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若手医師向け家族図WS開催@JPCA冬セミ

家庭医療分野の学びを深めたい研修医・指導医が一同に集まって学ぶプライマリ・ケア連合学会(JPCA)主催『第18回 若手医師のための家庭医療学冬期セミナー』(通称『冬セミ』)が毎年2月に開催されています。

http://primary-care.or.jp/seminar_w/20230204/gree.html

ファミラボでも2018年より家族志向ケア関連のワークショップを行っています。

今年は2/4-5に開催され、「家族図道場~冬の陣~」というワークショップを開催致しました。

内容

家族図を読む方法としてさまざまな考え方がありますが、その中でも有名な『構造』『機能』『発達』という3つの軸に基づいたアセスメント方法についてレクチャーを行ったあと、あとは道場のように家族図を読んでみようという内容で行いました。

例えば

よくある終末期+認知症患者さんのあるある事例になります。
皆さんなら、この家族図をどう評価するでしょうか。
ぜひ考えてみてください。

冬セミではオンデマンド配信もされます。
興味のある方はぜひ御覧ください。

http://primary-care.or.jp/seminar_w/20230204/movie.html

勉強になったと答えていただいたのは、なんと参加者の100%でした。
初期研修医の先生にもご参加いただき、参加者の方からは僕ら運営側が想定していないような深い視点での回答が出たりと、参加者・運営ともに一緒に勉強することができた有意義な時間となりました。

参加者からの感想

参加者の皆様からお寄せいただいた感想を一部紹介いたします。

・家族図の書き方、家族ライフルサイクルの説明が丁寧で良かった。
・レクチャーで具体例の説明があってよかったです
・ディスカッションの論点が構造化されており、わかりやすかったです。
・家族図のアセスメント方法についてよくわからないところを具体例を使って学べたのが良かった。小グループでの質疑応答も良かった。
・時間内にブレイクアウトルームが2つもあり楽しくお話できました。
・個人ワークを挟んでのグループワークだったので,考えを整理する時間を持てた。研修医1年目での参加だったが,GWでベテランの先生方の家族の見方を知れてとても勉強になった。
・構造・機能・発達の3つにクリアカット分けそれぞれについて議論を進めていただいたのがとてもわかりやすかったです。グループワークでの講師の先生の議論の誘導の仕方も上手で参考にさせていただきます。

質疑応答

当日はたくさんの質問をいただきました。回答とともにご紹介いたします。

Q)サブシステムという言葉が難しかったです。イメージがわかるものはあるでしょうか。

A)サブシステムは家族より一つ小さな単位のグループ(システム)です。
家族内では、世代・性・関心によっていくつかのグループが形成され、代表的なものに夫婦サブシステム・親子サブシステム・同胞サブシステムがあります。サブグループが家族内でどのように機能しているかは重要です。 

Q)家族アセスメントについて様々なポイントがある中でどのようにレバレッジポイント(変化のための要点)を探していくのか。

A)レバレッジポイントを考えるとき、重要なポイントを探すことに固執しがちですが、システム全体を考えると「何か」や「誰か」一つでも変化すれば、波及効果で全体も変化しますので、変化しやすいポイントを見つけるとの方が大切です。変化しやすいポイントには2つあります。

1つ目は本人や家族の「今一番の関心事」です。関心事は、本人や家族が変えたいと思っており、変化を及ぼしやすいことが多いです。ですので、まずは関心事からアプローチしてみるのが良いかと思います。現在最も困っている症状や病気、問題から扱っていくと良いでしょう。

ただし、もし関心事が「夫婦関係」などの問題である場合、夫婦を呼んで夫婦関係を修復するようなアプローチは家族支援の専門家が行うレベルで難易度が非常に高くなります。その場合には「医学的な問題などわかりやすく扱いやすい問題×関心事」というというものを探すとやりやすくなります。

2つ目は「関心を持っている人」です。関心を持っている人の方が変化する動機があり、変化しやすいことが多いですので、そのようなメンバーを探すことが重要です。

Q)小児科研修中です。虐待やマルトリートメントなど緊急で介入する必要はないですが、家族関係で保護者がやりにくそうだ(例えば嫁姑問題など)…と感じることがあります。小児科の先生たちと、家族関係について協議してみたいと思うのですが、どういった切り出し方があるでしょうか?

A)医師に限らずチームで家族のことを協議するためには、そこに関心がないと難しいことが多いです。ただ、実際に困っている支援者は関心が高いことが多いため、本人や家族とのコミュニケーションに困っている支援者を探し、そこから協議していくと良いと思います。

もし切り出す場合には、家族アセスメントの中で"わかりやすいもの”を共有すると理解してもらい、興味を持ってもらいやすくなるためおすすめです。「嫁姑問題」などは理解してもらいやすいですよね。そこに「なぜ」嫁姑問題が起きているのか、というアセスメントを通して意味づけを共有することで、家族により意識を持ってもらいやすくなると思います。

Q)現在使っているカルテは家族図を残せないので診察毎にアップデートし皆で共有するのが難しく感じています。おすすめの方法ありますか。

A)パソコンでも作成できるジェノグラムは存在しますが、随時更新していくことが大変だったり、カルテに移すのが煩雑だったりと使いにくいことも多いです。たくさん家族情報を聞いたときなどは紙に書いて、それをカルテに取り込む方法がやりやすいかと思います。また「父:少し言葉がきつい」のような簡単な内容であれば、適宜カルテ内のメモを書けるところに保存しておくと情報を途切れなく残すことができると思います。

最後の最後までとても前向きに学んでもらえたと感じる良いワークショップになりました。ファミラボでは、今後も定期的にセミナーを開催する予定です。ご興味のある方はぜひご参加ください!

さいごまで読んでくださりありがとうございました!

ファミラボでは医療現場からできる家族支援について学びを深め、持続可能な個人・家族・地域の幸せに貢献できるよう、家族支援の啓発活動を続けていきます。

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文責:田中道徳(岡山家庭医療センター)
   宮本侑達(ひまわりクリニック)

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