第八章 電光石火

タルライナ国境周辺

「パパァー!見て!凄い車と人が!」
娘が大声で呼びかける。

「んん?なんだ?」

娘に返事しようと娘の方向を見た瞬間、事態の深刻さを悟る。

戦車だ。国籍マークを見るにグルント連合の奴らだ。多くの武器を持った兵隊も見える。

”ゴゴゴゴゴゴゴゴ”
という耳障りな騒音と共に地面の振動がこっちまで伝わってくる。

「イオ(娘の名前)!逃げろ!」

娘が耳を傾ける仕草をしている。

(駄目だ!聞こえてない!)
瞬間

”ダァン!ダァン!ダァン!”

戦車の車載機銃からマズルフラッシュが見えた。

大口径の弾が娘の頭を、腕を、足を撃ち抜く。

「イオォォォォ!」

もはや叫ぶことしか出来なかった。

逃げるには遅すぎた。

次の瞬間、猛烈な熱さが全身を突き抜ける。

遅れて強烈な痛みが駆け巡る。

兵士達の構えている小銃から硝煙が昇るのが目に入る。

全身の力が抜け、力なく地面に倒れ込む。

薄れゆく意識の中、兵士の一人が
”邪魔だ”
と言わんばかりに石ころを蹴るように私の体を蹴る。

最後に目に映るのは間近に迫るキャタピラだった。



ルイル共和国国境付近


非常事態を知らせる警報が鳴り響く

”グルント連合の侵攻が確認されました!自身の身を守るのが最優先です!今!すぐ逃げて下さい!”

ほぼ身ぐるみ一枚で市街地の方へ必死に逃げる。国境周辺とはいえ、私が住んでいるのは国境から大体5km程離れた場所だった。間一髪で侵攻を知らせる一報がギリギリ間に合ったのだ。だが、私よりもっと国境に近い町の人々はもう手遅れだろう。そんな事を考えながらひたすら走る。だが、市街地が見えてきて私は愕然とした。道を埋め尽くす車。
事態の把握が出来ておらず狼狽える人々。

完全に街は、いや、国自体が混乱状態に陥っていた。

機能不全。

呆然とその場に突っ立っていると突如

”ゴォォォォォ”

と、上空から低い唸り声をあげながら何かが飛んで来るのを感じた。その瞬間、辺りが爆発した。

建物の破片が、人が、車が、宙を舞う。

(爆撃だ!)

”ヒュルルルル!”

本能的に上を見る。
迂闊だった。

空を切り裂きながら落ちてくるナニカ。

眼前に迫ってくるソレは突如破裂し、眼前を赤く染める。

私の意識はそこで途切れた。


グランデン首都 パーデン

首脳部

大臣A「侵攻は既に始まっています!辺境では既に侵攻が確認されており、多くの死傷者が出ています!」

大臣B「全兵力を首都に集めましょう!まだ間に合います!こうなる事を予期し、首都には数ヶ月分の食料や軍需品、医療品を備蓄しております!ロント協定により同盟国が救援に来るまでの辛抱です!」


大臣C「戦時体制に移行しておいたのが功を奏しましたね!首相!国家要塞化計画により他国と比べ被害は最小限です!今は防戦に徹するのです。既に同盟国や主要国はグルント連合に対し参戦姿勢を示しております。それまで耐え凌...」

「緊急連絡!」

臨時会議室の扉が勢いよく開かれ、軍事大臣の部下が部屋に駆け込んでくる。

「我が首都に向けてのジェットステルス爆撃機が飛来しているのが目視で確認されました。その数、数万機!今すぐ地下シェルターへ!」

ボディガードに背中を押されながら首相は冷静に事態を把握しようとする。

「我が国の対空網に反応しなかったんだな!だが、空を埋め尽くす程の所属不明機が見えたという事か!?」

「はい!」
部下は続ける。

「最初は所属不明機確認の連絡でしたが、爆撃が確認されたので、恐らく連合の最新型高高度ジェットステルス爆撃機だと思われます!」


(奴ら徹底的に我が国を焦土にする気か!)

思い出したかのように首相は部下に問う。

「迎撃はどうした!?RO−16(戦闘機の名称)は!?」

部下が答える

「奴らの爆撃により多くの飛行場がダメージを受けており、既に迎撃に向かわせていますが、最大で2千機が限界かと思われます!」

瞬間、凄まじい轟音が鳴り響く。

「首相!伏せて下さい!」
ボディガードに半ば強制的に押し倒される。

地面がまるで生き物のように振動する

(あり得ない!ここは地中だぞ!まさか!
*バンカーバスターか?!)

ひときわ大きな音がシェルターの真上から聞こえる。

不安気に上を見た瞬間、黒い弾頭が顔を見せる。

(!!)


眩い光と強烈な熱風が私の体をまるで紙切れのように吹き飛ばす。

部屋の隅に叩きつけられ、地面に崩れ落ちる。全身の痛みと薄れゆく意識の中、爆弾の破片が目に入る。

(死神...か。悪趣.....)



アンカ合衆国 首都DC.ワイグ

日常の崩壊は突然訪れた。

「大統領!グルント連合で軍事クーデターが発生しました!」

言い終わるが早いか突如、近くに太陽が現れたような、凄まじい眩しさと熱さが身体を焼く。

執務室の窓が一斉に割れ、こちらに熱風と共に吹き込んでくる。

事態の把握すら出来ず、私の意識は途切れた。

*バンカーバスター(地中貫通爆弾)

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