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昔の栄光と老人ホーム

昔から言われている事ですが、現役を退いた人達だけの集まりに参加するときには、現役時代の栄光を語ってはいけないといいます。

例えば地域の集会所で健康体操の講習が開催されたとして、そこに集まってくるお年寄り達は体操をすることも目的のひとつではありますが、そこでのおしゃべりが楽しくて参加する方が多いと思います。

そんな時に、現役時代は一部上場企業の役員だった話しとかされても聞く方は楽しくありません。

それよりも地域の話題だとか健康関連の話題など現在の生活に役立つ話しなら皆さんそれなりに楽しく会話出来るものです。

ある有料老人ホームでこんな事がありました。

このホームは要介護の方と自立の方の両方が暮らしていて、料金も高めに設定されている高級ホームでした。

つまり現役時代にそこそこ稼いで資産を持っている人達の暮らすホームです。

私は厨房で仕事をしていたのですが、ここの厨房はオープンキッチンになっていて、自立の方はオープンキッチンのカウンターまで食事を取りに来られます。

その中に一人、厨房スタッフによく話しかけて下さる男性がいたのですが、この方現役時代に製造業に携わっていた方のようで、時々現役時代が顔を覗かせます。

あるときパートさんが、食事を並べるトレイをカウンターの幅一杯に置けるだけ3列くらいぎっしり並べていました。

朝食の時間だったのですが、施設の食事は時間も決まっていますしほぼ一時に多くの方がレストランに来られますので、一気に食事を提供出来る様になるべく沢山のトレイを準備しておくわけです。

その状況を見て、先の男性が急に「この並べ方は無駄が多い」と言い始めました。

男性が言うには、トレイをカウンターに並べてもどうせ端から受け取っていくわけだから、並べるのは一列にして順番にトレイをセットしておけばカウンターもすっきりするしパートさんも無駄な動きをする必要がなくなるという理屈です。

私はもっともな面もあるなと思って聞いていたのですが、そこから先がダメでした。

この男性、自分は現役時代に工場の無駄を無くす仕事をしていて、その観点から見てパートさんが準備する作業には無駄が多く改善点が目に付くと言います。

そこまでならまだ良かったのですが、後日厨房作業の無駄を無くすための「改善計画書」なるものを作成して持ってこられました。

ここまでされてしまうと厨房としても無視するわけにもいかず、中々困った状況に追い込まれてしまいました。

実はこの男性、同じホームの入居者の方にも現役時代の事を色々話すことが多かったようで、とても良い人で紳士なのですが、どうしても昔の栄光から抜け出すことが出来ていない人の様でした。

勿論、気持ちは分かりますし、その話しをしっかり聞いて上げることも大切かもしれませんが、それがあまりにも頻繁だとこちらも疲れてしまうというお話しでした。

(元記事は食べごろclub


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