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仕事できる人

私が担当している仕事のなかで一番お堅い仕事は、某省庁がらみの仕事だ。
とある評価、ジャッジをするのだけれど、なんとも悩ましい。
評価の基準は設定されていて、それ以外の私情感情を挟まずに書類をひたすらに読むのだけれど、「基準の解釈」には人によって糊しろがあるから頭を悩ませる。

それにしても、担当の職員さんの優秀さには本当に学ぶことが多い。
会議で話の焦点が散らかっても、好き放題に個人的な感想をぶちまける人がいても、極めて大人な対応でまとめあげる。
進行役が困っていると、スッと入って配慮のあるコメントで補足してくれる。
縁の下に徹底し出席者を尊重して控えめに振る舞いながら、だけれども担当者として付すべき意見を添え、議論の方向性を是正する。
会議の担当すべき部分と範囲外であることを整理し、会議の目的に照らしてゴールを確認する。

前回の会議はとても興味深かった。
おそらくあの案件を長く担当している熟練者と、はじめて担当する若々しい初心者がペアになっていた。
初心者さんも一生懸命に専門用語についてきて、猛者達の話をまとめようと頑張っていた。
「えっと…」「…ですよね?」と、会議の堅さに似つかわしくない言葉がでてきて、あらまあと思いながらもおばさま的には微笑ましかった。

本題はそのあと。
フォローに回った熟練者の裁き方のなんと見事なこと。
白熱したり焦点が逸れそうなポイントを事前にきっちり把握していて、前置きとしてさりげなく提示する。
決定的な言葉は自分では言わず、必ずステークホルダーに言わせる。
初心者さんと進行役が苦心して押しぎみだったタイムスケジュールまで、きっちり帳尻をあわせた。
お見事。

そのなかでも圧倒的語彙力に感動した。
日常生活で遭遇しない、特別な言葉を使うのではなく、感覚にフィットする言葉を適切にチョイスする能力という意味での語彙力だ。

ある申請書類の検討場面の例。
表面上は取り繕ったキレイな文面なのに、隠しきれていない表現の違和感や論旨のズレを「気持ち悪さがある」と表現する。
堅い言葉を使いたくなる堅い会議なのに、他者と共通感覚が得られやすくて、平易かつ率直な言葉を選び、自分が感じていた感覚を「そうなのよね」といきなり納得させられる。

会議に不要な雑情報を一切排除した、サラリーマンの見本のようなつまらない(失礼)スーツと、なんの特徴もない髪型。
その証拠に、あの熟練者と明日電車で隣り合わせても、スタバで向かい合わせになっても、絶対にわからないくらい覚えていない。
それに対して初心者さんは、まとめきれていない天パが特徴的で、居酒屋であったら「あの時の!」と声をかけてしまうかもしれない。
可愛げがあった、というべきかも。

自分には重い仕事で、会議のたびにどっと疲れがたまるけれど、もう少し引き受けてみようかな。
仕事ができる人から学ばせてもらう貴重な機会だし、自分もあんなふうにスマートに立ち回れるようになりたいから。


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