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当事者の会代表平本淳也氏の発言を検証する③

今回の記事では、こちらのインタビュー記事について取り上げる。

まず、平本淳也氏が、なぜジャニーズ事務所に肯定的な書籍や記事を書いてきたのか、ということを説明していたので、引用したい。

平本さんは「書いたことは事実なので、非難されるのは仕方がない」とした上で、次のように説明する。
「これまで取材や執筆依頼は多くいただいてきましたが、内容は任せて頂けるものの性加害について書くたびに批判されることがあり、媒体にも迷惑が及ぶ事も恐れ、次第に書けなくなり掲載してくれるメディアもなくなりました。
性加害についてストレートに発言しても、なかなか関心を持ってもらえない。押してダメなら引いてみる、ではないですけど、どんなかたちでもジャニーズについて書き続けることで、その事態にも関心を持ってほしいという狙いもありました」

https://www.bengo4.com/c_18/n_16513/

率直な感想として、「性加害について書かせてもらえず、宣伝になるような内容しか取り上げられないのなら、何も書かないほうが良かったのではないか」と思った。
直感的な話ではあるが、褒める記事によってより多く増えるのは、肯定的な人ではないだろうか。その中から一人でも、性加害疑惑について問題意識を持ってくれる人が現れればいい、と平本氏は考えたのかもしれない。
しかし、何より優先すべきは、被害者を増やさないことだったはずだ。経営の資金源となるファンを増やしたり、ジャニーズ志望者を増やしたりしては、本末転倒だ。

続けて平本氏は、人々にジャニーズ事務所に入所することを勧めてきた過去についても、言及している。

実際に知人から「ジャニーズ事務所に入るためには?」と直接、聞かれることも多く、その度に性加害の実態についても正直に答えてきたという。
「それでも事務所に入りたいとか、入れようとする親は多数いました。言い訳に聞こえるかもしれませんが、実態を知った上で、それでも夢のために飛び込む人を僕が『やめなさい』と、他人の夢や希望に口を出して阻むことはできないと今でも深く悩むところです」

https://www.bengo4.com/c_18/n_16513/

これについては、「単にアドバイスをしなければよかったのではないか」と思った。夢や希望をわざわざ阻まなくても、「自分は実態を知っているのでとても勧められない。止めはしないが、アドバイスもしない」と言えば、それで済むはずだ。
それに、平本氏は大人である。未成年者が性的被害にあうのを分かっていながら、それを防ぐ努力をしないことには、どんな言い訳も立たない。

そもそもこの発言は、実態とは少し異なる。
確かに、知人にアドバイスを頼まれたときには、断りにくいということもあったかもしれない。しかし、平本氏がアドバイスしたのは、知人に限らない。平本氏は、不特定多数に向けても入所すること・させることを勧めてきたのだ。
以前の記事でも書いたが、再び引用する。

「自分に身近な人」がそのスゴイ事務所のスゴイタレントだったらちょっとオモシロイでしょう! ちょっと挑戦してみませんか? ボクが必勝法を伝授しますよ! てゆーか、読者が女性であることにまた具合がイイんですねぇ~
(中略)
どうせ学習させるならば、「芸能文化」と「美少年」を!! 今こそ不況の感じない芸能界へ進ませましょう!
 という事で読者諸君の関係者、つまり「兄」「弟」「従兄弟」あるいは「隣のカワイイ男の子」でもイイでしょう!? キミの周りにいるジャニーズっぽい男の子をモノホンのジャニーズにしちゃいましょうヨ! という作戦を掲げたい!

http://web.archive.org/web/20010603021717/http://www.baw.co.jp/Johnnys_in.html

上記は平本氏自身のサイトに載せていた文章だ。
この他、自社の事業として、依頼を募集していたこともある。

芸能界を目指す人にオーディションの受け方から合格方法まで伝授します!
(中略)
一般的な出演オーディション・所属オーディション
ジャニーズ・AKB48関連・国民的美少女なども可能です!

https://web.archive.org/web/20230424042202/https://jmty.jp/kanagawa/ser-oth/article-lls7d

