痛みについて勉強しなおす(25)---股関節の治療について勉強してみた③---

まず初めに、あと1回でこのブログはおそらく終了することになると思います。というのは11月いっぱいで21年6ヶ月住んだイギリスを離れ、日本に帰国することにしたからです。日本ではどこで働くか、何をするのか、など全くの未定で、もしかしたらこの仕事をやめて別の職種につくかもしれません。もしそうなったらこのブログの更新は終了いたします。まだこの仕事を続けていけるようでしたら、時々は自分の勉強もかねて更新していくかもしれませんので、よろしくお願いします。

さて今回で股関節ウェビナーシリーズは完結ですが、ウェビナーで扱われたケーススタディーを6つ紹介するので、前回のブログの内容をもとに各ケーススタディの患者の症状(病名)を推測してみたり、どのような治療を勧めるのか考えてみてください。

ちなみにBCPで勉強する前の私、倉野はすべて「○○筋肉のトリガーポイントが原因だから、そこに鍼を打ったりマッサージすれば治るんじゃい!」と思っていた馬鹿野郎でした(苦笑)。あと痛みの出ているエリアからトリガーポイントを想像・想定して鍼やマッサージという手法だと、ある筋肉群の影響を見逃してしまうと思いますし(前回のブログで説明済み)、そして何より手術適応時期を見逃してしまうかもです。徒手療法家の皆さんは普段から患者さんの


「どこどこ病院に行ったけど、何にもしてくれへん。
先生のおかげやあ・・・」

的な褒め言葉を真に受け

「そやろ?!手術なんか絶対したらあかん、
ワシのところに通ってきたら治したる」

的な事を言ったり仄めかしたりして「適切な治療のタイミング」を逃している可能性も前回のブログで指摘してあります。徒手療法家の皆さんはどうかトリガー”だけ”論者にならないほうがいいと思います。(時にはトリガー療法は著効を示す時もあると今だに思っていますが。)もちろん、得体の知れないおっさんが勝手に提唱しているエビデンスも何もない整体法とか、経絡とかは論外中の論外です(笑)。

*各ケースには昔(7−8年ぐらい前)の私だったらこうしたであろう「昔の倉野くん」の回答も比較論として載せておきます。まさかブログを読んでいる徒手療法家で「昔の倉野くん」と同じようなことは考えている人はほとんどいないとは思うので、笑ってやってください。

ケース1

28歳男性、右側のグローインペインがここ6ヶ月だんだんと悪くなってきた。彼は自分でストレッチなどのことをしたりして治そうとした。また好きなスポーツも一時期止めて様子を見ていたが、またスポーツを再開するとグローインペインが再発。スポーツマッサージに通って鼠蹊部周りの筋肉をほぐしてもらったが効果なし。
・過去の既往歴なし
・レッドフラグなし
・神経症状(痺れ、麻痺、ピリピリ、ジンジン)なし
・手術なし
・飛行機の整備士
・サッカーが好き
・小さい子供がいる

①あなたの推測する症状(病名)は?
②この患者にさらに聞きたい(問診)ことは?
③あなたの推測する症状(病名)を確定するための理学検査は?

<昔の倉野くん>
そのスポーツマッサージが下手なだけで、腸腰筋や内転筋群、恥骨筋の「深部」を緩めることができてない。俺だったらマッサージや鍼で深層筋までも緩めることができるから、数回の治療で治るだろうな(`・ω・´)

ケース2

63歳女性。過去2年にわたり左側のグローインペインがあり、特に最近悪くなってきた。その痛みのためにエクササイズや長い距離のウォーキングはできない状態。またそのグローインペインが悪化している時は腰痛も感じる時がある。
・過去の既往歴なし、薬もなし、手術もなし
・看護師として働いている
・エクササイズは痛みのせいでできないが、ウォーキングは好き

①あなたの推測する症状(病名)は?
②この患者にさらに聞きたい(問診)ことは?
③どんな治療を勧めるか、その理由も。

<昔の倉野くん>
腰痛があり、鼠蹊部が痛いのだから腸腰筋が緊張しているから痛んでいるのではと想像。他の鍼灸師ではなかなかできないテクニックだ!と自慢しつつ、腰部から大腰筋刺鍼。プラス腸腰筋のストレッチを指導(`・ω・´)

