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LCA(Life Cycle Assessment)の歴史について - 第1章 1960年~2003年 -

こんにちわ。
4月は少し時間にゆとりがあるということで、色々と自分たちの業務内容を整理してみたり、新たな知識をインプットしてみたり、他の月とは違う過ごし方をしています。
前回の自治体に向けたBIツール「IREAM」のご紹介も、自分の整理を兼ねて書いたものになります。
自治体の方だけでなく、企業のCO2算定結果などにも活用できますので、ぜひ1度触ってみて下さい~!

さて今日は、LCAの歴史について整理を兼ねて書いていきたいと思います。
以前もnoteでLCAに関して投稿したことがあったのですが、

今回は書籍やこれまでの経験を振り返りながら整理をしてみました。
少し昔の本になりますが、平成16年1月に産業環境管理協会が作成した「循環ビジネス人材教育・循環ビジネスアドバイザー派遣事業 研修用テキスト」を参考にしています。
(テキスト、という響きから何となく学生自体に研究室でLCAについて学んでいた頃を想い出してしまい、1人勝手に懐かしくなっていました(笑))

恐らく研修用テキストは何種類かあるのだと思いますが、今回参考にしたテキストはその中の「ⅢA ライフサイクル」になります。

https://www.meti.go.jp/policy/recycle/main/3r_policy/policy/pdf/text_2_3_a.pdf

Chapter1がLCAの概要と意義について書かれており、概念や研究の経緯が載っているので、今回はその部分を整理しています。


LCAの概念と背景

LCAの定義

ライフサイクルアセスメント(LCA)は、特定の製品やサービスを利用する際に、地球から資源を取り出すところから始まり、製造、運送、使用、そして最終的に廃棄物が地球に戻るまでの全過程を、「ゆりかごから墓場まで」と表現し、それぞれの段階を正確にそして量的に評価する方法です。

契機

LCA研究が始まった理由は、製品の作成や使用、サービスの提供、日々の社会活動が増えることで資源を大量に使い、その結果が環境に悪影響を与えているということに多くの人が気づき始めたからです。特に、1972年に出された「成長の限界」という報告書が、資源の枯渇や環境の悪化についての話題を急速に広げました

LCAの発展

初期

LCA(ライフサイクルアセスメント)は、製品やサービスの全生涯を通じて環境への影響を評価する手法で、1960年代後半から約30年間、主に欧米で発展しました。この手法の始まりとしてよく引き合いに出されるのは、1969年にコカ・コーラ社によって行われた飲料容器の研究です。この研究では、異なる種類の容器が環境に与える影響を量的に比較しました。当時の研究は、特にエネルギー消費という観点から環境への影響を評価することに重点を置いていました。
これは、製品やサービスが消費するエネルギー量が環境に与える影響の重要な指標と見なされていたためです。
例えば、製品を製造する際や輸送する際に消費されるエネルギー、さらには製品を使用し終えて廃棄するまでのプロセスにおけるエネルギー消費が評価の対象となりました。
このようにして、製品やサービスの「生涯」全体を通じた環境負荷を理解し、可能な限り低減する方法を探求することが、LCAの主な目的となっています。
コカ・コーラ社の研究は、後に多くの企業や研究機関による環境影響評価の先駆けとなり、LCAの手法は徐々に洗練され、多様な製品やサービスに適用されるようになっていきました。この進化により、エネルギー消費だけでなく、温室効果ガスの排出、水資源の使用、廃棄物の発生など、より広範な環境影響が評価されるようになりました。

1980年代の変化

1980年代に入ると、廃棄物処理に関する問題が社会的に大きな課題として認識され始め、それに伴いライフサイクルアセスメント(LCA)の研究が活発化しました。この時期には、製品やサービスが環境に与える影響をより広範に理解し、評価するための手法が進化し、深化していきました。
具体的には、以前のLCA研究が主に製品の材質やエネルギー消費に焦点を当てていたのに対し、1980年代からは製造プロセス全体を比較検討するアプローチが取られるようになりました。
これにより、原材料の採取から製品の製造、使用、廃棄に至るまでの全プロセスにわたって、環境への影響をより詳細に分析・評価することが可能になりました。

