デザイナー就活記 '19.4 ~ 7

「残念ながらここにいる皆さん全員がWEBデザイナーになれるわけではありません」

2018年11月、WEBデザイナーを養成する職業訓練は、講師のこんな言葉から始まった。私はこの言葉を人ごとのように聞いていた。デザイナーになれないのはこの中の誰かであって私ではない------

「なぜかオレは絶対デザイナーになれると思い込んでいたけどね」


同じく職業訓練を経てデザイナーから講師に転身した彼はそのように続けた。私も彼と同様に、なぜか自分はデザイナーになれると確信していた。

しかし現実は甘くない。
クラスメイトが次々と自分の希望を叶え就職していく中、私の就活は難航した。

すぐに決まっていれば楽だっただろう。志望動機を頭をひねって絞り出したり、高い交通費を払って胃をキリキリさせながら面接を受けたりすることもなかった。でもこの期間がなければ仕事やキャリアについて深く考えなかったし、今の思考に到達できなかった。だからこれは全部自分には必要な経験だ。

若くない×時短×未経験という三重苦を負って就活した経験をここに記す。同じような境遇でがんばる人の参考になれば幸いに思う。(結局失敗に終わったので、これを反面教師にしてもらいたい)

私のスペックと希望条件

30代後半(嵐や関ジャニのお兄さんたちと同年代)
子供のお迎えのため16時退社マスト
デザインは全くの未経験(絵は下手だし美術にも全く触れたことがない)

アルバイト・パート・派遣希望。
交通費は1万円くらいもらえたらいいな...(都心から遠く週5で働くと実際は2万円以上かかる)
賃金の希望なし(未経験だし実務経験をさせてもらえるなら最低賃金でかまわない)

職種の第一希望はWEBデザイナー。
だがコーダーやWEB関連の仕事で条件が合いそうな求人には幅広く応募。

就活の結果(ログをとっておらずメールの履歴や記憶だけで書き出しているので正確ではないかも><)

応募12社
面接 6社
面接辞退 1社

結果連絡なし 6社
採用 2社

1. とりあえず就活始めてみた期

職業訓練の期間は5月中旬まで。動き出さなきゃと重い腰を上げて活動を始めたのはゴールデンウィークの直前。

1. D社
経験がある旅行会社のWEB更新の仕事。更新なのでデザインはあまりできなそう...と思いつつ面接の練習にもなるだろうと考え応募。

パートの求人なのに、面接に行ってみたら人事担当者のほかに社長まで同席されてびっくり!

旅行業界でのキャリアは申し分ないが、WEB担当者としてはね...という反応。求人には未経験OKとあったが、実際にはWEBに詳しい人を求めていた。

結果、旅行カウンターでの勤務としてオファーをいただくが辞退。
後日WEB担当として採用した方が病気で辞退されたため、WEB担当者としてのオファーをいただく。この頃には別の求人の話が進んでいたためこちらも辞退。

2. G社 ECサイト運営代行会社にてカスタマーサポートの仕事
クリエイター系派遣会社の案件

派遣会社の方のアドバイスを受け、面談を決意。
これまでの経験はデザイナーとはかけ離れているため、いきなりデザイナーへの転身は難しい。WEB系の会社で経験を生かした業務をしながら、目標に近づいていくほうが良いだろう。この会社にはデザイナーもいるので、実際の現場を見られる。見て分かることも多いだろうし、デザイナーになりたいことをアピールしていればチャンスもあるかも?(確約はできないけど)

支社の責任者の方と派遣会社の方と三者面談。
「人手不足だしあなたなら採用されると思う!!」とめっちゃ前のめりな派遣担当者だったが、3ヶ月以上たった今でも結果の連絡なし(笑)。

3. L社 ECサイト運営スタッフ

求人情報には、「Photoshopを使用できる方は大歓迎」「ショップ画像の制作など制作作業のみの勤務も可能」との記載あり。

書類選考を経て面接に行ったところ、実際の作業は棚卸しや梱包などが9割。

画像は販売率を上げるためのもの。効果がなければすぐ違う画像に差し替えながら運用している。だからスピード命。サイトに掲載されているバナーを30分で作れるか?画像制作にはそういうレベルの人を求めている。

不採用

4. P社 ECサイト運営スタッフ

ゴールデンウィーク中に面接を行うとのこと。
勤務場所は遠いし、前回の面接でECサイトには良い印象を持てなかった。
もし採用されても入社するのか?と言われると疑問が残ったことと、ゴールデンウィーク中に面接する気分になれず、面接辞退。

2. デザイン無理期

この頃職業訓練の課題で実案件のデザインカンプを制作。これがうまくできず、クラスメイトの作品がどれも素晴らしく見え、激しい自己嫌悪に。どんどん負のスパイラルにはまっていき、はげそうになる。

こんなにデザインができないなら、もうデザイナーとしての就職は無理だ。派遣会社の方のアドバイスを元にWEBやデザインに関連する会社で、デザイナー以外の職種としての就職を目指す。

