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【連載小説】贋作②

〈僕〉
山崎ちゃんから指示された場所は都心から40分ほどの距離で、町工場が並ぶ一帯の古びた民家だった。


現地に到着しヘルメットを外してインターホンを押そうとした瞬間、4~5歳くらいの女の子が偶然中から出てきた。

無邪気な笑顔で

「おじさん だーれーーーっ?なんのよおーーー?」

と訊ねてきたので

「おじさんじゃなくてお兄さんね。 お兄さんはお仕事で来たんだけどお父さんかお母さんいるかな?」

「ななにぱぱもままもいないよ」

「ん? お父さんもお母さんも出かけてるんだよね?」

「ちがうよーーー ななにはぱぱもままもいないの」

どういう事かさっぱりだ。

このナナという少女の事は気になるが、とりあえず仕事をこなさないと。

「ナナちゃんごめんね。 中に誰か大人の人はいるかな?」

「いぬとくまがいるよーーーっ」

犬と熊???なんだこの子は。

「そっかそっか。 じゃあそのイヌさんかクマさんを呼んできてもらえる?」

「いいよーーーー ちょっとまっててーーー」

間もなく、白シャツの気弱そうな小男とスキンヘッドのタンクトップ姿の大男が目の前に現れ、それぞれ“戌井”と“久間田“と名乗った。

戌井「お待ちしておりました」

久間田「到着時間ぴったり!さすがプロっ 笑」

通常は本部から仕事を回される時に荷物の受け取りと配達先の住所をセットで指示もらうのだが、今回は急だったこともあり配達先については事前にこちらからも聞いていなかった。

「この度はご依頼ありがとうございます。本部から配達先住所をお聞きするのを忘れてしまったのですが、今お伺いしても大丈夫でしょうか?」

戌井「配達先ですか そういえば困りましたね」

久間田「佐々木さんだっけ あんたどこに行きたいっ?笑」

いやいやこいつらは何を言っているのだ。

「配達場所がお決まりでないとお仕事を承るのは難しいのですが…….」

戌井「くまさんどうします?」

久間田「じゃあ1週間日本全国当てのないバイクの旅に行ってみようか 笑」

こいつらイカれてる.....

変な事に巻き込まれる前に、適当に流して早く帰ろう.....

〈佐藤〉
ニコラスへの受け渡しの期日まで一週間しかない。

そもそも法に触れるビジネスであるため警察を呼ぶ事もできず、かといってニコラスに正直に事情を説明して作り直すにも製作時間は絶対的に足りない。

既に前金まで受け取っている状況で非常にまずい事態だ。

「防犯カメラはどうなってる?」

「社長がいらっしゃる前に確認しましたが、昨晩の録画データがだけがきれいに消えておりまして….」

「そんなわけはないだろ!!俺が確認する!!見せてみろ!!」

録画データから昨晩から朝にかけてのデータだけがごっそり消えている。

「くそっ!! くそっ!! くそっ!!」

「どうしたらいいんだぁーーーーーー!!このままだと俺たちだけでなく家族までやつらに消されるぞ!!」

「社長……社長……..落ち着いてください…..犯人の目星は既についております…..」

「誰だ?」

「朝一で事件に気づいた相馬が倉庫内でこんなものを見つけたそうです…….」

相馬が手に持っていた紙を取り上げると

“ゆかいななかまたち“

とだけA4用紙に書いてあった。

「あいつらか……..」


く・・・・・

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