ケース3

33歳男性。FAIのための股関節内視鏡オペを受け2週間経ったところ。過去にグローインペインを経験し、去年ぐらいから特にスポーツをやると痛くなった。またスポーツをしている時だけでなく日常生活でも痛くなってきた。
・既往歴なし、薬なし
・体育の先生
・サッカーを週2回、ジムには週4回行く
・ロッククライミングもする

①上記の情報から他に何を知りたいか?
②どんなアセスメント(検査)をするか?
③どんな治療を勧めるか、その理由も。

<昔の倉野くん>
股関節インピンジメントで手術を勧める医者、受ける患者もバカ。勉強不足。そういうのは大抵、筋肉が凝っていてトリガーポイントが原因で痛みがでている。他の鍼灸師整体師マッサージ師がうまく「治療」できない筋肉、小殿筋、大腿筋膜張筋、腸腰筋などの股関節深部の筋、腸骨際のなかなか触ってもらえない筋肉に鍼を打ったりマッサージしたりしたら治る!
と豪語(`・ω・´)

ケース4

17歳の男性クリケット選手で右側のグローインペイン、殿部、腰部に痛みもある。ここ2ヶ月、クリケットとトレーニングの量が増えたせいか、それらの症状は悪化してきている。過去に同じような怪我はなし。下肢への痛みや神経症状などはなし。咳やくしゃみで痛みなし。下肢の運動機能低下はなし。
・手術なし、レッドフラグなし
・まだ学生で地区代表レベルのクリケット選手
・ジムにも行き、そこでランニングもやっている

①何の症状が考えられる?
②どんな情報がアセスメントをする上で必要か?
③どんなリハ(エクササイズ)を処方するか?

<昔の倉野くん>
殿部、腰部、鼠蹊部の痛みということはトリガーポイントが広く散らばっているかもしれない。腰部は大腰筋刺鍼、鼠蹊部は恥骨筋、内転筋、殿部は小・中殿筋などの筋肉の「深部」までを鍼やマッサージでほぐす。それとともに練習後の入念なストレッチを勧めるのと、クリケット練習後の疲れによる筋肉の緊張をほぐすため、週に2回程度の頻度で治療を受けるように勧める(`・ω・´)

ケース5

26歳男性、ここ4週間鼠径部分の硬さを感じる。スポーツをしている時、スポーツをした後、グローインペインを感じたことが何度もある。その急な痛みが出た時に理学療法士のところで治療を受けたことがある。去年、グローインペインと共にアキレス腱炎も発症した。グローインペイン自体の痛みは鼠蹊部のみ。神経症状なし。股関節の引っかかりや不安定性(崩れ落ち)はなし。
・薬なし、既往歴なし
・サッカーのセミプロ。2人の子供がいる
・ロッククライミングもする
・IT関係の仕事をしている

①何の症状が考えられる?
②どんな情報がアセスメントをする上で必要か?
③どんなリハ(エクササイズ)を処方するか?

<昔の倉野くん>
グローインペインとアキレス腱炎は決して無関係ではない。体のバランスが崩れているからだ。腰部からの大腰筋刺鍼に加え、体のバランスを整えるような手技を施し、アキレス腱炎に関しては下腿三頭筋深部までほぐれるような鍼やマッサージを行えば治る!(`・ω・´)

ケース6

57歳女性。殿部、腰部、そしてグローインペインがここ6ヶ月続いている。痛みのせいで日常生活に支障をきたしている。過去に鍼とマッサージを受けたことがあるが良くならなかった。
・過去の治療ー抗うつ剤(セルトラリン)を2年服用、腰椎椎間板ヘルニア
 の手術を受けた事がある
・看護師を引退した
・いつも犬と散歩する(歩く)以外のエクササイズはしていない。

①何の症状が考えられる?
②どんな情報がアセスメントをする上で必要か?
③どんなリハ(エクササイズ)を処方するか?

<昔の倉野くん>
腰部、殿部、鼠蹊部はそれぞれトリガーポイント狙いで刺鍼と、ストレスが大きな原因であると考えられるので、鍼治療と同時に長めの時間をとって全身マッサージを勧める(`・ω・´)


ここからはウェビナー参加者の意見とGem氏の意見(推測する症状)です。
あくまでも推測ですので絶対ではありませんが、「昔の倉野くん」の方針で治療を進めていたらどうなっていたのか想像すると面白いかもです(笑)。

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