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【詩】花粉症⓶

今年の春も、こちら側にやってくる
誰かの家族で、誰かの親友で、誰かの大切な人
な、私。

自分のその瞬間が来るなんて
きっと誰も予測できない
望んでいても、そうでなくても
自分のその瞬間に
確かにそれが来るなんて思う人間は一人もいない

「毎年この桜、一緒に見ようね」
親友と交わした約束を、
私は今日果たしに行く
きちんと果せているのか分からないけど
彼女の隣に私は立つ

一度も合うことのない視線に
どうしようない罪悪感が映し出される

「花びら分け合えないね」
「あなたがいたからここで長い時間を過ごせてたのね」
彼女が寂しそうにいう言葉たちに
私のごめんねも、ここにいるよも届かない

「うそつき」
そう言われても
私側からは弁解できない
来年も彼女はここへ来てくれるだろうか

確かに映る彼女の姿に
私は彼女から自分が消えたことを思い知る
彼女が私を見つめる時は
彼女が誰かの中から消えた時


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