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岸田訪米の能天気は害悪だ! アメリカが狙うアジアの1兆ドル海洋資源 取材・文◉浜田和幸(紙の爆弾2024年6月号掲載)

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岸田「忖度演説」をよそに米中駆け引きの新展開

 4月に国賓待遇で訪米した岸田文雄首相は同11日、米議会上下両院合同会議において「未来に向けて~我々のグローバルパートナーシップ~」と題して演説を行ないました。この演説はロナルド・レーガン元大統領のスピーチライターからのアドバイスを基に、国際秩序維持への米国の貢献を讃えつつ、民主・共和両党の分断を助長しないように配慮したもの。
 岸田首相は幼少期にニューヨークの公立小学校に通った当時の思い出に触れながら、日本と米国が「最も親しいトモダチとして、世界の未来を創造する責任を分担して果たしていきたい」と訴えました。これまでの米国の指導力を称賛し、引き続き米国が国際問題で中心的役割を果たすように呼び掛けたものです。
 とはいえ、これでは岸田カラーが印象に残らないどころか、「アメリカ頼み」の感はぬぐえません。11月の大統領選挙を念頭に、米国内の分裂や分断にはあえて目を向けないようにし、日米両国がAI・量子・半導体・バイオテクノロジー・グリーンエネルギーなど次世代を切り開く最新技術の発展において協力する可能性に焦点を当てることに腐心しただけでした。
 注視すべきは、こうした分野で米国は中国との連携にも関心を寄せているということです。
 というのも、同じ頃に中国を訪問していたイエレン財務長官は「中国と米国で世界を2分すればいい」との大胆な提案を繰り広げていました。日本はあくまで「捨て駒」としか見なされてはいないのです。
 バイデン大統領は岸田首相や「ボンボン」の愛称で知られるフィリピンのマルコス・ジュニア大統領をワシントンに招き、中国包囲網の形成に力を注ぐ姿勢を見せてはいました。とはいえ、アメリカの本音はあくまで自国の産業最優先。中国の脅威をことさらに煽ることで、米国製の武器を日本やフィリピンに大量に売りつけることにあることは疑いの余地がありません。
 日本では関心を呼びませんでしたが、ワシントンでの日米比3カ国首脳会談の直前には、アメリカのレモンド商務長官一行がフィリピンの首都マニラを訪問し、同国周辺の海洋資源開発のためのファンドを立ち上げることを明らかにしています。
 実は、フィリピン沖合の天然ガスや石油などの資源には、中国も日本も前々から大きな関心を寄せてきました。アメリカ政府はこうした資源を中国や日本の資金と技術で開発し、自国のエネルギー企業の利権に直結するように働きかけているのです。
 しかし残念ながら、岸田首相にとっては、フィリピンの資源を巡るアメリカと中国の駆け引きは関心外の模様で、情報収集のアンテナが向けられていないことが歴然としました。

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