ぶきっちょが剥いたりんごの皮
それを首にぐるぐる巻きつけて
力いっぱい引っ張ってみる
足らないのは
狂気より強度
りんごの木から一斉に実が落ちる
引力が本当にあるなら
今すぐあのひとを引き合わせて
家族ができたらさみしくないって
誰だよそんな嘘ついたやつ
お迎えこないで砂場でずっと
穴掘ってた時の心許なさ
午前八時半ちょうどから始まる道路工事
重機の爪で掘削
それに共鳴しあって
年齢不詳の女が金切り声で
讃美歌を朗々とたしかあれは
アメージンググレイス
切羽詰まった祈りのうた
神との齟齬に拍車をかける
思い通りにならないなら
いらないよ愛とか希望とか
ぬか喜びすんのも疲れたなもう
右の目ん玉の
裏っ側にもう何年も飼ってる
岸部一徳似の男
それの
そそのかし
もうそろそろいいじゃないかよう
オマエ何十年そうやって生きてきたんだよう
首くくってしねよう
いますぐ足引っ張ってやっからよう
今度こそしくじるなよう
間延びした語尾がいやらしく私を急かす
面倒ごとから
目を背けてばかりいるなら
いらねーだろその目ん玉
スプーンでえぐれよほら
取っ手にアンパンマンついてるやつで
会いたいあのひとももうオマエには
会いたくないってさ
いい加減現実みろよ
じゃその両足　誰かにやれよほら
結局その言葉で
自分すら救えないくせして
文字を入力するその手で
下腹部ばっかいじってないで
いらねーだろ
それら全部を誰かにやれよ
無傷のくせにいつまでそんな痛がる
生きる事は汚れる事だよ　
自分の分の汚れまで人になんか押し付けるから
仲間見捨てたのはオマエじゃねえか
あのひとから逃げ出したのオマエじゃねえか
いいからそこに立って
歯を食いしばれ
グーパンいくぞ

坂本