見出し画像

「FAR夢ビレッジ」とは

私は、当別町農村都市交流研究会という団体の代表を務めています。

 これは、環境に配慮した農的な暮らしがしたい人を全国から募集し、多様性のある新しい農村モデルをつくるための研究会です。

ファームエイジが本社を置いている当別町金沢地区は、平坦な農地となだらかな里山に挟まれた、ひだの多い山すそ部分に位置しています。
里山に季節風が遮られるほか、夏も林の効果で比較的涼しいという特長があり、居住に適している土地であると言えます。

札幌市から当別町へは車で40分ほど。JRも直通しています。
赤枠で囲まれた部分が金沢地区で、ピンの立っている場所に本社があります。
山を背負っていることが一目瞭然ですね。

事実、ニュージーランド(以下、NZ)のメーカーの社長を本社にお招きした際には、こんな評価をいただきました。
「ここは素晴らしい。札幌という100万都市が近くにあり、かつ海・山どちらもすぐに行けて、自然が豊かで、飛行機に数時間乗れば10億の市場にだってアクセスできる。ここでなにか事業を興すなら一口乗りたい」
土地と市場を常に求めているNZの商売人らしい発想と着眼点だと言えるかもしれません。


そんな豊かな場所であるにも関わらず、創業時の1985年、この地区は限界集落となっていました。これは非常にもったいないことです。


私はもともとこの場所を、旧来の形にとらわれない様々な志を持った人々が集まる、持続可能な農村モデルにしたいと考えていました。
大きな土地を借りて、農協に登録して、といったような「仕事として」の農よりも、生ごみを堆肥化して家庭菜園に使いたいだとか、自分で調達した薪でストーブを焚きたいだとか、そういった「生活の一部として」の農が行える場所になればいいなと。

NZには、ライフスタイルファーマーという生き方が定着しています。
家庭用に細かく区切られた農地を借り、平日はビジネスマン、休日は農作業、というような思い思いのペースで農業を楽しみながら暮らす方法です。
私が描いているイメージは、いわば日本版ライフスタイルファーマーのようなものかもしれません。最近では「半農半X」と呼ばれたりもするそうですね。

 

そんな中、北海道で初めてコーポラティブ住宅についての研究会に参加する機会がありました。コーポラティブ住宅とは、複数の世帯が共同で土地を購入し、建築家の方とも協力しながら建てる共同住宅のことです。
私はこの研究会を通じて、多くの建築関係のプロの方々と知り合うこととなりました。

その後、ファームエイジを中心として、金沢地区でも農村コーポラティブの取り組みを行ってみよう、という話になりました。「FAR夢ビレッジ構想」の始まりです。

地域の住民の方々はもちろんのこと、プロのデザイナーやメディアまでもを巻き込んで、このプロジェクトは進んでいきました。

最初に建ったのは2軒ほど。2000年のことです。そこからあれよあれよと現在に至るまで、約40棟、約100名の方が移住しています。

プロジェクト発足当時は、町内会長でさえもが「こんな限界集落に人が増えるなんてありえない」と言うような状態でした。しかし懸命な説得と、プロジェクトに関わってくださったすべての方々の努力で、今のこの町はつくられています。

 

当別町農村都市交流研究会の活動は、利益のために始めたものではありません。しかし結果として、会社の周辺に優秀でユニークな人材が集まるという大きなメリットが生まれたことは事実です。
現在ファームエイジで働く役員のほとんどが、北海道外からの移住者であり、会社からの徒歩圏内に居住しています。

また、会社周辺の地域に人が集まってきたことで、「フィールデイズ・イン・ジャパン」という、農村のお祭りのようなものを開催することができるようになりました。このフィールデイズをきっかけとして、金沢地区のことを知っていただく方もまた新たに増えています。

大企業が大きな区画を一気に購入して割って売るのではなく、ジワジワと人が増えていくというこのスタイルこそが、田園の町のつくり方に最も適した形なのではないかと思っています。


こうした長期的な取り組みの甲斐あってか、当別町農村都市交流研究会は、2019年に日本建築学会賞をいただくことができました。
持続可能な田園住宅づくりに関する業績を評価していただいたようです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?