5. A社 就労支援施設での指導員(コーダー)

ハローワークからの紹介。
学生時代に塾の講師のアルバイトをして挫折した経験から、人にものを教えるのは絶対に無理!!と思っていたが、ハローワークの担当の方に「あなたに合いそう」とすすめられた。
人のアドバイスを受けて行動してみようかな...と応募。

書類選考の結果不採用

3. 職業訓練終了直後

この頃は2社目に受けたG社に採用されればお世話になろうと考えていたため、結果を待っており積極的に動く気になれず。でも学校が終わってしまったし、何か動かなきゃーと思ってた。

6. Q社 WEBデザイナー
 職業訓練終了後の飲みの席で先生がおすすめしていた会社。卒業生が就職し良さそうな会社とのこと。

履歴書と職務経歴書をメールで送り、2時間後に不採用の通知(笑)
通知を受け取った直後はいやな気分になった。もうちょっと悩んでほしかったー...なんて思ったけれど、結果が通知されるまでは気になってしまうし、採用する気がないのに面接に呼ばれても心の準備と交通費と時間の無駄だから、すぐに結果を知れて良かった。これは企業の誠意の表れなのだろう。

7. S社 WEBデザイナー

気合い入れて書類を送付したが、連絡なし!

4. 迷走期

8. W社 デザイン会社の一般事務

とても良い雰囲気。オフィスも商業ビルに入っており、おしゃれできれい。
和やかな雰囲気すぎてほぼ素で話していた。事務職の募集なのにデザインに対する思いを熱く語ってしまう。面接後は、良い会社だけどやっぱり事務じゃなくてデザインやりたいな...と思った。

一週間以内に採用の通知!でも事務職→最終的にはこの会社にお世話になることに。

9. F社 WEBディレクター

コーポレートサイトや社長のブログを読むと、お客さんと深く付き合って一緒に良いものを作っていこうという姿勢が感じられ魅力的だった。
アルバイトで18:00までの勤務の募集なのを分かっていながら16:00退社を希望していることを明記の上応募。本気で入りたいと思ったので、書類は超気合い入れて書いた。

そうしたところ社長直々にご連絡をいただき、面接してもらえることに!熱意が伝わったのかな。話す内容をあらかじめ考えながら面接に行ったところ。

応募書類は読まれていなかった。この会社は応募してきた人にはとりあえず全員会っとくスタイルのようだ。これまでの経歴で在職期間が短いことばかり聞かれた。確かに在職期間が短い会社はあるけれど、短期間で判断を下したことはむしろ良いことだと考えているし、全部が短いわけではない。過去の後ろ向きなことばかりつっこまれ、サイトと実際の印象が全然違ってショックだったな。この頃から採用サイトと会社の実態に大きな相違があることに気づき出した。

面接の結果を連絡すると言われたけれど連絡なーし!

5. がむしゃらにやる気出した期

8社目の事務職で受けたW社の面接を機に、やっぱりデザイナーとして働きたいと考え、デザイナー職に応募。

10. O社 WEB制作補助

サイトではウエルカムな感じが出ていてとっても良さそうな印象。
書類送付したが返事なーし!

11. I社 WEBデザイナー

WEBデザインというよりSEO寄り?なんか堅そうな会社だな
18:00までの勤務時間だが「16:00までだけどどうですか」と応募してみる。

私は9:00 - 16:00の想定だったが、8:00 - 17:00でも良ければ選考してもらえるとのこと。応募しても連絡のない企業も多い中、こちらの事情を考慮してくれるのは本当ーにありがたい。夫と子供の預け先に確認の上8:00 - 17:00で働けることを連絡。

続いて週5の勤務は大丈夫かという確認。回答は週5で想定しているので問題なし。しかし子供の行事で月2回ほど事前予告して休みたい。子供の体調不良で突然休むこともありえることを伝えた。

数日後書類選考落選のお知らせ。ここはアルバイトとはいえ、がっつりフルで働く以外に選択肢がなさそうなので、選考の前に条件が合わなかった。もしかしたら条件が合わなくても求めている人材なら入社可能なのかな。いずれにしてもご縁はありませんでした。

ここまでデザイナー職に応募してきて結果は思わしくない。もうそろそろあきらめてW社に行こうと決意。しかしそれが現実となってくるにつれ、納得いかないもやもやが膨れ上がってきた。事務職やって今後自分の市場価値は上がるの?最低賃金で交通費も満額出ない。どうせ事務職やるならもっと良い条件で雇ってくれるところがあるんじゃないかな。前職の業界(旅行業)に戻ろうかな。旅行業は嫌いでやめたわけじゃないし、これまでの経験も生かせる場面が多いだろう。ていうか結局事務職かよ。進歩ない。職業訓練に通った意味ないじゃん。。。近場の100円ショップで働こうかな。通勤時間は短くなるし、トータルでもらえる金額は変わらなそう。なんて考えがどんどんわいてきた。

