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【活動報告】家族アセスメント・カウンセリング・ワークショップ開催@JPCA秋季セミナー

日本プライマリケア連合学会(JPCA)では、毎年秋季生涯教育セミナーという全国セミナーを開催しており、今年は9月23-24日に開催されました。

秋季セミナーにて『日常診療に役立つ家族アセスメント・家族面談の基本』『高齢者診療で役立つ家族アセスメント・家族カウンセリングの技法』を行いました。


日常診療に役立つ家族アセスメント・家族面談の基本

JPCAメンタルヘルス委員会の皆様と一緒に家族志向のケアのワークショップを行いました。

家族志向のケアや家族療法はメンタルヘルス領域とも密接な関連があり、うつ、不安、摂食障害、機能性ディスペプシア、不登校等の経過に影響を与えるとされます。

また、同委員会が提唱する家庭医療専門研修におけるメンタルヘルス領域研修目標にて、以下の内容が含まれています。

•家族システム、家族ライフサイクル
•家族に対する心理教育
•バイオサイコソーシャルモデル

新・家庭医療専門研修におけるメンタルヘルス関連の研修目標・方略への提言ver 1.0より引用

当日は家族システム理論、家族アセスメント、家族面談の技法のレクチャーに加え、うつ病女性と家族の家族アセスメントを考えるグループディスカッションとシナリオロールプレイを行って、実践的に学んでいただきました。

シナリオロールプレイでは医師・患者・家族のセリフを事前準備し、読んでいただき追体験する形式にしましたが、参加者の方から「言葉の選び方が学べた」「家族の追体験できた」等の感想もあり、実践的に学んでいただけたのではないか、と思います。

参加者の方から精神疾患の家族とその支援はハードルが高いというコメントもありましたが、精神科医の先生から幅広い観点・継続性があるプライマリ・ケア医だからこそできる家族支援があるとの勇気づけられるコメントもいただきました。

高齢者診療で役立つ家族アセスメント・家族カウンセリングの技法

プライマリ・ケアの医療現場で最も関わることが多い高齢者の方とその家族を、家族アセスメントの観点から理解を深め、家族カウンセリングの観点から関わり方を考えていきました。

当日は家族システム理論、家族アセスメント、家族面談の技法のレクチャーに加え、認知症の方と家族の事例の家族アセスメントをグループディスカッションで深め、ロールプレイを行いました。

ロールプレイでは考えた家族アセスメントを元に、医師・患者・家族総勢5名の家族カンファレンスを自由に参加者の方に演じていただきましたが、皆様とても演技がお上手で白熱しておりました。

特に印象的だったのは認知症の患者さん役だった方が、途中で泣かれたことです。理由をお聞きすると「そんなつもりはなかったのに、家族に色々と言われて悔しくなってしまった」とのことでした。

患者さんの気持ちを追体験するのは、なかなか機会がなく、非常に良い経験でしたとコメントいただきました。面接技術を磨くだけでなく、患者さん・家族の疑似体験できる家族面談のロールプレイ学習の可能性を感じました。

参加者からの質問

当日はいくつかの質問をいただきました。回答含め紹介いたします。

Q)家族間の葛藤が強く、医療の重要な意思決定場面に家族が呼ばれず、家族代行サービス(レンタル家族)が来られるケースがあります。その家族にどのように向き合えば良いのでしょうか。

A)家族療法では、どんなに治療者が違和感を持っても、まずは家族の文化を尊重することが望ましいとされます(ジョイニング)。なので、家族の葛藤が深く本人が連絡を取りたくない場合にはその家族の関係性を尊重し、何かあったときには家族代行サービスに連絡するようにします。

ただ、一度も家族に連絡取らないことはトラブルになることもあるので、一度は連絡を取ることが望ましいです。その際には必ず本人に許可を取り、何について話すかまで伝えると安心されます。「いつも一度は家族に連絡をとっています」と一般化して伝えると納得される方も多いです。