こうした事実がありながら、まるで「聞かれたので仕方なくアドバイスした」かのように言うのは、不誠実だと感じる。

さて、長々と感想を述べてきたが、この記事にはさらに見過ごせない記述がある。

「退所後、僕も警察や弁護士に相談したんですが、門前払いされているんです。何人かの弁護士に相談したけれども、証拠がない、時効だ、と言われた。たしかに法律的にはそうなのかもしれないけど、誰かに相談したいという思いで駆け込んだ先で、そういう対応をされると、どうしたらいいんだろうと。知らない人に物をいうことの怖さを警察や弁護士には知ってほしいなと思っています」

https://www.bengo4.com/c_18/n_16513/

この記事が出る約1週間前、当事者の会は、日本弁護士連合会(日弁連)に対して人権救済の申し立てをした。その後の会見で、記者から申立代理人の佃克彦弁護士に対して、「被害者が警察に取り合ってもらえなかった、という話がある。その件は日弁連の調査対象に含まれているか?」といった質問が出た。それに対して、佃弁護士はこう答えている。

9人の申立人の方々の中で、警察に行っても取り合ってもらえなかった、という経験を持っている方はいないです。したがって、日弁連がその点について事実を把握するということはおそらく無いと思うので、その点に関して調査の対象となって日弁連から意見が出るという可能性はないと思います。

https://www.youtube.com/live/koI5nCiy4RU?si=sbGNjjG0ysSYfGmY&t=5459

この発言に対して、平本氏を含む9人の中から異論が出ることはなかった。これはどういうことだろう?はっきりと矛盾がある。
弁護士ドットコムニュースは、この会見についても記事にしている。佃弁護士の発言を知らないわけはないと思うが、平本氏の「警察に門前払いされた」という話と矛盾するとは思わなかったのか、疑問に思う。

平本氏はまた、こんなことも語った。
(※前回のnoteで、平本氏が使う「被害」という言葉のニュアンスについて触れているので、ぜひお読みください。)

ところで、平本さんは自身について「被害にあった」ことは認めているが、「被害者」とは名乗っていないという。
「被害者とは言いたくない、認めたくないという思いは今でもあります。どう説明すればいいのかわからないですけど、自分を被害者と思ったら、生きていけない。自分を守れないんですよ。
(中略)
自らを被害者だと告白するのは、どれだけつらく、勇気がいることなのか。当事者の会メンバーたちの勇気をわかってほしいですね」

https://www.bengo4.com/c_18/n_16513/

まず一つの事実として、平本氏は「被害者」と名乗っていたことがある、ということには触れておきたい。6月の記事だ。

多くの被害者を生んだ大きな事件であることに変わりはなく、決して許してはならないことです。もちろん僕も被害者であり、その行為は決して許してはいません。被害者救済のためなら僕は独りでも戦い続けます。

https://weekly-jitsuwa.jp/archives/106377

これは例外とするとして、確かに、「被害者」を名乗るかどうかは個人に委ねられるべきことだろう。しかし何となく、腑に落ちないものもある。
平本氏は当事者の会の代表だ。自分は被害者とは名乗らず、「被害者を名乗るメンバーたちの勇気を分かってほしい」とだけ言うのは、やや及び腰すぎないだろうか。

平本氏と他の「被害者」の間に距離を感じるのは、今回が初めてではない。週刊実話WEBの6月15日の記事で、平本氏はこんなふうに話している。

僕はABCでいうとAダッシュぐらいですね。それしかやられていないから好き勝手に言える。グジョグジョにやられていたら、こうやって話をしていないかもしれません。

https://weekly-jitsuwa.jp/archives/107104

「好き勝手に言える」という言葉は、何となく、他人事のように聞こえる。
また平本氏は、ジャニー喜多川氏からの行為を拒みながらも一線で活動していた、ということにプライドを持っている。だから余計に、他の人達と一緒になって「被害者」と名乗ることには、抵抗があるのかもしれない。

ジャニーズには「掟」があったんだ。今となっては有名な話だけど、ジャニーズでは「ホモ」行為をしなければデビューに繋がらないという掟である。
(中略)
それ故に掟を拒んでは五年間も在籍させてもらい、とても可愛がられていた事には感謝しているほどである。掟を介さずして五年間も一線で活動させてもらったのは僕だけではなかろうかという自信もあるほど、ジュニアとしてはとても忙しかった少年期であった。

https://web.archive.org/web/20010302020738/http://www.baw.co.jp/gossip_97_2.html

疑問点について、平本氏から説明があるのは有難い。しかし、さらに疑問が増えてしまうことがあるのも事実だ。
今後も検証していきたい。

↓前回の記事はこちらです。合わせてお読みいただければ幸いです。