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月の落とし子・かぐや(仮) 二話プロット 「かぐや」 (編集中です。でもひと段落です。)


夜。

大きな岩の上で横になっている糸目のお爺ちゃん。

お爺ちゃんは何を見たのか、急に目を見開いて、夜空を見上げる。

夜空に浮かぶ光。

なんと、おくるみに巻かれた白髪の赤ん坊が、光り輝きながら、舞い降りてきたのである。

ゆっくりと開かれる瞼。

瞼の奥からは、美しい青い瞳が覗いている。




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立派な二本の刀を腰に差し、眼帯をして、長い髪をたなびかせて歩く男。

(男の顔は見えない)

出っ歯の荷物持ちが男から一歩後ろを歩いている。

二人の女性が男とすれ違い、二人の女性は男の方を振り返りながら、きゃいきゃい盛り上がっている。

二本差しの男はとても端正な顔立ちをしている。

二本差しの男「やっと着いたな!  大内宿!」

荷物持ち「へい!まったくで、伊達殿」

二本差しの男の前には、幅広の道を挟んで、かやぶき屋根の宿屋や飯屋、茶屋が並んでいる。

大内宿は宿場町。

荷物持ちの腹が鳴る。

荷物持ち「す、すいやせん」

二本差し「無理もない。飯にしよう!…どこにしようか…」

二本差しは歩きながら、辺りを見回して飯屋を探す。

荷物持ち「伊達殿、となり屋っつう蕎麦屋なんていかかですかい?」

二本差し「なんだ、そんなに旨いのか?」

荷物持ち「いえ、味は可もなく不可もなくって感じなんですがね、そこにいるんですよ、面白い看板娘が!」

二本差し「冗談がうまいのか?」

荷物持ち「そうじゃありやせん。その娘を見たら、伊達殿は自分の目を疑うでしょうね。」

二本差し「…ほう、面白い。行ってみようじゃないか、となり屋、だったか?」

そば処・となり屋という看板が立てかけられているかやぶき屋根の店

荷物持ちが二本差しの為に店の扉を開ける。  

     がらららら!

  「いらっしゃーい。」

二本差しの耳に飛び込んでくる、少女の声。

二本差し「!?」

二本差しは声の主の少女の姿を見て、面食らってしまう。

二本差しの目に飛び込んできたのは、白い髪と青い目を持った少女だった。

黒い髪と黒い目が当たり前の世界でその少女の容姿は異質な存在感を放っている。

少女は抑揚のない声で言う。

少女「どうぞお好きな席へ。」

二本差しと荷物持ちは適当な席へ座る。

荷物持ち「んね?」

二本差しは白髪碧眼の少女から目が離せない。

二本差し「なんだ、あの娘は?…見た事がない…」

荷物持ち「諸国を渡り歩いたってここでしかお目にかかれやせんぜ。ここいらじゃあ有名な娘なんですわ。となり屋の客はあの娘を見るためにわざわざこの店を選んで、ついでにたいした味じゃないそばをすすってる様なもんです」

二本差しは荷物持ちに言われて、辺りを見回す。

店の周りの客達も、まるで珍獣でも見るかのように、少女に好奇の目を向けている事に気付く。

二本差しは自分の無礼で不躾な行動を恥じ、申し訳なさげに少女から視線を外す。

随員A「…不憫な・・・。」

陰りのある少女の表情。



少女「お待たせいたしました」

少女が二本差しと荷物持ちのそばを持ってくる。

少女「では、どうぞごゆっくり」

二本差し「うむ、ありがとう」

二本差しは紳士的な振る舞いでそばを受け取る。

そばをすする二本差しと荷物持ち。

二本差し「・・・全くもって、普通の味だな。」

荷物持ち「へい。」

二人がそばを食べていると、店の扉が荒々しく開けられる。

ガラララララ!!