また、関係性が構築されてきた時には家族のことを聞き、歴史を紐解くと良いでしょう。希望があれば仲介することも考えますが、距離を置きたい場合はそれを尊重します。

延命処置・病院搬送の有無・経管栄養の有無などの医療における重要な決定事項に関しては、葛藤が深く最終的に連絡を取ってほしくないという場合は「身寄りがいない者」に準じ、本人と医療福祉の専門職がその方にとって一番いい形を決めていくことが望まれます。

Q)時間があまり取れない一般外来の中で家族カウンセリングをどのように行えば良いでしょうか。また、家族カウンセリングは精神科に紹介するのも一つでしょうか。

A)家族カウンセリングは時間や技量によるので、どこまでの行うのか枠組みを設定すると良いでしょう。ただ、時間がかかるので時間をかけられる時間帯を作るなど工夫すると良いでしょう。

(精神科医師より)家族をより知っている家庭医の方が、精神科より家族へのアプローチは行いやすいでしょう。特に多方向の肩入れなどに慣れているため、関係性を作りやすくなります。精神科医でも必ずしも家族カウンセリングができるわけではないため、紹介先が対応可能か確認してもらう方がよいかと思います。

Q)意見が対立した家族カンファレンスにおいて、誘導してしまいがちでした。しかし、それで良いのか疑問があります。気を付けるポイントは何でしょうか。また、時間をどの程度かけて行うと良いでしょうか。

A)家族志向のプライマリ・ケアの教科書には家族カンファレンスの実施には30−40分かかるとの記載があります。実際にその程度の時間はかかりますし、そのくらいの余裕を持って臨むと良いでしょう。

気を付けるポイントとしては、医療者側として意見は持ちつつも、それが一方的にならないように進めると良いかと。特に、本人を置いてきぼりにしないように、丁寧に意見を聞くと良いと思います。

また、家族カンファレンスでは必ずしも結論を出そうとしなくても大丈夫です。家族療法では結論を出す以上に、対話を続けることに重きを置いています。対話を続ける中で自然に結論が出ていることも多いです。

なので、家族カンファレンスでは結論を出すのではなく、対話のプロセス自体に重きを置き、そのきっかけづくりくらいに思うと良いでしょう。

Q)円環的質問は実際にどのように行われているのでしょうか。

A)例えば「他の家族があなたをどう思っていると思いますか」と聞いてみることが円環的質問です。相手が自分をどう見ているのか気にしているが、実際には異なることも多いです。

お互いの認識のずれがすれ違いになるので、それを明らかにすることを目的にしています。

家族は言語的コミュニケーションをしなくても相手はわかるだろうと思い込んでいることが多いです。元気な時や平常時はそれでもやりとりできていることも多いですが、緊急時や病気の時は言語的コミュニケーションをしないとすれ違うことも多いです。

円環的質問は、お互いの認識のずれ言語的に明らかにすることでコミュニケーションを促進することができます。

参加者からの感想

参加者の皆様からお寄せいただいた感想を一部紹介させていただきます。

・グループワークで他の参加者の考えを聞けたのが良かった。
・グループワークに参加することで切実に家族について考えた。
・ロールプレイが実践的でよかった。
・家族と話す中でどういうポイントで聞いていくと良いのか具体的でわかりやすかった。
・家族カンファレンスを具体的にどのような点に注意する必要があるのかよく理解できた。
・台本なしの家族カンファを実践することが出来た。いい緊張感を持って行うことが出来た。
・ロールプレイは 自分自身の夫婦関係のプライベートの見直しになった。
・ロールプレイで女性患者を演じ、女性側の感情を追体験できたのがよかった。
・高齢の患者とその家族を呼ぶカンファレンスをする経験はあったが、ちゃんと学んだことがなかったので良い経験になった。
・精神科の先生から家庭医だからこそできる家族支援があると言われ、心強かった。

まとめ

全体としてロールプレイの評価が高かったのが印象的です。ロールプレイ学習はを通した面接技術の向上だけでなく、患者・家族の疑似体験ができ、その可能性を感じました。今後に繋げていきたいです。

レクチャーに関してはオンデマンド視聴もありますので、是非関心ある方はご視聴ください!(要申込)

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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執筆:宮本侑達(ひまわりクリニック)
編集:田中道徳(岡山家庭医療センター)


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