作者の出身地で日本一周の旅(中国・四国編)


初めに

中国地方と四国を分けるか悩みましたが、四国の時に短い記事になってしまうかと思ってまとめてみました。そしたら今度は長くなってしまいました…

鳥取県:赤朽葉家の伝説/桜庭一樹

桜庭一樹の作品は少し読んでいて、でもGOSICKシリーズは長そうだしなんとなく手が出ないな…と過ごしていた時に出会った一冊です。これはすごい。三世代にわたって赤朽葉家(苗字がすごい)の女性たちが時代の移り変わりとともに生きて行くのを追う話です。推理小説として読むか、大河小説として読むかによって期待値や感じ方が変わってくるかもしれないですが、私は何も考えずに読み始めたおかげかとても楽しめました。ボリュームのある本を読みたいときにぜひ。

島根県:密閉教室/法月綸太郎

法月綸太郎の処女作です。1つの章が短いので、区切りがつけやすく、忙しい時に読みやすいかもしれません。学校の教室で密室殺人が起こるというも設定は王道ミステリですが、クラスメイトである主人公が警察と共に謎解きをし始めてしまいます。(そんなことあるのか…?)私はミステリを読むときに犯人を当てようとしないので、まんまと踊らされました。犯人を当てようと推理しても、全く考えずに読んでいても、楽しめる本だと思います。

岡山県:猫を抱いて象と泳ぐ/小川洋子

タイトルからは想像がつかない物語でした。寡黙な少年の一生を描く小説です。読んでいる間ずっと薄暗い色で覆われた映像を見ているような気分になる、静かな小説です。小川洋子の作品はどれもひっそりとしていて、心が落ち着くと感じることが多いですが、特にこの作品はその色合いが強かったように思います。「博士の愛した数式」は皆さんご存じかもしれませんが、ぜひそれ以外の小説も手に取ってみてはいかがでしょうか。

広島県:母性/湊かなえ

湊かなえの中でも、直近で読んだ小説を。最近映画化されたのでそちらで知った方もいるのではないでしょうか。湊かなえは学生時代に「告白」を読んでから、怖い話を書く人だ!と思っていて、今でも恐る恐る手に取っています。ただ、「花の鎖」や「母性」を読んで、本当に怖いのは女というカテゴリの生物がぶつかり合う時じゃないか?と感じるようになりました。女性の親子関係を描くのが上手い作家さんだと感じています。
「母性」というタイトルで、なんとなくお母さんが出てきて子供が出てくるんだな、くらいのぼんやりとした印象は持っていましたが、読み始めるととにかくしんどい、心が痛い。母と子のどちらも必死に愛を求めているのに、相手に届くときには意図がゆがむ。血縁というものを深く考えました。親子関係に悩んでいるときは傷に塩を塗る可能性があるので、避けた方がいいかもしれません。

山口県:完全犯罪の恋/田中慎弥

田中慎弥はなんとなく手が出ずにずっと読んでおらず、意を決して手に取ったのですが、これはとても読みやすかったです。私小説のようでそうでない、そのはざまにいるような文章で、現実なのかそうでないのか考えながら読み進めました。高校時代に関りがあった人とは、年を取るにつれて疎遠になってきていますが、もし自分の目の前にその子供が現れたらどんな会話をするのか、と想像してしまいました。

徳島県:いなくなれ、群青/河野裕

映画化されたのでタイトルをご存じの方もいるのではないんでしょうか。私も映画のタイトルから原作小説の存在を知り読んでみた人です。ということでシリーズものだということを今知りました…。ミステリと思って読み始めたのですが、青春小説の色合いが濃いと感じるかもしれません。誰かを救いたい、という感情は持たない青春時代を過ごした自分ですが、物語の中であれば追体験できますね。映画はまだ見ていないので、どんな風に描かれているのか気になります。

香川県:スノーホワイト/森川智喜

本格ミステリ大賞受賞作とのことで、読んでみた作品です。物語のタッチはファンタジーに近いですが、怒っている事件は現実世界の話なので読みやすかったです。なんでも知っている鏡に頼りながらなぞ解きをするのですが、この問いかけ方が、まるで現代のChatGPTのようだなと思ってしまいました。質問によって答えの精度が変わるので、質問者側も賢くならないといけないのだな、となぜかAIに対する気持ちがわいてきてしまいました…。

愛媛県:最愛の子ども/松浦理英子

学生時代に仲が良すぎて友達を超えて家族のような距離感になる関係には覚えがありますが、さすがにパパ、ママと役割分担はなかったなと思いながら読みました。でも毎日通う学校生活は、それくらいの親密さを生み出せる場所だと思っています。友人同士で会いを奪い合うことはないと思うのですが、やはり優先順位みたいなものは存在してしまいます。そのせいで嫉妬し関係がねじれてしまう、怪しい役割を含んだ人間関係を、読者である自分も目撃者の一人となってみているような気分になる小説です。

高知県:夢の浮橋/倉橋由美子

スタートから、えええ?となってしまいました。夫婦を交換…?なにそれ…?と疑問符が浮かび続けながら読んでしまいました。両親が夫婦交換をしていることを知ったら驚いて放心するか怒るか思想ですが、作中では意外とすんなり受け入れられていて、ほんとに!?となりました。シリーズものの1作目しかまだ読んでいないので、その後どう進んでいくのかちゃんと見届けようと思います。

終わりに

やはり長くなってしまいました。割と近年読んだ小説を多く紹介できたかと思います。こう見るとなんとなくミステリに寄った読み方をしているんだな、と勉強になりますね…。次回は最終回、九州編です。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?