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      芸術的な日本語

         Japanese is a difficult but elegant language
     
      日本語は複雑すぎて難しいけど眩しいほど美し過ぎる

翻訳や通訳を生業にしているボクにとって複雑”という単語が相応しいのか分かりませんが、日本語を英語に翻訳すると難しいと痛感します。
つまり、日本語の単語、漢字中に含まれる意味合い、情緒、と奥行きが果てしなく続くようなものです。例を上げますと“宴(えん/うたげ)”これは日本人が理解する結婚披露宴“”花見“”月見の宴“まだあります。一見単純と思える漢字の宴は、実は奥が深いと感じます。

単純に英訳は wedding ceremony/Cherry blossom viewing/Moon viewingではあるのですが、宴には「楽しむ、味わう、愛でる」という意味があります。じゃないんです。漢字の持つ奥にはな意味が含まれていて、この雅な表現を英語の単語に翻訳することがメチャクチャ苦労します。Elegantが一般的に使われています。ボクは違うと思っています。

雅に代わる英単語はありません。「MIYABI」しかなく「わびさび」も同じで日本語の美意識そのものです。宴はElegant同様にBanquetと略されますが、そんな簡単な表現ではなくもっと奥があります。


                花筏 はないかだ

2681年も続く日本の歴史は、大陸からの伝来も多数あり独自の文化と文字文化が発展しました。イメージ的には雅も詫びさびも理解できるとは思うのですが、色彩もかなりの数の色表現として漢字が存在します。

ボクは画家ではないので、そこまで詳しくはありませんが例として青には約50種類の漢字表記があって、それぞれに色の発色、漢字にこめられた意味などがあります。蒼、藍、碧、靑、青まだまだあります。

このように日本語は、世界でも類をみない複雑な言語であることが分かります。また丁寧語、尊敬語、謙譲語など漢字、ひらがな、カタカナのほかにも会話をする上で必要です。英語にも丁寧な表現の仕方もあります。日本語に含まれる美意識をどう英語に置き換えるのかがボクの中での課題です。


また一方で、比喩的表現もあり、何気に日本語で話していても意識せず使っていることが多いのではないでしょうか。日本語の"物"をカウントする場合、よく理解できないと会社のボスや同僚から聞いたことがありました。なぜ1ぴき、2ひき~と濁点、半濁点が付いて変化するの?や物によっては、〇個以外に山=座,ウサギ=一羽,刀=ひと振りなど外国人にとって意味不明で摩訶不思議なことが数多くあります。

更に花に関しては一輪(いちりん)一本(いっぽん)
※野に咲く花は一本※贈り物なので束ねると→一束(ひとたば)
※花のある植物の束→一朶(いちだ)※根のついた草花→一株(ひとかぶ)
と細かく分かれています。不思議ですね。日本人のわれわれすら知らないカウントの仕方があるなんてとつくづく思います。日本では、物すべてに数え方の呼び名があると考えてもいいのです。それだけ先人たちは、伝統や文化を大切に継承してもらったとボクは誇りをもっています。


昭和天皇は、海外の王族と謁見する時の通訳を3人連れていかれたと聞いたことがあります。皇室用語→古い格式のある英語→日常英語と翻訳されました。昭和天皇の英語は、流暢にお話しされましたが、宮内庁の判断で時代背景もあって、そうはさせてくれなかったのでしょうね。

夏目漱石1895年(明治26年)の逸話に「I Love you」を「月が綺麗ですね」と学生に対して訳しなさいと言ったことは有名ですが、現代でこそ「愛しています」と殆どの人が解ります。この明治という時代に男女の恋愛など控えめにしている傾向がありました。ダイレクトに訳さず文学者でもあつた漱石は、「月が綺麗ですね」と生徒たちに伝えたのかもしれません。日本語のもつ特徴ある形容し難い当時の単語を情緒あるエレガントな言葉に置き換えたのは、すばらし過ぎる発想だと思います。これもメタファー、暗喩的表現として考えさせる日本人ならではの発想です。
 
相手に想像させるイメージや情緒が日本人には生まれた時から遺伝子に組み込まれています。これって凄いことなんです!冒頭の「花見」はCherry blossom viewingですが、もっと情緒のあるように花見に合う造語をボクは、作るかもしれません。

                   日本蕎麦


 
数か月前、数年ぶりに一時帰国(約10日間滞在)した時、空港で手ごろな日本蕎麦を食べました。一口食べて涙が出るほど美味しくて、泣きながら食べたことを思い起こします。日本文化、日本語といい食文化といい本当に「あ~日本人に生まれてきてよかった」とつくづく実感しました。どの国の言葉も美しいです!
特に日本語の美しさを今一度再確認して頂きたいと心から思います。