父の思いに気付くとき
父が嫌いだった。
怖かった。
次は何をするのだろうか、いつ暴れ出すのだろうか…ビクビクしながら生きてきた。
だが、私自身子を持ち親となった今、その考えは徐々に、だが確実に変わってきた。
父がどんな気持ちで毎日過ごしていたのか、父がどんな気持ちで壁に『俺はこの生活につかれた』と書いたのか、どんな気持ちで怒鳴り暴れていたのか。
考えれば考えるほど単純な答えに辿り着く。
大切な家族を宗教から取り戻したかった
当たり前の幸せを守りたかった
ただ、それだけだったのではないだろうか?
父は家族の中で一番家族を大切に思っている。
それは今に始まったことではなく、私たちの家族が誕生してからずっとそうだったのだと思っている。
宗教活動に大反対し、暴れ、暴力も振るった。家からは幾度となく追い出された。
全て父が悪いと思っていた。
でもそうじゃない、やり方はかなり乱暴だったし正しいやり方だったとは言えない。だが父が悪いわけではなかったのだ。
どのような会話の成り行きでその話になったかは忘れたが、私は父に『この地球は神が作った物なんだ、聖書に書いてあるから!見て!』と涙ながらに自分の聖書を持ちだして見せた。
忘れもしない、聖書の1ページ目1番はじめの文書を指でなぞりながら読んで聞かせた。
はじめに神は天と地を創造された
ほら、書いてあるでしょ。
と泣きながら言った所まで覚えている。
私に対して父がなんと言ったのか覚えてないし、その後どうなったかは記憶にないが、小学生の自分の娘が聖書を持ち出しそんな事を言い出したら、きっと、大切な娘が大変なことになっていると思ったに違いない。
母には後からよく頑張って言えたね
と言われたような気もするがはっきり覚えてはいない。
父は
普通に育ってくれたらそれでいいから
と私によく言っていた。
普通でいいんだ普通で、と。
父は、いつでも怒鳴って怒っていたわけではなく、そうやってポツリポツリと本音を言う事もあったのだ。
その言葉の通り、父は宗教以外のことに関して口出ししたり、反対したことは一度としてない。
進学に関しても、就職に関しても、
一人暮らしに関しても、結婚に関しても、結婚相手に関しても、同居に関しても私を信頼し、私の意見に賛成し最大の協力をしてくれた。
父は元々そういう人なのだ。
私は今、父を心から尊敬している。
真面目に働き、一生の仕事を手にして父の稼ぎ一つで私たちを育ててくれた。
ずっと変わらず家族を大切に思ってくれている。
足りないかもしれないが
私に出来る限りの恩返しを、今している。
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