12. T社 WEBデザイナー

そんなとき、10日ほど前に応募して、連絡がないのでもう落ちたと思っていたT社から面接のお知らせが。

面接は終始和やかな雰囲気。人事っぽい方と条件などについて話し、その後コーダーの方、デザイナーの方と話すという二段構成。今までで一番感じが良かった。デザインに対する思いも聞いてくれたし、求められていないのに送りつけたポートフォリオもきちんと見てくれた。探せばこんな会社もあるんだなー。本当にそれぞれ雰囲気が全然違う。ここのサイトはあまり更新されていなくて、そんなにウエルカムな感じは受けなかったけれど、サイトのイメージだけでは判断できないね。

勤務時間や英語を少し使えることが会社の希望条件に合っていたように思う。少し期待してしまったけれど、結果は不合格。

6. 就活を終える決意

W社に入社しようと考えてからT社の結果通知がくるまで。この二週間が今回の就活期間の中で一番価値のある時間だった。「働く」ことについての考えが変わったから。

きっかけはツイッターなどで触れた他の人の働くことへの考え方。

もしかしたらこの方が意図していることと私が思ったことは異なるかもしれないけれど。彼は未経験でマーケティングで入社。入社2週間で部門のリーダーからマーケティングについての意見を求められ、その後も周りから常に意見を求められたという。

たとえ未経験であっても周りからはその道のプロとして見られるのだということ。未経験だから...という言い訳は通用しないのだ。

私がデザイナーとして入社できたとして意見を求められたときに言えるのか?無理だ。私は他者に意見を言えるほどデザインを知らない。

ハイジさんが働くサンフランシスコの会社では、意思決定者はデザイナー自身だそう。日本だと偉い人が最終的な決定権を持っているのかなと思うけど。

自分で作って自分で決める。そんなことが私にできるのか?無理だ。私には決められる力がない。

強く影響をもらったのはこの2つ。
デザイン業界は実務経験が命で、未経験からの就職は狭き門。未経験だと応募できる会社が限られるので私は実務経験が欲しかった。デザインのことをよく分かっていなくて全然できないから、実務をしながらデザインを教えてもらおうとしていた。

自分のスキルを生かして会社に貢献し、対価としてお給料をもらう。それが働くということなのに。

今の状態ではスキル的にもマインド的にもデザイナーとして働くレベルに達していないと判断したため、デザイナーとしての就活は終わらせることを決意。今自分がやるべきことはデザイナーとしての就活ではなく、自力でデザインをレベルアップさせることだと気づいたから。

それは働きながらでもできる。ゆくゆくはクラウドワークスなどを利用して案件獲得にチャレンジするのも良いだろう。

今後デザイナーとして企業に入るのか、フリーランスを目指すのか、そもそもデザイナーとして働くのか、どんな選択をするのかはまだ分からない。続けていく中で目指す道を探していけたらいい。

就職先の選択には満足している。雇用条件は良くはないけれど、職業訓練を受けていなければ絶対に進むことはなかった業界。若くて活気のある会社なので、今まで働いてきた環境とは異なる。

雇用条件やこれまでの経験を踏まえず新たな環境に身を置くこと。小さいけれど、これが私の新たな挑戦。

7. 就活までにしておくべきこと

もしも職業訓練を始めた時に戻れるなら、私はひたすらデザインの上達を模索する。

・デザイナーとしての就職は想像の何倍も難しいことを自覚(実際経験してみないと分からないところではあるけれど)
・デザインスキルを上げる努力をする(課題以外にも自主制作に取り組んではいたが、ただ作るだけではだめ。どうしたら良くなるかを考えながら作らないと。量より質)
・やみくもに落ち込まない(理想通りにうまくできずに落ち込みっぱなしの職業訓練期間。でも私はだめだってとこで終了するのではなく、どうしたら良くなるかを...以下略。何が良くて何が悪いか、何をすれば良くなるか、そんなの全然分からないよ。だけどウルトラCはないから、自分を信じてコツコツと、トライアンドエラーを繰り返しながら続けていくしかないんじゃない?)

とはいっても、終わってから言える話。コーダーかデザイナーかで迷って、コーディングの方に熱中していた時期もあるしどっちに進みたいかなんて分からないよね。デザイナーを希望していたけど、コーディングをやってみたらそっちの方がもっとおもしろく感じるということもあるし。

私はデザインが全然できないから、あきらめてコーダーを目指そうと考えた時期があった。書いたコードが意図した通りに反映されるのとか楽しい。でもね、こう考えるのは多分自分だけじゃないよ。クラスメイトで全く同じ考えの人がいた。

だからできないって思い込む必要は全然なくて、そんな暇あったら自分を信じられるようになるにはどうしたらいいか、とかいうことを考えた方が良い。

私はこれからもあきらめずに楽しみながら続けていきたい。一緒にがんばっていける仲間が増えたら幸せです。

[参考]
就活に使ったポートフォリオ。これはSNS公開用に架空案件だけ取り上げたものです。

実際のは職業訓練の課題で作った実案件を含め、この2倍くらいの作品数を載せていた。

http://www7b.biglobe.ne.jp/~fantastischjp/STT/index.html

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