寂しい目をした君がいた

大学二年生、はじめましてばかりの一年を過ごして人によっては少し余裕が持てる年。
とは言え、毎日細々とした課題が出るし、サークルに入っていれば尚のこと、さらにバイトなんて始めた日にはもう…てんてこ舞いだ。
とは言ったものの、もう十年以上前の記憶を辿って想像する日々である。
私はどちらかと言うとゆるい大学だったのでそんなに、でも若さという期限のある無尽蔵の体力を駆使して毎日を過ごしていたような気がする。
片道二時間ほどの通学も慣れたもので、詰め詰めの電車も、虫のように人がごった返すホームも、苦手だった乗り換えも当たり前になってしまえばそんなもので、それまでチャリで十分の通学路はひどく長く遠くなったがそれはそれで楽しめるようになっていたなと今思い返すとそう思う。

アイドルと学業、ともすれば一部の厄介には格好の餌ともなり得るものだったと思うけど今はそうでないと、それはとても喜ばしいことだと思う。
なぜなら人生はアイドルを辞めてからの方がずっとずっと長いからだ。
何をしよう、何になろう、その領域を広げるためには芸能界というフィールドは劇薬とも言えるが、より自分の生活に密接した学生生活というものは実は芸能界よりももっとずっと濃厚で現実味のある未来を想像するためにはとても良い環境なのではないかと考えている。
だから私は時間と体力の折り合いが付くのであれば、学びの場を放棄するのは勿体無いと思う。
とは言え、それを選択した時、捨てるものも多いような気がする。
得るものとそれを秤に掛けた時、どちらが最善か、そんなこと終わってみないと誰にも分からない。

どちらの道を選んだとしてもどちらかの道でしか得られないものは必ずあると思う。
先立の残した道はまだまだ舗装された綺麗な道とは言えないかもしれない。
だけど踏み慣らしたその道はいつか自分の背中を押してくれる。
そしてその道中を見つめる誰かが必ずいる、私もその一人だ。
だから胸を張って自分の道を歩んでほしい。
少しばかり寂しい目をした、彼女へ。
届くことがない手紙を書くように。

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