店内に入ってきたのは、如何にも柄の悪そうな、刀を腰に差した三人の荒くれ者達。

少女は扉が開く音に反応して機械的に言う。

少女「いらっしゃいませー」

三人の荒くれ者はきょろきょろを見回しながら、ずかずかと無遠慮に店内に入っていく。

そして、店内にいる少女を見て言う。

荒くれ者「おーいたいた!まじでいたぜ!」

荒くれ者達は少女の方へ一直線に歩いていく。

荒くれ者の一人が荒々しく少女の頭を掴んで、自分の方を見上げさせる。

荒くれ者「白い髪と青い眼を持ったガキ!面白れぇ!!」

荒くれ者「見世物小屋でもこんなの見た事ないぜ!」

荒くれ者「噂には聞いていたが、目の前にしても信じられねぇな…本当に同じ人間か…?」

少女は屈辱と羞恥に顔をゆがませる。

周りの客達は、三人の荒くれ者の乱暴な振る舞いにオドオドしている。

そんな中、二本差しは冷静で、真剣な表情で荒くれ者達と少女を見据えている。

そんな視線を感じた荒くれ者の一人が、二本差しと荷物持ちの方へやってきて言う。

荒くれ者「おう、テメェら席を空けな。俺たちが使うからよぉ」

二本差しと荷物持ちはまだそばを食べている真っ最中

二本差しは箸を置いて、脇に置いていた刀を手に取って立ち上がる。

そして荒くれ者を一瞥する。

緊迫した空気の中で、周りの客や、荒くれ者たち、そして少女も二本差しの行動に注目している。

二本差しと相対している荒くれ者は、二本差しがいつ刀を抜いてもいい様に、自分の刀の柄に手を添えている。



二本差し「へい、ただいま!旦那ぁ!!」

二本差しは急に腰を折って、へらへらした顔と声で言う。

拍子抜けな様子にあっけにとられる荒くれ者達と客達と少女。

あっけにとられる周りの人達をおいてきぼりにする勢いで、二本差しはもう一方の刀、脇差を拾いあげて、荷物持ちに持たせていた荷物を持って言う。

二本差し「おい、早くしろ!」

荷物持ち「へい!お勘定、ここに置いときやす!」

荷物持ちは手早く二人分のそば代を財布から取り出して、机に置く。

二本差し「じゃ、ごゆっくり!」

二本差しと荷物持ちはあっという間に店から出ていく。

あっけにとられている人たちの耳に入ってくる、二人が扉を開けて、閉める音。

ガララララ!  ピシャン!

荒くれ者達、少女、店の客達  ポカーーン・・・

二本差しと相対していた荒くれ者は、二本差しのまさかの無抵抗と、その勢いに困惑しながら言う。

荒くれ者「あー、お、おぉい!三人分だ!そば、三人分を持ってこぉい!」

そこに残されている食べかけの、二人分のそば。

荒くれ者「と、その前に、これ、あれだ、どうにかしろぉ…!」




夕方。店じまい。

店内で、少女は脱いだ前掛けをたたきつけながら、そば処・月浦屋の女将に訴える。

少女「もう辞める!こんな仕事!!」

女将「ああ言い出すだろうと思ったよ!

   あんたにわかるかい!?父に突然、奇怪な髪と目をもった赤子を連れて来られた時の私の気持ちが!!

そんなのの面倒をみなくてはならなくなった私の苦労が!!

私が面倒を見てやったからこそ今のアンタがあるんだよ!

