連携をとれると実感しました。」とのコメントをいただきました。

家族支援の”匠”の超高等技術を目の当たりにした会になりました。運営メンバー含めてファミラボ全体のレベルアップを図り、日本全体の家族支援のレベルをあげていきたいと思います。

今後もファミラボでは様々なセミナー、勉強会を企画していきます。こんな勉強会して欲しい等ありましたら、お気軽にお問い合わせください。

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事例提示・執筆:松下明(岡山家庭医療センター)宮本侑達(ひまわりクリニック)
編集:田中道徳(岡山家庭医療センター)


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