この変化は、単に製品の材質が環境に与える影響だけを評価するのではなく、製造プロセスにおけるエネルギーの使用効率、廃棄物の発生量、化学物質の使用など、より広範囲な要因を考慮する必要があるという認識の高まりを反映しています。例えば、同じ製品でも、製造方法によってエネルギー消費やCO2排出量が大きく異なる場合があり、これらの違いを明らかにし、環境に優しい製造プロセスを選択することが重要とされるようになりました。

また、廃棄物処理の問題が強く意識されたことで、製品のリサイクルや廃棄時の環境負荷を低減する方法に関する研究も増えました。これにより、製品の設計段階から廃棄物の発生を抑える設計思想や、リサイクルしやすい材料の選択、廃棄時の環境負荷を考慮した製品開発が進むきっかけとなりました。
このように、1980年代に入ってからのLCAの研究は、製品やサービスの環境への影響を多角的に評価し、より持続可能な社会の実現に貢献するための基盤を築いたと言えます。

「循環ビジネス人材教育・循環ビジネスアドバイザー派遣事業 研修用テキスト」より

上の表は2003年までの歴史が載っており、それ以降現在に至るまでの歴史は記載されていないので、近年のScope3やCDP、TCFDに対する世界的な注目などの部分を埋めて最新版を作る必要はありそうですね。
既にどこかの報告書などで発表されているのでしょうか。。ご存知の方がいらっしゃいましたらご教示いただけますと大変有難いです。。

歴史から見たLCAへの国際的な関心

SETACの役割

1979年に組織化された環境毒物化学学会(SETAC)は、LCAの概念から手法の確立を目指し、専門家によるワークショップや公開シンポジウムを開催しています。SETACは、LCAに関する国際会議を欧米で毎年開催し、多数の研究成果を発表しています。

※完全に余談ですが、私自身も大学院生の頃、SETACに参加したことがあります。本当に色々な国の人が多岐にわたる分野の研究を行っていて、とても刺激になったことを覚えています。

データベースの開発・ISOによる標準化

1980年代から、特に欧州ではデータベースの開発が進められました。
ライデン大学環境科学センター(CML)やスウェーデン環境研究所などが、環境影響評価システムの開発や、影響評価の枠組みの基礎を築いたと言われています。
国際標準化機構(ISO)では、1993年以降、LCAを環境管理に関する適切な手法として位置づけ、規格化作業が行われました。これにより、LCAはさらに世界的な関心を集めるようになりました。

LCAの普及と影響

LCAの普及促進には、国際会議やシンポジウムが大きく貢献しています。特に、SETAC-Europeの総会や、日本で開催されるエコバランス国際会議などがその例です。

さて、今回は1960年代~2003年頃までの歴史について整理してみました。
個人的に興味深かったのは、LCAが始まった当初はエネルギーの消費量が重要視されていた、という点です。
私が学生時代に習ったLCAの算定方法は、プロセス全体の活動量を算定し、結果を出すということが割と前提かつ当たり前だったので、時代とともに発展してきたんだなということを改めて感じました。
また、メドウス氏の「成長の限界」という本はかなり有名で、私自身もこれまで何回もその名前を聞く機会がありました。それだけ多くの人に影響を与えた1冊だと思いますが、LCAの世界にも影響を与えていたとは知らず、衝撃的でした。
(恥ずかしながらきちんと読んだことがないのですが、これは読まないとダメですね・・・)

次回は2004年~2024年までのLCAの歴史について整理していきたいと思います。
CDPやTCFD、Scoop3といったあたりの動きが出てくると、より親近感がわいてくるかもしれませんね。
また、LCAの手法論や規格の部分に関しても今回は特に触れていないので違う回でそのあたりについて整理していけたらと思います!
それではまた~。



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