   アンタはその恩を返さなくちゃならない!!」

少女「・・・っ。」

養ってもらったという紛れもない事実、そこをつかれると、どうしても弱い少女。

女将はダメ押しとばかりにまくし立てる。

女将「金もくれてやってるんだ!文句を垂れずに働きな!」

女将はそういって、着物の袖からお金の入った巾着袋を少女に放り投げる。

押され気味になっていた少女の頭に浮かぶ昼間の三人の荒くれ者達。

三人の荒くれ者が店にいる間、少女は相手をさせられていた。

ああいう無礼な客は珍しくない。

少女はどんな形であれ、養ってもらった事に対する恩や、後ろめたさを押しのけて、投げつけられたお金の入った巾着袋を女将にぶん投げ返して言う。

少女「自分の食い扶持位、どうにでもなるわよ!もう辞める!もう来ない!!」

少女は女将に背を向けて荒々しく歩き出す。

少女が投げ返した巾着袋が顔に当たった女将は、顔を抑えながら少女の背中に言葉を投げつける。

女将「こらぁ!明日も働くんだよ!許さないよ!」




緑に囲まれた参道。参道の右側には鳥居がある。

参道の向こう側には大きな山があり、辺りは夕日に照らされている。

少女「もう行くもんか!もう行くもんか! もう行くもんかぁ!!」

少女はいら立ちを足にのせて、地面を踏みつけながら進む。


森の中に建つ、一軒の小さな家。そこが少女の家。

辺りに他の家はない。

少女は玄関を前にして何かを言いかけるも、何も言わず、戸を開ける。

小さな家なのに、やけに広く感じる。

他には誰もおらず、少女が一人で暮らしている様だ。

少女は、棚の上に置いてある一冊の本を手に取って、玄関とは反対側の戸を開ける。

部屋に差し込む夕日。

少女は、濡れ縁に座って、本を開く・・・




夜。

布団の左側によって横たわっている少女。

少女は目を開く。

少女「…ふー・・・」

どうにも寝付けない様だ。

少女は濡れ縁へとつながる戸を開ける。

夜空には満月が昇っている。

少女はじっと満月を見つめた後、わらじを履いて、家を出る。



木々に囲まれた道。そして上へと伸びている石段。

少女は大きな石の上で仰向けになって、夜空に浮かぶ満月を眺めている。

少女「・・・」

少女はゆっくりと目を閉じる。


ー思い出す記憶・・・


五歳頃の少女

少女は月浦屋の文字の入った前掛けを着せられ、配膳の仕事をさせられていた。

店の客達から、じろじろと見られ、嫌な思いをする少女。

そこへ血相をかえて飛び込んできたおじいさん。

おじいさんは女将を怒鳴りつけた後、少女の手を引いて、店から連れ出してくれた

おじいさんは少女を抱き上げ、歩く

おじいさんは少女を慰める様に、少女の頭を優しくなでる

少女は緊張の糸が解け、おじいさんの胸で泣き出してしまう


・・・


目を開ける少女。

少女は涙目になってしまっている。

少女「・・・お爺ちゃん・・・」



すると、突然、声をかけられる。

「こんばんは」

一人だと思い込んでいた少女はビックリして、岩から落っこちてしまう。

少女「えっ!わっ、痛ぁっ!」

そこは神社の境内。少女が寝ころんでいた大石も境内の内側にあるもの。

少女が恨めし気に声のした方向を見てみると、神社に、木の棒を持った少年が座っていた。

少年「あ、ごめん、大丈夫?」

少年は少女に駆け寄ろうとするのだが、足元のくぼみに躓いて転んでしまう。

少年「った!」

そんな少年を、少女は呆れながら言う。

少女「…大丈夫?」

少年「…痛い、けど大丈夫」

少女「…?何で目を閉じてなんかいるのよ」

少年「だって…開けても意味がないんだもん」

少年がまぶたを開く。

少女は少年の目を見て、違和感を抱く。

少女「・・・?」

神社に2人して腰掛けている。

少女「盲目?」

少年「そう。全く見えないんだ。物心ついた時にはもう、ね」

少女の中で、複雑な感情が入り混じる。

目が見えない事に対する同情心

今まで、他人の好奇の目にさらされ辟易していた中で自分の前に現れた、目が見えない者に対する興味と関心

今まで自分が向けられ、辟易していた好奇の目を、今まさに自分の目の前の少年に向けてしまっている事への負い目・・・

少女は少年から目を逸らす。


少女は何か話題を探そうと、無意識的に辺りをきょろきょろと見回す。そして気付く。

少女「・・・そんなあなたがこんな所で一人、何をやっているの?」

少年「・・・まぁ、こんな目だしね。いつかこんな日が来るかもとは、思ってたんだ。まぁ…段々と、だから…」

少女「・・・」

少年「・・・ね…」

少年が言いかけた所で、少女が被せる様に言う。

少女「じゃあ、うち、来る…?」

少年は少女の言葉にポカン、として言う。

少年「…え?」

少女「どうせ行く当てなんかないんでしょ?あなたをこのままほっぽって帰っても寝覚めが悪いわ。それとも、迎えの当てでもあるの?」

少年「いや、ないけど…でも」

少女「私の都合が悪いの!ゴチャゴチャ言っていないで来なさい!私の愚痴でも聞いてくれればそれでいいわ!それ位、出来るでしょ!」

少年は、何かを考える様に、前を向いて、俯いている。

少年「・・・」

少女「・・・ああ!もう!」

少女はじれったそうに、少年の前に出て、手を差し出す。

少女「私は今、あなたの目の前に手を出してる!」

少年「?」

少女「うちに来るなら私の手を取って!」

少年「・・・」

少女「どうするの!?はっきりしなさい!生きたいのか?このまま死にたいのか?どっち!?」

少年「!…、天寿、僕の名前、天寿っていうんだ」

少年は少女の手を握り、立ち上がる。


少女は満足した様に、笑って言う。

少女「私、かぐや!

   私の名前は、 月浦かぐや  」

名乗る白髪碧眼の少女、かぐや。







二話、終わり。















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