海が学校も住宅も原発も
パジェロミニもランドセルも
家族のアルバムも全部飲み込んだのに
13年目の今日はガラス細工みたいに
精密でずっとずっと穏やかな波

まだ3万人が全国に避難してて
まだ仮設住宅が600戸あって
この日だけ被災地の様子をニュースで
やってて今日まで一年間被災地の事を
忘れて生きてた罪悪感を刺激する

昨日まで
あるお笑い芸人のスキャンダル一色だったのに今日だけ深刻そうな顔をしてさも寄り添って生きてきたような、ポーズだけが巧妙になって
ごめんなさいわたしもそれだ
明日になればまた忘れて自分のことだけ
考えて生き恥をさらす左腕に針をさして
管をつないで満たすのは
真っ赤っかの命だけ　
せめてせめて
生き残ったわたしにできることは
それしかない
死にたい楽になりたいっていいながら
今日も透析バスに乗り遅れないように
準備して
なんだこの自己矛盾
涙流して気持ちよくなって
罪悪感を相殺しようと必死になって
不様に姑息にそれでも
どんなことがあっても生きていたいって
思ってしまうそれ以上でも
それ以下でもない
どこまでいっても
わたしはわたしそのものだ　
今日も脈をうつ
一定のリズムで
そうだそうだ
あなたの胸のチクチクと涙も枯れた
バラバラとあの日の春の切れ端が
わたしの目ん玉で黄金比で混ざり合って
まるでなにもなかったみたいに
すうっと凪いだそんな木漏れ日