見出し画像

無意識にお願いしてワープした話

今から5年前のこの時期、オリエッタ母娘がオーストラリアから来日した。
長男が高校生の時分ホームステイでお世話になり、わたしの訪問時も歓待してくれた恩人である。

滞在2日目、長男は仕事で都合がつかないという。
わたしが代打で東京案内をすることになった。
糖尿病のため歩行器が手放せないオリエッタのため、はとバスを予約。
移動の負担を減らし、観光も楽しめて、何といっても間が持つのがいい。

新宿のホテルに迎えにいき、大通りにでる。
流しのタクシーをつかまえてはとバス乗り場に向かいたい。

しかし!
タクシーがつかまらない。てか空車が走ってない。
タクシーアプリを起動して呼び出してみるが、なかなか来ない。

刻々と迫る集合時間。
しまいに2人ともトイレに行きたいといいだす。
歩行器でホテルに戻る時間はない。


どうしようと頭が真っ白に。


万事休す。わたしはすべての思考をとめた。


やおら一台の回送車がわたしの前にキキーと停車。
サインが空車に切り替わったではないか。

わーん、こっちがオシッコ漏れそうだ。
わらわらと歩行器を積み込みながらわたしは叫んだ。

「10時に東京駅はとバス乗り場へお願いします。」

「ええっ、無理だよ。あと20分しかない。
信号の数と時間からいって、今の時間だと30分はかかるよ。」


ごもっともごもっとも。しかしそれでは困るのだ。
わたしはネームプレートをチラ見して訴えた。

「斉藤さん!
斉藤さんしか頼れる人がいないんです!お願いします。
もし間に合わない時はいさぎよく諦めますから。」

齋藤さん、一瞬ひるむ。
「もうー、そんなこといっても無理なものは無理だってば。
でも、まあそういうことなら、俺も最善を尽くすからさ。」

ギアをいれた齋藤さんに、きっと何かが味方した。
斎藤さんの最善がモノをいい、信号が全部青になり、気が付いたらはとバス乗り場であった。

時計をみると9:59
齋藤さんG・J!!!

ほっとしている時間はない。
わたしの名前が何度もアナウンスされている。

オリエッタ母娘が歩行器降ろしてモタモタしてる間に1号車までダッシュ。「我々はすでに到着してるが、シッコ猶予が必要だ」と運転手さんにアピール。
再びタクシーにダッシュ。
横目でトイレの場所を目視確認。
タクシーを降りた2人をトイレに誘導、無事にシッコもさせバスに乗り込む。

オリエッタ足が悪いからな~
後の席はイヤだな~
みんなを待たせちゃうしな~
と思いつつ、階段を登りきる。
そして目を疑った。

ええっ?

最前列の「3席のみ空席」なのだ。

予約時は気づかなかった。
とれてたんだ、最前。

…シッコ猶予、最前で最善の奇跡。

出だしからライフがゼロになったけど、
そのおかげで何をしても楽しい。
浅草やスカイツリー、皇居を堪能しきった。

これは、あれだ。
無意識にアクセスすれば何でも叶うという好例だろう。

この件もあって、ますます無意識の研究にはまり今に至っている。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?